ザロン
chapter1
はるか昔トランスフォーマーという種族が地球に降り立ち彼らの戦争を持ち込んだ、トランスフォーマーのいざこざは和平的解決を行われたものの次に人類とトランスフォーマーの揉め事が始まった
しかし宇宙は広く銀河評議会という存在も踏まえ地球はあらゆる文明の進化を遂げ無事平和を取り戻し地球は彼らの第二の故郷となり二つの種族は共存するようになったのだった
「先生はとても良い方だから安心なさい」
「決して無礼のないようにするんだぞ」
あの方に嫁ぐだなんてとても誇らしいことだ。と語る両親にぎこちない笑みを浮かべ最後の挨拶を交わした
とても良い方に売り飛ばすように嫁がせたのは一体全体誰なんだかと唾を吐いてやりたい気持ちを抑えていれば家の外から聞き慣れないエンジン音が聞こえた、迎えだろう
「それではお父様お母様お達者で、わたしは立派な奥方になってまいります」
態とらしく涙ぐんだ親子を周りはきっと素晴らしいものだと思うのだろうがそんな風に祝ってくれる使用人達は数年前から居ない
そう…この家は陥落したのだ、先祖代々誇る上流家系であったというのにたった一代にして馬鹿な男と女が潰してしまった、そしてそれをどうにか戻す為に長女を売り飛ばしたのだ、トランスフォーマーに
運転手のいない車の前に大きなトランクケースを抱えみつめればそれはドアを広げた、迎えにしては酷くゴツゴツとした大きな車で地球のものに感じないと思っていればその緑の車は音を立てて形を変えた
「初めまして、貴方がナマエさんか?」
「はい、
今日よりザロン様にお世話になりますナマエです」
「俺はスプリンガー、貴方の送迎を頼まれている、悪いが乗ってくれ」
長距離移動になるがな。と付け加え変形した彼の車内に乗り込めば何も言わずに走り出す、遠くなる無駄に大きな家を見つめてはあそこにはトランスフォーマーも出入りできるようになっていたなともう何年も来ていない客人たちを思い出し長旅に思いを馳せるのだった
chapter2
長距離移動とは聞いていたもののまさかここまで長いとは思いもよらないものであった、スプリンガーはどうやら珍しいトリプルチェンジャーと呼ばれる多段変形者であり車からヘリコプターに変形してそしてまた車に戻った、何故彼が迎えに来たのか分かってしまうほどの移動距離に思わず瞼が落ちそうになれば心地よい彼の声が車内に響く
「この調子で行くともうあと三時間ほどは掛かるだろう、寝ていて構わない」
「じゃあお言葉に甘えて」
無駄な会話のないヒトは楽だと感じつつ瞼を閉じればすんなりと深い夢の世界に落ちてしまうのは疲れきっていたからだろう
優しく温もりのある家庭だった、裕福な上に人柄もよい両親、幼い頃のわたしは少々お転婆で使用人達と隠れんぼをするように逃げ出しては広すぎる家の庭で隠れんぼをした
遠くで聴こえるメイドのナマエさまと呼ぶ困ったような声を聞いてはクスクスと笑った時、強い影が差し込んだ
『また悪いことをしているんだね』
パチリと目を覚ましたのは何故か、いつもあの声に起こされるようだと感じた
短い夢だったと思うものの外の景色は変わっておりもう後十分で着くから準備をするようにとスプリンガーはいった、街なんて見えもしない随分と山奥のその場所に確かに見える城のように大きな建物
トランスフォーマーと人間が共存する社会は全てサイズ差が激しいものだった、スプリンガーは整った山道の車道を走り込み現れた門の前で待機をすればチャイムも鳴らさずともそれは開いた、まるで手招くように
「到着だ、今日はまだ彼は居ないから部屋まで案内しよう」
「はい」
そうして降ろされ眼前に広がるは自分の家よりも何倍も巨大な、ほとんど街と変わらない広さの建物であった
元より旦那様はトランスフォーマーの中でも特別な方であり大層裕福な方であるとは伺ってはいたがまさかこれ程までなのかと驚きを隠せずにいればスプリンガーは歩き出す、巨大な一歩に小走りでついて行きつつ室内に入れば豪華絢爛の限りを尽くしたように華やかな家であった
