完璧始祖
男ばかりの家系である故に娘や姪など所謂女がこの血筋にいたならばまた違ったのかもしれないとネメシスは目の前の彼女を見て思った
「サダハルおじさま」
そういって笑みを浮かべる彼女に釣られて笑みを浮かべるネメシスことキン肉サダハルは内心叫んでいた、頼むから早く誰か迎えにこいと
この完璧超人達の根城となる超人墓場であるモン・サン・パルフェを取り締まる始祖達のトップであるザ・マンの膝の上にいるナマエに対して思うのだった。
◇◆◇
ナマエは冒険心が強く、そして正義感と好奇心も強い女だった
幼い頃から世界中を回るアグレッシブな両親に振り回され寂しい幼少期を過ごしたものの大人になり親と同じことをしてみればそうしてしまう理由も理解出来た
様々な国や人に会うことは彼女にとっての人生の楽しみであり、言語が通じずともその場の空気やノリでやっていけたこと、そして出会う人々はみんなとても親切丁寧な者たちばかりだったのだ。
「ここがサグラダファミリアかぁ、やっぱり凄いなぁ」
百年以上も造られ続ける未だ未完成の教会は圧倒的な美しさをその場に放ち神聖なるその姿にナマエは胸ときめかせた、自分の住んでいた日本には全くなかった建物も新鮮であり手に持っていたカメラを向けては頬を緩ませる
厳重警戒が貼ってあるゆえに多少警備員やサグラダファミリアを守るために併設されたリングが邪魔だと感じるもののそれも味であり、後ほど新人の正義超人達にサインでも貰おうと考えつつふと小さく鳴り響いた腹の音に顔を赤く染めてお腹を手で覆い隠す
「取り敢えずお昼食べに行こっと」
丁度集団の観光客もやって来たことからその場を後にしたナマエは繁華街に足を運ぶ、バルセロナでも特に人の多いその場所で様々な食事の香りに刺激を受けるナマエは何をしようかと思っていた時、ふと目に付いたホットドッグでも…と思って足を向けようとするものの高身長の変わった見た目の存在に気付き足をそちらに向けた
店主と何か揉めているその男は明らかに人とは違う超人であり、ナマエは店主とその音この間に入り何事なのかと話を聞いてやった
「ケチャップを掛けようとして怒られてるんですか?」
「あぁそうらしい」
「なるほど、この国じゃ出された料理に調味料掛けるのはダメらしいですからね、そんなことより店主さんお腹すいたので私もひとつください」
些細な揉め事だと感じつつ彼の手にあるタパスを見てはナマエも思わず食欲が駆られて同じものを注文すれば店主はナマエには悪意は無いためヤレヤレと言った表情で提供した
「んん〜美味しいっ!最高ですね、やっぱりここに来てよかった人生の幸せが詰まってる、ほら貴方も食べてください」
「食事中に話すのは良くないぞ」
「タパスは会話をしながら食べる料理ですよ、美味しいって共有し合う友情の食事です」
「ゆう…じょう…か」
彼女の言葉に呟いた彼に店主も頷いては食べることを催促させれば口に含めた彼の目は僅かに輝いたように見えた
「うまい」
その言葉に表情を明るくさせたナマエは店主に頼み他の食材を利用したタパスをと求めて二人は気付けばまるでビュッフェの如く出店であるその店の前を陣取って食べていることが集客に繋がったようで、随分と繁盛した店の店主からは改めてナマエと揉めていた男、ジャスティスマンに感謝が述べられた
「沢山食べちゃいましたね、付き合わせたみたいですみません」
「いや私一人ではあの店主とあぁはなれなかった感謝する」
「そんなことないですよ、ずっと美味しそうに食べてたジャスティスマンさんの顔を見てたら私も嬉しくなっちゃいました」
とはいえ長い時間過ごしていたせいで観光名所はもう回れないかとガッカリとしたナマエに女ひとりでの旅なのかと思わず心配で問いかけたジャスティスマンに慣れているからと彼女は返事をした
美しい河岸を歩くナマエは物静かだがしっかりと話を聞いてくれるジャスティスマンにすっかりと心を開いては旅の話や、自分の生活の話、そして大好きな幼馴染の話をした
「ナマエはとても清い人間だ、お前が誰もに愛される理由がよくわかる」
「そうですか?私は出会う人みんな大好きです、いい人ばっかりだからもっともっといろんな場所に行って色んな人と出会いたい」
