First RAINBOW FESTA:Columbus egg
「凄いですね、いきなり特別賞を取る取らないみたいな話になっちゃうなんて。」
中学部門の特別賞候補はもう幾つかに絞れているらしい。
という話は、あっという間に一般客の間に広まった。
勿論スタッフ側もそんな進んでぺらぺら話してるわけじゃないが、人の口に戸は立てられないものであるからして。
だから会場に居残っていた板谷ら三人もその話はすぐ聞くことが出来た。
ついでにその候補の中にビードロズが入っている事も。
「ね、板谷先輩!」
「・・・幾つか、だからまだわかんねえだろ。」
「まあ、4、5組は入ってると見て良いだろうね。でも俺は、良い線行くと思うけど。」
「俺も俺も!もしかしたら、本当に取れちゃうかもしれないですよね?」
「取れたとしてどうだっていうんだよ。中学生だぞ。」
「それ関係あります?」
「あるだろ!高校生の方が大人に近いんだよ!・・・レベル低い中で争ってたって仕方ねえ。」
「・・・・ううん。」
伊東は板谷の言葉を受けて、自分の手を空にかざして見た。
高校生の方が大人に近いというのは、やる気とか熱意とかそういう話ではない。
大人に近いーーーつまり体が大きいという事。
ひいては手が大きいと言うことで、とどのつまりは大抵の楽器を弾くのが楽だという事。
高校生になると今よりもより楽器を上手く歌わせられる人間は格段に増える。
その中で尚輝いていられるか、そこからが本当の勝負だ。
なのにーーーー
「冬次。」
「・・・・・すいません。わかってるんです、立派だって。彼奴らは相当の時間をバンドに突っ込んでるーーーそういう演奏してましたから。」
これはただの逆恨みなのだ。
自分達が行けなかったその場所にビードロズなら行けるかもしれないのに、それを期限を決めて自ら捨てようとしているその姿に。
いや、本当は捨てるという表現さえ不正確。
ビードロズ達は決して捨てるなんて発想はしていまい。
「・・・帰ります?」
「帰らねえよ!最後まで見るに決まってんだろ!それで・・・本当に賞を取ったら、おめでとうって言ってやらないとだしな。」
「・・・そうだな。」
伊東が松岡に目くばせする。
板谷はそれに気づかない。
「セリ、本当にーーーー」
「ああ、本当だよ。俺、ツクヨミ辞めるよ。賞を取ろうと取るまいとな。」
ツクヨミはツクヨミでごたついていた。
リーダーの笛寺、それから沖野は、芹沢が脱退することを今初めてはっきり聞いた。
・・・まあ、今かよとは思いこそすれ、辞めてもおかしくないとも常に思っていたが。だから笛寺は、ため息を吐きつつも引き留めはしない。
因みに木崎は、勿論居ない。
「ごめん。本当だったら、賞を取れてそれから切り出すべきというか・・・結果が出せなかったら残るべきなんだろうけど。」
「いや、俺は寧ろそういうの抜きにして居て欲しいけどさ。セリは友達だから。まあでも、友達だからこそしょうがねえよなって気もする。俺も辞めたいもん。」
俺だって辞めたい。
笛寺は思ったが言わなかった。
言ったって詮無い事だし、言わないまでもそう思ってることは、多分ここの全員が知っている。
「・・・兎に角、わかったよ。お疲れ様。今まで有難う。居てくれて、本当に助かったよ。」
「いや、良いよ。それより早く次のメンバー、見つかると良いな。」
見つかるわけないだろ。
沖野は内心でそう呟いた。
芹沢は自分の知っている中で、超が付くほど温厚なタイプである。
その芹沢が駄目なんだから、他の誰だろうと駄目だろう。何かよほど特殊な事情が無い限りは。
「・・・念のために聞いておくけど、千歳はこの事・・・・」
「言ってないけど、多分興味もないだろうから。」
「まあ・・・・」
まあ、としか言えない自分を情けないと思った事だって、笛寺は一度や二度じゃない。
なのに未だにこの状態から脱却出来ていないのは、誰かのせいだとしたら誰のせいなんだろう。
ところで、特別賞候補がもうかなり絞られてるらしいという事実は耳伝いに会場に広まってきていて。
それが彼の耳に入るのも、時間の問題といえばそうでしかなかった。
「凄いね、木崎さん!特別賞の候補だなんて!」
「そ・・・そう、かな?大した事ないよ、このくらい・・・・」
正直木崎にとっては、特別賞貰えるかどうかなんて毛ほども興味がない。
が、鳳が凄いと言ってくれるのなら話は別である。
取りたい。
何としてもだ。
とは言いつつもう演奏は終わっているし、今から出来ることもないといえばないのだが。
(ま、候補とか言いつつうちで決定でしょ。他全部ゴミみたいなレベルのグループしか居なかったしーーー強いて言うなら、)
ビードロズか。
競れているとしたらそこくらい。
木崎はそう思うと同時に、それでも十中八九演奏の腕はこっちのが一枚くらいは上手だから、ツクヨミで決まりだろうという考えもしていた。
こうなると閉会式が俄然楽しみである。
閉会式には、特別賞で指名を受けるんだ。
そしたら、そしたらーーー
「木崎さん?」
「え、ううん!何でもない!」
また貴方が、私を見てくれる。
2/5
[*prev] [next#]
[page select]
[しおり一覧]
1年1学期編Topへ
1年夏休み編Topへ
-