まるで一流の劇場のような入口から美術館のような廊下に開いたドアから見える部屋はどれもが使われている様子は伺えないが一級品の家具ばかりが設置されているのが目で見てわかる
スプリンガーはこの屋敷は人間の都市と同じ広さを誇り、全てがトランスフォーマーと人間両方が共存できる造りになっていると告げた、また無闇矢鱈と部屋に入ることはダメだと告げるのはひとつの部屋がどれもただの普通のものでは無いからだろう
「使用人は居られないんですね」
「生憎とだがな、もし必要なら彼に相談してくれ」
「畏まりました」
元よりこの家はあの方一人のもの、おまけに人間など家に来ることもないから知らないのだろうと察しつつただの金持ちのお嬢様ではない自分は身の回りの事ができるから困らないしいいか…と言い聞かせた
廊下を歩く度に響くような金属の音はまるでここが異質なものだと告げるようだった
「ここが君の部屋だ、何かあれば呼んでくれ」
それじゃあ…と愛想も無く行ってしまったスプリンガーを見送っては直ぐに与えられた部屋の中を見渡してベッドを見つけては慌てて駆け込んで倒れる
あの車内の空気は酷く重たく息苦しいものであった、いっその事あの空気感に壊されてしまいそうだと感じるほど
トランスフォーマーサイズのベッドは人間が十人ほど乗っても問題は無いほど広く身体を仰向かせて天井を見ればそこからベッド全体に薄いカーテンが掛けられていた、近くにあったクッションを手繰り寄せればどこか懐かしい様な嗅ぎなれた洗剤の香りがした
わたしは今日からここで暮らすのかと考え着替えることや荷物の整理等も忘れて瞼を閉じる、隠れんぼをする夢を見て
chapter3
いつの間にか朝が来ていた、外は祝い事があるような晴天であり子鳥のさえずりさえ聞こえる始末、ふと視線をベッドの横にあるテーブルに向ければそこにはまるで着替えろと言わんばかりの洋服にメインテーブルの上には朝食がセットされている
自分で用意をしない食事というのはいつぶりかと感じる反面眠りに浅いタイプだというのにそこまで静かに動ける使用人がいるのかと関心を覚える、流石は超一流のトランスフォーマーの屋敷だ、きっと使用人達も顔は見えないものの教育されている事だろう
とはいえ一人で着替えることは変わらないのかと思い服に手を伸ばし気付く、昨日は来たままの服で寝たというのにネグリジェに変わっていることに気味悪さを感じながらも品のないのはこちらかと思いボタンを外す、丁寧に下着まで変えられているが拒否権などないことだろう、せっかく着てきた服は洗濯にでも出されたのかと思いつつも洋服に着替え静かに席に着き朝食を口に運ぶ
まるで物語の中のように静かで隔離されているようだと感じてしまう頃ドアが開いた、伸びてきたゴールドに近い黄色の足から視線を上向けては慌てて口元を拭い立ち上がる
「ザロンさま、おはようございます」
「おはようナマエ、朝食はどうかな?人間のものは分からないから作ってもらっているんだが口に合うだろうか」
「ええ勿論です、昨晩は挨拶を出来ず申し訳ございません」
「気にしないでくれ私も昨晩は遅くまで帰って来なかったんだ寝顔くらい見てもよかったが二度目の顔合わせがそれでは君も嫌だろう?」
それは当然のことだと感じながらも二度目といわれ一度目の出会いを思い出してしまう、深夜両親がコソコソと話をしていたことを
『ザロン先生がナマエを娶りたいと』
『そんな…あの子はまだ19ですよ、それにトランスフォーマーとだなんて』
『しかし先生はこの家の全てを引き継いでくれると』
ごくりと唾の飲む音が聞こえたのは気のせいではないだろう、涙する母とそれを慰める父、そして翌日二人に呼び出されたかと思えば縁談の話を出されたのだ
断れるわけがなく一度顔合わせするだけならばとその場限りの言葉を告げたもののそれは決定事項であることは自分なりに理解はしていた
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