Aurora festa

「・・・・」
「有難う、樺地君っ!」
「ウス。」

可憐達+神宮+中二病の少女と気弱そうな男子の6人は、場所を変えて話をする事にした。
とはいっても模擬店のカフェである。
偶々樺地のクラスだったため、可憐は思いがけずウェイターの恰好をしている樺地を見られた。
心なしか他の生徒より給仕が堂に入ってる感じがするのは、普段から跡部に給仕している事からの手慣れ感からだろうか。

「さて!じゃあ先ずは自己紹介からね。とは言っても、こっち3人はお互い知っているんだけれど。」
「まあ纏めたら、俺らは氷帝学園の中等部の1年や。3人ともテニス部やな。」
「私は桐生可憐って言いますっ!こっちの女子が網代茉奈花ちゃんで、こっちが忍足侑士君っ!」
「私は、神宮詩織です。幼稚舎の6年生です。」
「俺は、神崎安音!小6で、中受して中学から氷帝に入る予定だ!先輩達よろしくな!お前も、氷帝の中学だろ?同級生だな、いっちょよろしく頼むぜ!」
「お、お前・・・ま、まあ、よろしくね・・・」

神宮は氷帝学園の中でも、所謂お嬢様育ちの部類に入る人間なので、同級生の女子からさも当たり前のように「お前」などと言われる事に違和感しか抱けない。
木崎でもせいぜい「あんた」呼ばわりなのに・・・と思う神宮は、神奈川は湘南に「そこの女」呼ばわりされた人も居るなんて、知る由もなかった。

「で?お前は?」
「俺は・・・芹沢、正樹。君達を見かけて、話したいことがあって・・・」
「おら、さっさと言えよ。」
「い、言うよ!もうここまで来たし・・・実は話っていうのは、君達が話題に出していた、木崎千歳さんの事なんだ。」
「・・・千歳ちゃんっ?」
「そうなんだ。俺は元々木崎さんに用事があってここまで来たんだけど、その木崎さんの話をもろに君たちがしていたものだから、気になってというか、相談に乗って欲しいことがあって・・・」

思いがけない方向に話が転がって、可憐は目を丸くした。
そうしている間にも、芹沢は話し始める。

「先ず、俺はそもそも氷帝の生徒じゃないんだ。此処から2駅向こうの、白野中学に通ってる。学年は、1年生。」
「へー!お前氷帝でもないのに、氷帝の女子の事知ってんだな。親戚とかって事?」
(結構鋭い子やな、見た目によらず。)
「あ?眼鏡先輩、何か言ったか?」
「何も。」

おまけに勘も良い。忍足は心の中のメモ帳にそう記した。

「いや。親戚なのは、俺の同級生の友達の方。ちょっとややこしいけどそいつは沖野っていう名前で、そいつが木崎さんの従兄弟・・・だっけかな。兎に角、親戚なんだよ。氷帝だ。知らないかな?沖野拓海。」
「あっ!」
「可憐ちゃん、知ってるん?」
「うん!学校で会ったことはないんだけど地区予選の時に、入口まで千歳ちゃんと一緒に来てたんだっ!結局、乗り気じゃないのを引っ張って来られてたみたいで、すぐ帰っちゃったんだけど・・・氷帝だったんだ、それは知らなかったよっ。」
「ああ、沖野は知ってるんだね。まあ兎に角、俺と沖野は友達なんだ。それで、7月半ばに頼みごとをされてね。」
「頼み事?」

「実は、木崎さんと沖野、それからもう一人氷帝の笛寺順平。この3人はバンドを組んでいるんだけど、それに俺が追加で入らないかって勧誘されたんだ。」

バンド。
氷帝のバンド。

この単語に、可憐の記憶の引き出しが擽られた。

「・・・・ツクヨミ、」
「ツクヨミ?」
「紫希ちゃん達が言ってたのっ!氷帝にツクヨミっていうバンドグループがあるってっ!」
「そう!それなんだ、俺達はツクヨミだ。いや・・・俺、達・・・」
「ああ?」
「ああ、いや。一先ず話を進めるよ。兎も角俺は誘われて、ベーシストとして入ったんだ。それで、8月にフェスがあるからそこでの発表に向けて、練習していたんだけど・・・」
「あ!」

