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自称大ファンというのは本当に嘘では無いのだと感じた、そもそもファンと名乗っていること自体不思議ではある(何故なら彼女は自分の文章が人にそこまでの影響を与えるなど思ったことがないからだ)
しかし彼は本物のファンだった

それも生粋の熱心な気狂いのファン

正直なところ彼の言動はうんざりする程だった、しかしまるで大型犬のような愛情は少しずつ愛らしさを感じて、結果として彼女は彼の愛を受け取った、受け取った時の彼はまさに彼女の描いた作品の一つが現実に起きた事だと大喜びしたほどであり、うんざりするポイントだがその愛情深い姿は悪くは無いと思えた

彼女の生活が安定してきた頃、彼女は結局のところ彼に望まれたように文章を書くことの楽しみを思い出しては日夜パソコンと睨み合った
ここ数年の生活の余裕のなさによる塞がれた創作欲は彼との生活もあってか随分と膨らみ続ける
しかし膨らむからといってそれが文章として脳から指先へ出力されるかは別問題である、行き詰まりだと感じた、相変わらずNickをベースにしたお話を書いているがどれも何処か子供じみていて、そもそも昔に書いていた文章自体が子供臭すぎるのだと自分に悪態を着いてしまう頃、ドアが開いた

「HAY!!スーパースター!調子はどう?今日も書いてる?もう出来た?さすが俺のスーパースター、ほらほらみせてよ頂戴よ」
「元気なのはいいけど何も出来てないの」

ドアを叩き破らんとばかりに入ってきたNauseaは彼女のPC画面を眺めては10行程度の文字を読んだあと「素晴らしい……最高だ……」と呟いた、何が見えているのだろうか?
彼女はうんざりしていた、彼が熱心なファンどころか信者であることは仕方ないことだが、何でもかんでも肯定されるのは嬉しくない、時にいい気分にはさせるが行き詰まりを見せる彼女は溜息をこぼした、趣味に振り回されるだなんてと思いつつ創作を止めることは出来ないのだ

「どうしたの?なにか悩んでる?」
「こんなの聞くのは変だけど、私の文章って面白い?」
「〜っそれを俺に聞いちゃう?当たり前だろうッ!」

まるで引き金を引いたように彼はノンストップで話し始めて、ポケットの中に詰め込んだくしゃくしゃの紙を広げてはこの話の何行目のここが…と語るものの彼女は今相当気分がノッていなかった
彼女自身も読んでみては自分の中でこのキャラクターはこんなにも子供臭かったのかと呆れさえしてしまう、しかしそれは彼女が趣味で書いていた頃からずっと大人になり社会や人間をしったから感じる素晴らしい事だった

「スランプなのかな、女キャラに納得できないの」
「女の子に?すごく魅力的だよ、俺はスーパースターの書くNickにメロメロな彼女がすごく好きだよ、俺に恋するキミみたい」

そりゃあどうも。と彼女は一蹴した態度に彼は目を丸くした、彼女が女性であるが故に望む女性像というものがあるのかもしれないと彼は必死に"恋人"として考えた
そして彼は知っている、彼女のこと全てを熟知していた、今まで描いてきた女の子はどれも子供のように無邪気でかわいくて世間知らずで素敵なクールな男性Nickに出会って変わる
まるでマイ・フェア・レディの綺麗なバージョンのようだろうと彼女は感じる頃、突如部屋から出ていったNauseaに溜息をこぼして休憩をしようとコーヒーを入れるためにドアに行こうとすれば大きな足音と共に彼が手に荷物を抱え帰ってきた、これこそがダメな事だったのだ

「スーパースターが書くタイプと真反対にしよう」
「真反対?それはその…」

大人でセクシーで男を知ってるビッチだ!
…という彼にNickに盲信している彼がそんな女を宛てがうことはいいのかと若干心配してしまう、なんせ彼は自己投影型のドリーマーであるのだから解釈の相違があるとき彼の大好きな抱き枕代わりの安眠を提供してくれる斧で殺されるかもしれないからだ
しかし彼は予想だにしない言葉とプリントアウトした紙を見せた

「だって結局のところ、俺とスーパースターの物語だから」

彼女は見せつけられた紙を初め遠巻きに見ては驚いた、風俗のHPだったのだ
下着姿の女の子たちがインターネットの画面上で偽名とスリーサイズにコメントを載せている、彼女は一体何を見せてきてるのかと声を荒らげようとしたが彼は声高々に告げる

「だってスーパースターは男と寝るプロなんだから、ビッチの書き方がわかるはずだ!」

彼の脳みそを一度はじき飛ばせばいいのだろうか?
彼女は疑問を感じつつ酷く後悔した、何故なら彼が見せつけてきたプリントアウトしたそのHPは身に覚えがあった、それどころか真ん中に写ったぎこちない笑顔の女は自分である、他の子達がモザイクをしている中外している為言い訳はできない、仕方なかった目元のモザイクがないだけで200ドル貰えたのだから、甘い声には抗えなかった

そんな最悪の過去を思い出しつつも彼女はそうじゃないだろうと冷静に受け答えをしたが彼は手の中のものを差し出した、身に覚えのあるものだったが知らないふりをしようと彼女は椅子に戻りパソコンのキーボードを触るふりをした、隣にわざと視界に入る位置にきた彼を無視して彼女は目を閉じた

「俺以外の男と寝るなんてな」

苛立ったような低い声、これはまずいと思った

「俺にはシてくれない」

当然のことだが彼は納得しない、できるわけが無い

まるで呪文のような言葉は全て彼女がHPに掲載していた時のプレイ可能内容である、60分90分120分と呪いの言葉をかけられて彼女は彼を見つめた、彼の独特の深淵のような眼差しが覗き見てくることにゴクリと唾を飲み込んだ、俺のための物語を書くと言ったのに。という目に顔を俯かせる
恋人として隠せてはなくとも伝えていなかったことや、彼なりに真剣に意見してくれていることを理解しては彼女は彼が望むことを与えてやることにした、決して斧が自分に降り掛かることに対して恐怖している訳では無い……ハズだ

拍車喝采観客全員スタンディングオベーション
その場にいた全ての者が涙し指笛を鳴らし大興奮していると言わんばかりの激しい喜びを一人で体現する彼に、彼女は消えてしまいたかった
彼女が新しい魅力ある登場人物を描くことを望んだが

Nauseaは彼女に娼婦になれといった

―それはつまり彼は今日のセックスであの頃の再現プレイをしろという意味である、彼はスーパースターと呼ぶ彼女が望むならどんなこともしてみせる
いっその事、彼はあの店に通ってたのではないのかと聞きたくなるほど用意周到に彼女が働いていた店で来ていた制服という名の意味の無いランジェリーのセットを両手で差し出した、躊躇する彼女に対して彼は酷く楽しそうな笑顔で「着替えが終わったらノックするから」といって部屋を出たことに深い溜息をこぼした
数分後、彼女が本当に着替え終えてベッドに腰掛けた頃、ドアがノックされ彼女は招き入れるような返事をした、とっととこんな事は終わらせてやろうとベッドに座ったままでいればドアを開けたNauseaは二歩進めたあと「違う」と呟いた
何が違うのかと聞きたくなったものの彼は抑えきれない怒りに似た興奮に血走った眼差しをしており、これは相当機嫌を損ねたらしいと感じていれば彼は声を荒らげる

「今俺は客で!そっちはプロだろ!」

参った、こいつは痛客を引いたらしい

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