Large bet 2

1。
2。
1、2、3、4。

ありがちなカウントでも、紀伊梨の口から出てくるだけで、特別なものになる。

何かが始まる予感。
何か凄い事が起きる予感がして、胸が高鳴る。

そしてビードロズのメロディは。
サウンドは。
パフォーマンスは、その期待を裏切らない。


「はーじーめーようっ!はじめーよう!素敵なー、こーとを!」


歌声に引っ張られて襲い掛かってくる、うねる様な音の波。
3ピースバンドとは思えないサウンドの厚み。

煩い位が丁度良い。
もっと大きく。もっともっと。
講堂を壊すくらい大きくだ。


「あ・すも♪き・みと♪会えるだけーで♪」


歌っていると思い出す。
この曲は、入学する前に出来た歌。


『紫希ぴょん!あのね、この曲ね!なんか青春!って感じで行きたいから、そんな感じの歌詞が良いなー!』
『まだ入学式は先でしょ。』
『確かに、俺達はまだ「青春時代」っていうものを体験してないからね。』
『気が早いなw』
『えー!やだやだ、青春が良いー!』
『・・・あ、ならこうしましょう紀伊梨ちゃん。これからの青春を歌詞にしてみます。』
『これから?』
『ええ。幸村君の言う通り、私達はこれから青春を体験するわけですから。』

だからその青春が、こうだったら良いなああだったら良いな。
こんな毎日を皆と過ごしていきたいな。
そういう期待と希望を、紫希は詩にしてくれた。


「せーいーしゅーんっ!顔あーげーてっ!下手くそな、ラ・プ・ソディ!
胸に何時も♪響かせてー、ready go!」



そうだ。
自分達の青春は、まだ。
これから皆で作り上げていくんだ。
その為には先ず。
今を全力で楽しむ事。


(皆、見て!)


鮮やかにメロディを弾いた紀伊梨は、ギターごと飛び跳ねた。


「き・せき♪だ・から♪この日々こそが♪」


(きっつい。)

ベースを鳴らす千百合。
練習と全然違う。
まだ始まったばかりなのに、体力も余裕もガリガリ削られていく。

でも、集中力は切れない。
楽しいから頑張る。頑張れる。
だから皆も、もっと上げて。
音量。テンション。


「せーいーしゅーんっ!ドまんなっかーーー!下手くそな、ラ・プ・ソディ!
君の声―で♪歌ってよー、let’s sing!」



(声がでけえよw)

サビに入って、より一層大きく伸びやかに響く紀伊梨の歌声。
こっちの音がかき消されそうだ。

負けてたまるか。1人にしてたまるか。
自分達は全員でビードロズなんだから。

もっと熱く。
もっと激しく。

棗はバスドラムを思い切り叩いた。

自分達の事で、頭をいっぱいにしてよ。
ここに居る2100人全員に向かって、3人はそう伝えたい。

もっともっと夢中になって。
皆で楽しい事をしよう。

自分達はいつだって。


「スタートを!まーってる、か、らーーーー!」


広い講堂の、一番後ろ。
そこに居た生徒の背中迄、紀伊梨の唄声は届いた。

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