Outing 1
幼馴染組で遊ぶ時、特に理由が無ければ待ち合わせ場所は、原則五十嵐家である。
理由なんて分かりきったものだが。
「さーん、にーい、いち。」
「ん。」
棗がカウントを取り、0になると同時に千百合がインターホンを押す。
パタパタと駆けてくる軽い足音は、残念ながら紀伊梨ではない。
「おはよー御座います。」
「はい、お早う御座います蓮君。」
顔を覗かせるのは紀伊梨の弟、五十嵐蓮である。
「おっす、おはー。」
「おはよう。紀伊梨起きてる?」
「今日は起きてるけどー。何か家の鍵がどっか行ったとかで、今すんごい探してる。」
さっきから奥の方でがっちゃがっちゃ聞こえてくるのはその所為か。
「ごめんなさい。紀伊梨姉ちゃんがいっつもいっつも。」
「もう慣れたよw」
「起きてるだけ御の字よ。」
「時間も、余裕を持ってみてます。蓮君が気にする事ではないですから。」
そうは言っても、こう毎度毎度迷惑をかけていると、如何に当人でなくても気になってしまうものだ。
なまじ幼馴染で、例え同級生じゃなくても、蓮は他の4人の事も良く知ってるから余計に。
「・・・・・・」
「どうかなさいましたか?」
「いや。幸村さんは、今日もテニスかなって。」
「良く知ってんねw」
「テニス部は、休み無いからね。」
「ふうん。忙しいんだ。」
紀伊梨からも聞いている。
最近は幸村に会う機会が目減りしていると。
だから今日のお出かけも来ないのかなと思ったが、やはり来なかったか。
姉は寂しいだろうなと思っていると、棗が蓮を見てにやりと笑った。
「まあ、ほらwテニスで忙しいって事は家を空ける機会が多いって事だから、お前は堂々と松ちゃんにお近づきになれば良いんでないのw」
「はあっ!?」
「棗君!」
感づかれているとは思っていたが、顔に血が上がるのは止められない。
蓮は、幸村の妹の松が好きである。
2人とも小学生だし、世間から見たらちっちゃいちっちゃい恋心だが、蓮は蓮なりに真剣だ。
「もう、茶化してはいけませんよ!」
「だあって、思わない?チャンスじゃん、松ちゃん幸村が居る時は彼奴にべったりなんだ、しい”ぃ”っっっ!?」
千百合の肘打ちが棗の脇腹にクリーンヒットした。
「ほんっと、ごめん。この馬鹿東京に置いて帰るし、心配しないで。」
「いや、うん・・・なんか、もう、うん。良いよ。今ので許すよ。」
「うおおおお・・・これ絶対痣になってるわ・・・!」
「言わなくて良い事を言うからですよ・・・」
腹を抱えて前屈みになる棗だが、背を摩る紫希もあまり同情は出来ない。
「ごめーーーーん!」
バタバタと足音がしたと思ったら、勢いよく蓮の後ろから飛び出てくる、待ち侘びた顔。
「遅い。」
「おはようございます、紀伊梨ちゃん。」
「おはよー!ごめんねー!・・・あれ?なっちん、どったの?」
「少し、ありまして・・・」
「良いよ。置いてこ、此奴。」
「なんでーーー!?」
何はともあれ、これで全員揃った。
「じゃーね、蓮!行ってきまーー!」
「行ってきます。」
「行ってくる。」
「行ってくるわー・・・」
「行ってらっしゃい。」
東京へ、いざ。
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