Overnight party 2

「ふいー!気持ち良い〜・・・」
「ふふ。夏でも、あったかいお風呂って気持ちが良いですよね。」
「私夏になるとシャワーで終わりだし、湯舟久しぶりだわ。」

五十嵐家では、3人が早々に風呂に入っていた。
3人一度に入ってもさほど狭いと感じない程度には、五十嵐家の風呂は広い。

「・・・・・あの、」
「そうそう、あのさー。」

丁度千百合が話し始めようとした矢先、紀伊梨が洗髪しながら被せる様に話し出した。

「千百合っち、結局ゆっきーと仲直りしたの?」
「・・・・!」

千百合はちょっと目を見開いた。
今、正にそれを言おうと思っていた所だった。

「・・・しました、よね?そうじゃないですか・・・?」
「え、ちょっと待って。正解だけどなんで2人とも分かんの、エスパー?」
「えー、だってさー。なんか何となく、千百合っちこないだから普通だし!」
「表情がちょっと明るくなったというか・・・今だから言えますけれど、結構合宿の時辺りまでは、沈んでるように見えることが多かったので。」
「え、マジか。」

そんなに分かりやすかっただろうか。
いやでも、もっと軽い悩みならまだしも、あの時は本当に別れに発展するまであるかもと思っていたから取り繕えてなかったかもしれない。

「でもさでもさ、ぷう・・・・はあっ!ふう、シャワー気持ちいー!えーと、正解って事は、仲直りしたんだよね!ね!そーだよね!」
「うん・・・まあ、仲直りっていうか。元々喧嘩じゃなかったんだけど。」
「細かい事は良いのー!兎に角、もう終わったんでしょ?別れないよね?ね?」
「ああうん・・・うん、多分。」
「多分!?多分って何!?」
「いや、さっき一瞬マジで別れを切り出されたから、若干まだ念押ししないと不安で。」
「「えええええ!?」」

風呂は響くものなのであまり大声を出すのは良くないのだが、それでも思わず大声になってしまう。いや、これはなるだろう。流石に。

「いやあの、別れないっていう結論にはなったからさ。」
「一瞬でもそんな話になるのがもー変だよ!なんで!どーして!」
「いやほら・・・あの、今日さ。私、ボールぶつけられそうになったじゃん。」
「ああ・・・・」
「あれでその・・・付き合ってるからって今後もああなるくらいだったら、別れた方が良いんじゃないかって。」
「え、なんでよー!悪いのはあっちじゃんか、あっちー!」
「た、大したことは出来ませんけれど、今後も何かあれば出来る限り力になりますから、だから、」
「いやだから、大丈夫だって。別れないから。それでも別れないっていう方向で行こうってなったから、大丈夫だから。」
「「はあ・・・・」」

風呂だというのに変な汗をかいてしまった。ああやれやれ。

「もーびっくりしたもー・・・辞めようよー、そういう別れるとかさー・・・そもそも好き同士なのに別れるっていうのがおかしーよ、もー!」
「そりゃまあ、シンプルに考えればそうだけどさ。でも、」
「でも、があるのはわかるんです。分かるんですけれど・・・それでもやっぱり、頑張ってシンプルに考えて欲しいんです。私達、千百合ちゃんの事も幸村君の事も大好きですから。2人が2人で居て幸せで居てくれるのが、私達も一番嬉しいですよ。」
「・・・・・・うん。ありがと。」

そう言って、バスタブにもう少し深く浸かった所で、ふと千百合の胸に去来する感情。
紫希の言葉。

自分と幸村が2人で幸せで居てくれるのが嬉しい。

「・・・いい加減、認めるべきかなあ。」
「え?」
「いやでも、今はまだ癪に思ってても良い段階か。わかんないしね。」
「え?え?何の話ですか?」
「何々ー?話題変わったのー?」
「今してんのは、紫希に彼氏が出来たら私そこそこムカつきそうって話。」

自慢じゃないが、千百合はとても今の状態で紫希と丸井が2人で幸せならとかそういう事は言えそうにない。
実際付き合えば多少丸井の振舞も変わるのかもしれないが、あの男は変わらない可能性がある。それが嫌。

「え!?」
「えー?なんでムカつくの、ムカつかなくて良いじゃーん!」
「え、だってさあ。何か、一言物言いたくならない。お前妙な事したら張り飛ばすからな、みたいな。」
「そ、そんな事・・・そもそも私、お付き合い出来る人なんてどこにも、」
「居たとしてよ、居たとして。仮の話。」
「あ!じゃあじゃあ、千百合っちに張り飛ばす?されなさそーな人なら良いんですな!えーと、ゆっきーは駄目だからー・・・やなぎーとか!」
「ああ、柳ね。良いよね柳。」
「2人とも、ご迷惑ですよ・・・」
「別に迷惑でもないんじゃない、仮の話なんだし。で?」
「え?」
「柳どう?」
「どうと言われましても・・・」

