First order 3

「はーい、こっちは容器の回収しますよー。此処に入れてね、纏めて捨てるからねー。」
「棗君!私がやりますから、」
「御冗談をw作って貰っといて片づけまでさせるとかw」
「良いです、良いですから本当、にっ!?」

紫希の背中側から紀伊梨が飛びついた。

「今日も美味しかったよー!紫希ぴょんありがとー!」
「お、お粗末様です・・・」
「お粗末じゃないよー!美味しいもん!これにも紫希ぴょんの愛情が、たーっぷり入ってるんだよね!」
「おまんへの愛情は入っとらんかもしれんぜよ。」
「入ってます、入ってますよ!私、紀伊梨ちゃんの事大好きですもの!」
「やたー!私も紫希ぴょんの事大好き―!ほーら、どーだニオニオ!羨ましいか!」
「全員になんだから全員への気持ちが入ってるんじゃないのか・・・?」
「良い事言うの、桑原。どうじゃ、対等ぜよ。」
「ぐぬぬ・・・紫希ぴょん!私とニオニオとどっちが好き!?」
「えええええ!?」

面倒くさい彼女の様な事を言い出す紀伊梨。
棗はけらけら笑うばかりで止めようとしない。

「私だよね!私だよね!」
「俺じゃろ、春日?」
「えと、えと、えと、」
「その辺にしておけ、仁王。」

柳のノートが、仁王の後頭部をふんわり叩いた。

「あまり五十嵐で遊ぶな。」
「やなぎー・・・!」
「とばっちりを食う春日が気の毒だ。」
やなぎー!?いや、それはそうかもしれないけど、私の心配は!?」
「春日、ゼリーを有難う。美味しかった。」
「あ、いえ!」
「無視は止めてやなぎー!いじめ良くない!いじめ良くないよー!」

ぺしぺし腕を叩かれているが、柳は涼しい顔をまったく崩さない。
仁王はそれを見て笑いながらカップを戻した。

「御馳走さん。美味かったぜよ。」
「いえ、お粗末様です。でも、あんまり紀伊梨ちゃんを苛めないであげて下さいね。」
「ピヨ。」

どうやら弄るのを辞める気はないらしい。

「そーだそーだ!もっと紀伊梨ちゃんに優しくしてよー!」
「そういうフリなんじゃろ?」
「ちーがーうー!」
「そうか?そんならお前さんの代わりに春日に犠牲になって貰って・・・」
「それもダメー!」
「我儘な奴ナリ。」
「我儘!?これ我儘なの!?」

仁王に転がされっぱなしの紀伊梨を、桑原だけは気遣わしげにちらちらと見ている。

「良いよ桑原気にすんなw」
「良いのか・・・?」
「彼奴も楽しんでるって、多少はw」
「桑原君、此方に。」
「ああ。有難うな春日。」
「いえ、大した事では。」
「いや、でも実際大変だろ?特にお菓子の類は。」
「良く知ってんね?」
「ブン太も作るからな。」
「「えっ!?」」

思わず大声を上げてしまう紫希と棗。

「あれ?知らなかったか?」
「初耳です・・・」
「食う専門だと思ってたw」
「彼奴、お菓子も料理もなんでも作るぞ?」
「マジかよw」
「何の話してんだ?」

そう聞いてくるのはカップを手で遊ばせている渦中の丸井。

「お前の話だよ。」
「料理上手いの?ブンブン君。」
「おう!言っておくけど、かなり美味いぜ?料理でも、お菓子でも、ちゃんとしたもんから大雑把なもん迄、なんでもござれだろい。」
「マジかすげえw」
「・・・あの、丸井君。」

紫希がおずおずと話しかける。

「うん?」
「申し訳ないんですがこういう機会に、後学の為にも何かダメ出しがあれば、どんどん言って頂けると非常に有難く・・・」
「ああ・・・」

確かに、一方的に食べるのではなくて自分でも作る人間の意見は、貴重なものだ。
聞きたがる気持ちも分かるけど。

「んー・・・でも出来ねえかな。」
「え!?」
「お前の作るの美味いだろい?別にアドバイスするような事とかねえもん。」
「そんな事はあり得ません!」
「なんでこんな時だけ自信満々なんだよ。」

何時にない、はきはきとした口調に丸井は笑ってしまう。

「なーいよっ。本当だって。」
「絶対ありますよ。」
「無いって。」
「あります。」

尚も言い募ろうとする紫希を、丸井の真剣な目がひたと捉えた。


「無い。春日が作ってくれる物は全部美味い。」


愛ある料理は美味い物。
それは単に、愛情が籠ってるとか手作りだとか、そういう精神的な話だけじゃないと丸井は思っている。

愛があるから、努力する。
何度だって練習して、次はもっと上手くやろうとする。
アレンジして、味見して、駄目なら分量を変えてタイミングを計って、コンロやオーブンや冷蔵庫のクセを見極める。
甘いのが得意じゃない誰かの為に砂糖を減らして、抹茶や果物で味を作ったり。
手作り食べられるかとか迄気を回したり、運動後だからクッキーじゃなくてゼリーにしようとか、いつだって食べる人の事を考え、考え。

だから紫希の作る物は上手に出来上がる。
丸井だってそうやって上手くなったのだから、その事が凄く良く分かる。

そんな風に愛情いっぱいな紫希のお菓子に向かって、ダメ出しだとかそんな事、言えないし言う気も起きない。

「逆に文句言う奴とか居たら俺に言えよ?そんな事無い!って説教してやるからな?」
「どうしてそんな話になるんですか・・・?」
「当たり前だろい。良いか?そもそも春日のお菓子のすげえ所は、」


「・・・なあ、黒崎。」
「んー?」
「前言ってたよな?ブン太が凄い奴だ、ウィザードだ、って。」
「言ったねwそれがどしたん?」
「俺は春日の方が凄いと思うんだが。」
「おお?どの辺見てそれ言ってる?」
「だって彼奴、あのブン太をするっと食欲から剥がすんだぜ?今だって、多分他の奴相手なら又作ってくれとかねだる場面なのに・・・」

でも今の丸井はそんな事言ってない。
聞こえてくる会話から分かるのは、紫希がどういうお菓子を作ってて、それのどこを良いと思ってるかを力説してる事。

「・・・そうね。まあ2人とも意外に相性が良かった、って事で今は置いとこうかななんてw俺的にはw」
「ねーねー!何の話してるのー?」

紀伊梨が棗の後ろから顔を出した。

「いや、春日がブン太と仲が良いって話をな。」
「あー!そうだよね、紫希ぴょんブンブンの事好きだよね!」
「好き・・・まあ、大きく言えばそうなんだろうけどな。」
「言い方もうちょっと考えてやれよw」
「俺は逆だと思っとったナリ。」
「逆って何がー?」
「丸井の方が春日を構ってるんじゃないかの。」

仁王にはそう見える。
この前の作戦の話の時に確信を得た気がしてる。

「あー。・・・因みにやなぎー君のご意見は?」
「まだデータが足りない。断定的に言える事は僅かしかないが・・・」
「・・・ないが?」
「少なくとも、向こうの3人の取り合わせよりは、遥かに安心して見ていられる関係だな。」

あー。
という声が揃って聞こえた。

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