安音がわかったとばかりに芹沢を指さした。

「わかったぞ、お前喧嘩したんだろ!で、仲直りしようとしたは良いものの気まずくて近づけないと!な、そうだろ!な!」
「決めつけじゃないのよ・・・」
「あん?神宮だっけ、何か言ったか?」
「ま、まあ強ち間違いでも・・・喧嘩じゃないんだけどね。どうも俺はその、メンバーとして認められていないみたいで・・・」
「それは木崎さんにやな?」
「そうなんだ。兎に角彼女、当たりが強くて。ちょっとした事でもすぐ怒るし、謝っても許してくれないし・・・他の2人は放っておけって言うばっかりで・・・」
「「「「・・・・・・」」」」
「はーん・・・あれ?何だよ、一斉に黙っちまって。」

この場で知らないのは、芹沢と安音だけなのだ。
実際木崎と過ごそうと思ったら、好きなようにさせているより他ないと言うことを。

「芹沢やっけ。」
「え?ああ、うん。」
「俺が言うのも何やけど、あんまり気にせえへん方がええで。」
「え、でもーーー」
「誰にでもそうなんです、木崎さんは。別に、芹沢さんに対してに限ったわけじゃありません。」
「へー。なあお前あれか?木崎ってやつとは、クラスメイトってやつか?」
「ええ・・・まあ、折り合い良いとはお世辞にも言えないんだけど。」
「ふーん。だってよ!」
「で、でも・・・だってよ、って言われても困るよ。空気が悪いし、沖野も笛寺も謝ってくれるけどそれでも不愉快だし、正直誘ってきたのはあっちなのにって思ってしまうし・・・こんな気持ちで練習しろ発表しろって言われても・・・」

(そうだよね・・・)

実によくわかる、その気持ち。
可憐はまだ、言うなれば自分が関わろうとしなければ関係が保てない間柄だが、バンドのグループであるとか否応なしに一緒にいなければならないとなると厳しかろう。
可憐だって厳しいと思う。特に、どんなに優しくしてもあっち側が拒否してくるとなると。

「そんなもん、がつんと言ってやりゃあ良いじゃねーかよ!なあ!先輩たちも、そう思うっすよね?」
「そういう問題じゃあないのよ、ね。」
「なんで?」
「私も、ガツンと言って直してくれるタイプじゃないと思う・・・」
「そもそも、今まで多分何度もガツンと言われてるやろうしな。」
「同意見です。」
「そんな・・・じゃあ、どうしたら・・・」
「んー・・・あ!ならさ、じゃあそいつの友達の真似はどうだ!」
「へ?」
「どんなに性格悪くても、一人くらいは友達居るんじゃねーの?要は、そいつとそっくりになれば良いんだよ!な!名案じゃん!」

確かに。
もしもそんな存在が居るなら、いけそうなプランではあると芹沢自身考えたが。

「居るかな、そんな人・・・」
「どうだ?クラスメイト!」
「・・・・い、ない、とは言わない、けど・・・」

これも安音と芹沢以外知ってること。
居るのだ、たった一人だけ。
友達には、ある意味一番遠い存在かもしれないけど。

「おし、じゃあ次だ!そいつを探しに行こう!な!」
「で、でもっ!今どこに居て何をしてるかーーー」

「音楽室・・・です。」

振り向くと、樺地が静かに立っていた。

「樺地君、知ってるのっ?」
「ウス・・・後1時間後に・・・合唱部の発表が、あります。その伴奏役だと聞いたことがあるので・・・打ち合わせをしていると、思います・・・」
「成程、居る可能性は高そうね!ファインプレイよ、樺地君!」
「ウス。」
「ほんなら行こか。時間が幾らでもあるいう状況やあらへんし。」
「そうだねっ!樺地君、有難うっ!」

さて、では行くか。
と一同は教室を出る態勢になるが。

「・・・・・・」
「・・・・・?」

「・・・ええと、安音ちゃんは来ないのっ?」

安音は樺地を正面に立ってじろじろと眺めていた。

「・・・でかいな。いや身長とかっていうより、ガタイが。」
「・・・ウス。」
「何食ったらそんな風になれんだ?」
「・・・特に、変わったものは。」
「本当かあ〜?良いもん食ってんじゃねーn「ほらもう、絡んでないで行こうよっ!時間がないんだからっ!」
「堪忍な樺地、邪魔して。午後も頑張りや。」
「ウス・・・」



4/7


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]

1年1学期編Topへ
1年夏休み編Topへ


-