Sea world


水族館の中はひんやりとしていて涼しかった。
青に染まる視界と薄暗い照明で、更に体感温度が下がって快適。

「あっ、エイだっ!エイが居るっ!」
「可憐ちゃん、こっちにウミガメも居るわよ!」
「えっ、どこどこっ!?」
「ほら、あそこ!こっち向かないかしら?」

「へえ・・・思ってた以上にでけえな。」
「芥川、ほら。起きいて。その為に来たんやから。」
「にゅ〜・・・?」

可憐は、入って出迎えてくれた海の生き物たちに心躍らせた。
水族館なんていつぶりだろう。少なくとも去年は行かなかったから、1年以上は行ってない。

「・・・あれっ?この水槽何も居ない・・・こっちかなっ?あれっ?」
「居るで。」
「えっ!?嘘、どこっ!?」
「そこに。」
「・・・・?」
「ほんまに目の前やで。此処に手あるやろ?あっちが足やねん。ほんでここに顔で、それが目。」
「・・・・ひゃああああっ!?」
「可憐ちゃん!」

可憐は本気でびっくりして尻もちをついた。

目の前の水槽には、かなりのBIGサイズのオオサンショウウオが居た。
大きすぎて、近すぎて、擬態が上手すぎて、忍足に説明されるまで本当に見えていなかった。
しかしそこに居ると一たび知覚したら顔が至近距離にあって、可憐はここ最近で一番というくらい驚いた。

「大丈夫?」
「ご、ごめんね忍足君・・・ああびっくりした・・・!」
「もうちょっと、言い方考えるべきやったやろか。」
「ううん、関係ないよ・・・」

手を貸して貰って、まだびっくりが抜けきっていないままちょっとよろついて立ち上がる可憐。
ああびっくりした。くどいようだが、本気でびっくりした。

「ええとこっち・・・こっちはヒトデかなっ?」
「・・・・・」
「あっちに居るのは・・・エビ?」
「可憐ちゃん。」
「えっ?なあにっ?」
「腰引けてるで。」
「そ、そんな事は・・・」

忍足は苦笑した。

もうオオサンショウウオから離れたが、可憐は明らかにぎくしゃくしている。
おっかなびっくりというか、もう絶対同じ轍は踏むまいと思うあまり、警戒心バリバリ。
水槽から微妙に距離を取り、どこに何が居るか確認しきり。

「・・・可憐ちゃん、水族館やと何が好きなん?」
「え?ええと、水族館だと・・・私、ペンギンかなっ?」
「・・・・ああ、あった。近いわ。」
「えっ?何がっ?」
「ペンギンが。」

忍足はフロアマップを見て、ペンギンの居る位置を確認する。

結構近い。
とはいっても、もうちょっと進まないといけないが。

(いうて飛ばすコーナーもタコとかイカとかやから、まあ。)

あんまり女の子が興味ありそうな生き物とは言えない。
飛ばしても多分文句は出ないだろう。

「行こか。」
「えっ!?どこにっ!?」
「ペンギン。」

言うが早いか、忍足はさっと周囲を見回して、網代と宍戸が話している水槽に足を向ける。

因みに芥川は壁に凭れて眠っている。おい。

「宍戸に茉奈花ちゃん。」
「ん?」
「あら、2人とも。どこに居たのかと思ってたのよ。」
「あっちに居ってん。それで、ちょっと相談やねんけど。」
「「?」」

「今から、可憐ちゃんとペンギン見てきてええやろか。」

ペンギン。
可憐と2人で。

「いっ・・・良いよ忍足君、そんなのっ!」
「でも落ち着いて見られへんやろ。早めに頭切り替えへんと損やで。」

(おいおいおい・・・!)

お前は事情を知ってる側だろう。なのに何故だよ。
と宍戸は思わず考えてしまうが、可憐だって可憐なりに楽しむ権利があることもわかっている。

ううんと悩む宍戸の隣で、網代はあっさりそうなのと言った。

「ただ、それはそれとして後・・・・そうねえ、30分後にはこの辺に戻ってこれる?」
「多分出来るけど。」
「そう、なら良いわ!もう少ししたら、あっちの通路が開くみたいなの。イルカショーがあるのよ♪折角だから皆で見ましょ?」
「い、いやいやっ!それ以前に、別に無理してそんな事してもらわなくても、」
「ちょっとだけやで。」
「・・・・まあ。戻ってくるんだったら、実質30分かそこらの話だろ?」

そうやって、時間的な区切りを知らされると宍戸もまあそれなら・・・という気になってくる。たかだか30分の話だ。

「よし、決まりね!30分後にはここに集合!そして、イルカショーよ!」
「わかった。ついでに、芥川も連れてくわ。」
「えっ?でも、お前らがペンギン見たいんなら俺が、」
「いや。さっきからずっと宍戸が背負うてくれてるし。それに・・・」
「それに?」
「動かしたらもしかしたら起きてくれるかもわからへんし。」
「「「ああ・・・」」」

言われてる本人は、返事をするようにんが!と少しむずがった。


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