地球は丸いから大変だし、もうほとんどの国に行ったから暫くはお休みかな。という彼女にどれほどの国を回ったのかと問いかければ彼女は指折り数えつつ本当に行ってない場所はなくなってきたと痛感していた
「あっ、でも私モン・サン・パルフェ行ったことないんですよね、超人さん達の目指す場所でしょう?一回行きたいんですけど人間だからなぁ」
「……行くか?」
彼女の言葉に返事をするジャスティスマンに目を丸くしたナマエだが、彼は自分が元々そこに住んでおり今は世界を知る為に練り歩いているところなのだと説明した
そんな奇跡があるのかと思いつつ人間には行けない場所と噂されている神聖な場所に行っても良いのかと頭を悩ませる彼女にジャスティスマンは表情を和らげた
「ナマエならば私の仲間達も赦すだろう、それにお前は私を助けてくれたのだから礼くらいさせてくれないか」
その言葉にナマエは僅かに悩んだ末に自分が行きたくても簡単に行けない場所だと理解していた為ジャスティスマンに深く頭を下げて頼めば彼は「ハワーッ!」と大きな声を出して異空間の扉を開いたことに目を丸くするのも束の間に彼はナマエを抱きモン・サン・パルフェに帰ったのだった。
◇◆◇
「全く来るなら先に伝えてくれと言っただろう」
「すまない、突然の事だったんだ」
「私が無理をお願いしたせいですすみません」
「あぁ謝らないでくれ、キミのせいじゃない、反対にこんな愛らしい女性がここに来てくれたというのに申し訳ないほどだ」
入口を入ってすぐに立っていたのは長い髪の門番、ミラージュマンであり彼はあの日のゴールドマンとの戦いに敗れたあとも今なお完璧超人として挑戦に来る超人たちを見極める門番をしていたのだった
突然の来客に驚きつつもジャスティスマンの連れてきたナマエをみては優しく迎え入れる彼にナマエは手土産のひとつもなかったことを思い出しさらに申し訳なさを感じた
「テハハッ!ジャスティスマンが帰ってきた…それも女を連れてとはな」
「全く外に出たと思えば直ぐにそんなことになるとは隅におけねぇな!」
騒がしく現れたのはペインマンとアビスマンであり、それぞれがジャスティスマンの腕の中にいるナマエをみては興味深く近寄ってはまるで動物に触れるかの如く撫でくりまわした
「おぉ柔らかいなぁ、いい柔軟性を持っているではないか」
「ひょっひょうれふかぁ?」
「人間の割に足の筋肉がいい、こりゃあよく歩き回ってる見てぇだな、働き者は好きだぜ」
「あひあほーごじゃいまふ」
二人に捏ねくり回されるナマエを見下ろしてはジャスティスマンはふと腕の中に抱いている彼女を隠すように後ろに下げては「観光に来たからここで時間を潰してても意味は無いだろう」といい、モン・サン・パルフェの奥に足を進ませるも三人も楽しそうにその背後をついて行った
「それで…これはどういうことですか」
「あぁネメシスか、ナマエが待っていたぞ」
無量大数軍のリーダー格を務め完肉の称号を持つネメシスは始祖達の呼び出しに緊急事態なのかと慌てて滅多に使わない客間にやってきたものの、その光景に思わず目を丸くしてしまう
そこには始祖達が全員揃っていることはもちろんだが、その中心には一人の人間の女がザ・マンの膝上に座っていた、彼女はネメシスを見るなり目を丸くしては膝上から立ち上がり駆け寄っては彼の胸に飛びついたのだ
「サダハルおじさま!!」
石鹸の心地よい香りと華奢で小さな温もりに親しげに呼ばれた家族のような呼び掛けに胸が熱くなると感じつつも彼はハッと慌てて女の肩を抱いては引き離し「何をするんだ女!!」と声を荒らげた
そうすれば彼女は見る見るうちに萎んでしまい眉を下げては「ごめんなさい」と呟いたことに罪悪感を覚えるのは何故なのか
「そう怒らないでやってください、彼女どうやらキン肉マンさんの幼馴染だそうですよ」
「キン肉マン…の?」
サイコマンの言葉に幼馴染?と繰り返して呟けば彼女は今度は太陽のように表情を明るくしてはキン肉マンことキン肉スグルの話を始めた
