Local 2


「ねーねー!砂でお城が作れるんだって!やりたいー!」

最初に紀伊梨がそんな事を言い出した当時、自分達は小学2年生だった。

「お城、ですか?」
「出来るの?」
「出来るって書いてあるよ!」
「道具とか、要るんじゃないかな?」
「取り敢えず霧吹きねw」

とんとん拍子に皆やる気になり、方法を調べてスコップを持っていざ出発。

何時も浜遊びと言ったら山を作って、精々ビー玉を転がす程度だったが、この「お城」という目標は良い感じの難易度で、自分達は瞬く間に熱中した。

毎日誰かが新しい事を考えた。

「お城なら、旗をてっぺんに立てたいよね!」
「窓とかドアとか、作れないもんかしら。」
「貝殻で飾り付けするのはどうでしょう?」
「橋をかけられないかな。こう、入り口の所に。」
「良いねえw海水で川も作っちゃおうぜw」

そうやって、城造りがブームになった時は暇さえあれば集まって作りに行った。

そして城のアイデアと同時に、もう1つアイデアが出だした。

「この高い塔にはきっと、お姫様が住んで居るんですね。」

紫希がそんな事を言い出したのがきっかけだった。

「・・・じゃ、此処の塔は大きいから、王様とお妃様が居るって事にしとこ。」

千百合が乗っかった。
そして。

「あ!じゃあ私、此処の塔に住む!お庭が見えるもーん!」

紀伊梨が「もし自分なら」と言い出すのは一瞬だった。

「・・・紀伊梨が住むのかい?」
「うん!住みたい!皆も住もーよ!」
「おっけ。なら俺此処が良いなw」

それからはあっという間だった。
城造りにままごとが混じる事でコンセプトめいたものが生まれ、5人は何時も違う立場を楽しんだ。

「はいはい!私お姫様になりたい!そんでね、海の見える所に住む!紫希ぴょんは?」
「ええと、紀伊梨ちゃんがお姫様だからそれ以外・・・」
「えー!どーしてー!?紫希ぴょんもお姫様が良いなら、2人でお姫様になれば良いんだよ!」
「そ、そういうものですか?」
「ふふ。良いんじゃないかな?お姫様が1人じゃないと駄目だなんて決まりはないよ。」
「ええと、じゃあ私この辺に住みたいです。」
「えらい地味な所にw」
「図書室近そうではないですか?」
「そっちかw」
「俺は庭師さんになりたいな。庭に面してる所に部屋を貰うよ。」
「じゃあ俺、お抱えの魔法使いとかが良いw俺は地下室に住んでる事にしてー。」
「掘る?掘る?掘っちゃおー!」
「あ、あ、紀伊梨ちゃんスコップを使わないと、」
「崩れる崩れるw」

皆そんな風に話していたけれど、千百合は何時も最後まで何も言わなかった。

「黒崎は何になりたい?」
「私コックさん。」
「お姫様じゃないの?」
「自分がなるのは良いや。」

そう言う千百合の顔は、何時もほんのちょっとだけ無表情だった。

それからもこの遊びは続いたけれど、皆段々お気に入りの役柄という奴が固まってきた。

紀伊梨はお姫様など目立つ立場になりたがった。そして何時も1番高い、1番明るい所に住みたがった。

紫希は先生や詩人の役柄を気に入るようになった。本が近いし、皆の役に立ちたいと言って、一階に住みたがった。

棗は大臣や魔法使いなど、アドバイザーになるのが好きだった。地下や離れに居たいと言って、皆で棗の場所を作った。

幸村は庭師か芸術家だった。見晴らしが良い所が良いというから、海と庭に面している所は幸村の場所だった。窓はいつもとても大きかった。

千百合は騎士に落ち着く事が多かった。お城には大概文民しか居なくて、そんなんじゃ何かあった時どうするの、と言って、住居は何時も入り口の近くだった。

肌寒くなってブームが過ぎても、海に行こうとなったらお城は作った。
今日はどんなお城にしよう。
あんなお城、こんなお城。

今日は誰が何の役?
お姫様、王様、お妃様。
大臣、メイド、騎士、執事。

それから。

それから。


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