分かる。
どうと言われてもね、な心理になるのは、千百合だって分かる。逆に千百合だって、例えば柳どう?と言われても、どうともとしか言えない。
柳自身がどうのこうのと言うより、これは自分側の心理の話。好きな人が居る時に、別の人出されてどう?と言われても左程何も思わないというか、思えないというか。

「え、やなぎー駄目?」
「だ、駄目じゃないですよ!駄目とかじゃなくて、柳君は凄い人ですけど、そういう存在じゃなくて友達というか・・・・」
「じゃあ桑原。」
「桑原君もですよ・・・というか、誰であっても、」

「ねー、じゃあブンブンはー?」

ぶっこんだ。
いやまあ、この調子で名前を上げていけば、必ずいつか出てくる名前だ。

紀伊梨と入れ替わりで今洗髪をし始めた紫希は、浴室用の椅子に座ったまま少し押し黙った。

「・・・・丸井君、は・・・」
「お?お?」
「ああいえ、あの、そうじゃなくてその・・・」
「・・・え、何。どうしたの。」
「え!?もしかして紫希ぴょんまでブンブンと喧嘩してんの!?」
「違います、そうじゃないんですけど・・・」
「けど?」
「・・・私、ちょっと、いい加減にしないとと思って・・・」
「え、何か紫希がいい加減にするような事あったっけ。」
「あまりにもこう・・・親切に甘えてるというか・・・」
「あ!待って待って!紀伊梨ちゃんね、それ聞いた事あんの!」
「この場合、聞いた事あるって何よ。」
「桑ちゃんが言ってたんだもーん。あのねー、ブンブンが紫希ぴょんに優しいのは趣味だって!」
「おい。」

それ凄く色々な取り方が出来るのだが、この場合どれが正解なんだろうか。
趣味はテニスです、みたいな意味での趣味なのか。タイプであるとか好みであるとか、そういう意味での趣味なのか。いや、下手したら両方。

「だから紫希ぴょんは別にごめんなさいとか思わなくて良いんじゃなーい?」
「ああまあ、そっか。どっちにしろ、そういう意味にはなるか。」
「いえその・・・その、趣味がどうとかっていうのは良く分からないんですけれど、でもやっぱり今のままじゃ・・・」
「でも別に向こうが気にしないでって、」
「でも、私が気になるんです。丸井君はいつも、大した事じゃないって言って親切にして下さいますけど・・・それが仮に本当だったとしても私は嫌なんです。私も、もっと自分で出来る様に・・・」
「・・・そんなに気になるの、そこが。」
「なんていうか・・・私、丸井君って凄いなと思うんです。尊敬するというか・・・いつも明るくて、堂々としてて、凄く立派だなって思いますから、だから・・・憧れているから、友達で居たいなら、私ももっと立派な人にならないとと、思って・・・」

(あー・・・ははあ、そっか。紫希はそういう感じなんだ、今。)

紫希は今。丸井に対して一番大きく抱いている感情が、憧れなのである。
自分の思い描く理想の姿を、丸井に見ている。
可憐が考える自分のなりたい人間像を網代としているように、紫希にとってそれは今丸井なのだ。

確かにわからんでもない。紫希の性格上。
でも。

「えー、でも紀伊梨ちゃんブンブンみたいな紫希ぴょんやだー!今の紫希ぴょんが良い!」
「いや、本当それよ。私も嫌だ、今の紫希が良い。」
「そうでしょうか・・・」
「いやさ、見習いたい部分が多いっていうのは分かるけどさ。丸井のコピーみたいになられても困るっていうか。」
「あー、それ困る!紫希ぴょんには紫希ぴょんしかない良い所があるから、それはなくなっちゃやだ!」
「そんな所、」
「「そんな所ある!」」

千百合ははあ、と内心で溜息を吐いた。
この親友のこういう所は、本当にいつまで付き合っても全然治らない。

「むーん・・・よしわかった!」
「何が。」
「きょーは折角皆居るし!誰も帰らないから!皆で紫希ぴょんの良い所を出す大会をやろう!」
「あー、ありかもそれは。」
「ええええ!?やめて下さいお願いですから!」
「でもしないと紫希ぴょんがブンブンみたくなっちゃうんでしょー?紀伊梨ちゃんやだ!いやでーす!」
「どっちか選びなよ。長所があるって認めるか、大会開くか。」
「ええええ・・・・」


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