幼い頃の日本で知り合いそれからずっと隣で過ごしてきた大の親友であり幼馴染であり、彼の優しさと強さにずっと助けられてきたのだと嬉しそうに語る彼女の話は普段張り詰めた厳しい完璧超人である彼らの空気を柔らかいものに変えていく
「サダハルおじさまのお話も聞いてて、本当は一緒に生活して欲しいけど断られて寂しかったってスグルちゃんがいってて」
「そ、そうか」
「スグルちゃんの大叔父様ならきっと素敵な人だから私会いたかったんです、こんなところで会えるなんてとっても嬉しいです」
まるで子供が親に甘えるように年甲斐もなく抱き締められてしまえばネメシスは初対面の女でありながらも何処かその温もりや穏やかさに独特の空気感は確かに自身の兄やそしてその息子、更には孫にあたるスグルに共通したものであった
「とはいえはしたないのではないのか」
「いくら家族とはいえ男に抱擁など」
そうして引き剥がしたのは完璧漆式と捌式であるガンマンとシングマンであった、彼らはナマエを取り囲んでしまえば完全に見えなくなってしまい、人間を好まない彼らでもナマエには興味があるのか話をしたり撫でくりまわしたりしているのが隙間から見えていた
しかしながら眺めていればナマエはあっちへそっちへと腕を引かれては次第に彼女の両手両足が始祖達に掴まれていることに気づきネメシスは慌ててナマエを救出してやり、椅子に座らせてやった
全くもって始祖ともあろう彼らがこんなにも乱されてしまうとは些か危険な女だと冷や汗を描きつつサイコマンと共に茶菓子の用意をしていればふと問いかけられる
「かわいいお嬢さんですね、ネメシスさんの姪っ子さん」
「血族ではない、アレは普通の人間だ…オレには関係ない存在だ」
「といいつつ嬉しそうだったくせに、気になさらないようでしたら私が可愛がっても?」
着せたいお洋服も沢山あるんですよ。と楽しそうに笑うサイコマンの趣味に付き合わされるナマエを思えば危険だと感じたネメシスは「ダメだ!」と声を張り上げれば楽しそうに笑われてしまう
全くもって人で遊ぶ趣味の悪い奴だと思っていれば背後で小さな音が聞こえ振り返った先にはナマエがいた
「お茶の用意私も手伝います、なんかみんな今盛り上がってるみたいで」
その言葉に隣の客間を覗けば他の始祖達がそれぞれ技の掛け合いをしている姿が見えたことにネメシスはどっと疲れを感じつつ、止めてくるかと用意を彼女に託してはその場を後にした
「お茶を入れるの得意なんですね」
「はい、以前ロビンマスクさんに教えてもらったんです、お陰様でちょっとだけ得意になりました」
「ですが…こうする方がもっと美味しくなりますよ」
そういってお茶を淹れるナマエの後ろに回ったサイコマンは彼女の手と腰を抱き締めて淹れ方を再度教えてやった、近い距離感と心地よい彼のフレグランスの香りに思わず照れくさく感じ赤くなるナマエの耳を撫でては
「かわいらしいですね」
といったサイコマンにどうすればいいのかと思っていたがそこに割り込むは黒い影であった
「拾式距離が近すぎるのではないか?」
「おや、カラスマンさんですか、向こうでじゃれてていいんですよ?」
「こちらのお嬢さんが困っているように感じてな」
サイコマンから引き剥がされるようにカラスマンの胸に抱き留められたナマエは頭上でバチバチと火花を散らす二人の男を気にせずにその彼の肩に留まる二羽のカラスをみつめた
まるで黒曜石のような瞳に吸い込まれるように手を伸ばせばその二羽のカラスは甘えるように手の甲に頭を擦り寄せた
「かっかわいい〜」
堪らずに呟いたナマエに何かと二人が胸元に視線をやればネバーとモアと戯れるナマエがおり、勝ち誇った顔をするカラスマンと憎らしく睨みつけるサイコマンがいた、なにやら言い合いをする二人を他所に彼女は茶菓子の用意をしては落ち着いたらしい客間にいけばそこには先程まで騒がしかったはずの始祖達とネメシスは立ち去りザ・マンが一人座っていた
その巨体故に椅子が小さく見えてしまうと思いつつナマエは手に持ったトレーのお茶の意味が無かったかと思いつつも特に気にせずに隣に腰かけてはザ・マンの前にお茶とサイコマンが用意してくれた焼き菓子を置いた
「客人に任せるとは不甲斐ない」
「いいんです、みんな忙しい中で私なんかを招いてくださりましたから」
「人の子は珍しいからな、可愛くて堪らんのだ」
人一人分ほどの差が二人にはあるものの、ザ・マンはナマエに合わせるように前屈みで彼女の顔を見つめて話をした、そんな彼の顔を見つめ返すナマエはまるで見惚れるように彼を眺めるため何か気になる点でもあるのかと小首を傾げた
「やっぱりスグルちゃんがいうように、とっても優しい神様なんですね」
「…元だがな」
身振り手振りで幼馴染から聞いていたザ・マンの話をする彼女はまるで子供のように純粋で真っ直ぐでそして心優しいものであり、そうした心の持ち主というものは成長するにつれて消えていくものだがナマエはそうでは無いのだと感じた
だからこそ彼女は人々に好かれ囲まれるのだと理解する。
「始祖のみなさんも全員無事でよかった」
「あぁそれもこれも君の幼馴染のお陰だ」
「スグルちゃんは泣き虫で怖がりだけどとっても優しくて強い子なんです」
私の手もずっと引っ張ってくれるヒーローなんです。と嬉しそうにいう彼女に胸を暖かくさせては冷める前にお茶菓子を頂いてしまおう告げて静かな客間で二人は雑談を混じえてお茶をした
ふとナマエは先日魔界に行き、その際にザ・マンのかつての弟子でもある悪魔将軍にあったのだと嬉しそうに報告した
「それに見てくださいサインまで貰ったんですよ」
それはもう宝物を貰った子供のように嬉しそうにどこか得意げにいう彼女だがザ・マンは酷く静かであった、そんな彼のことを気にせずに彼女は悪魔将軍について興奮気味に語ってはいうのだ
「私悪魔将軍さまのファンになっちゃいました」
今度またご飯に行くんです!と元気に報告をする彼女は顔を上げてみつめた先のザ・マンは肩を震わせ手に持っていたティーカップを粉々に粉砕しては勢いよく立ち上がった
「おのれ……ゴールドマン、私のナマエを誑かしていたのか」
赦さんぞ!!と怒声を上げて部屋を飛び出していってしまった彼にナマエは始祖は忙しいのだな…と感じつつ一人では食べきれぬ量の茶菓子を前にどうした物だろうかと小さくため息をこぼした
せっかく来たというのにジャスティスマンもネメシスもどこかに行ってしまい一人で探索するしかないのかと口にしていたマドレーヌを食べようかと口に運ぶ途中、ふと手首を捕まれてマドレーヌは簡単に相手の口の中に言ってしまう
「シルバーマン!」
「やぁナマエ、まさかここに来ているとは」
「シルバーマンこそどうしたの?その姿って大変じゃあないの?」
シルバーマンと呼ばれた彼は隣に腰かけては用意されていたお茶を自分のところに持っていきナマエをみつめた
以前から度々旅路で困った時に現れるシルバーマンがキン肉マンの開祖にあたると知ったのはつい最近のことであり、それまでは幸運のマスクとしか認識のなかった彼女の元に適度に実態化して現れるようになったのだった。
「たまには此処でナマエと二人きり、素敵な時間を過ごしたいと思ったのさ」
「そっかぁ突然宮殿から消えたらまた真弓パパたちがビックリするよ」
「いいんだよ、彼らは私が居なくてももう充分さ」
自分の先祖達の姿を日頃から眺める彼はどことなくやはりザ・マンと纏う雰囲気が似ておりナマエはクスクスと堪らずに笑ってしまう、そんな彼女に何がおかしいのだかと不思議そうに見つめれば白状されるものだから師であり父であり兄であるようなそんな男に似ていると言われたシルバーマンは気恥しさを感じつつも悪い気はしなかった
「シルバーマンが言ってた通り、悪魔将軍も始祖のみんなもとってもいい人だったよ」
「あぁよかった、また是非遊んであげておくれ」
「うん、シルバーマンも私と遊んでね」
そりゃあ勿論だとも。とまるで彼は自分の娘のように甘えてくれるナマエからのハグを受け止めては一番いいポジションというのはこうして相手を静かに導く存在なのだと内心呟いては優しくその髪を撫でてやるものの、近付く足音にあぁ面倒事が来るなと察しつつも抱き締める腕に力を込めるのだった、渡すつもりは無いのだから。
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