Reason 2

どうして丸井がこの成人男性2人・・・偶々テニスコートに居合わせた、塩飽謙続と小口翔也を相手に選んだのか。

それはザッと見た所、ダブルスで試合するとなった時に、一番自分達と良い勝負ができそうだったから。

塩飽も小口も、丸井よりは動きが悪い。
だが、紫希よりは格段に良い。

自分と紫希の力量を足して2で割って、丁度この2人位だろうというのが丸井の読みだった。
まあダブルスの場合シングルスと違ってコンビネーションが物を言うので、もしかしたら思ったようにはいかないかもしれないけれど。

でもそれにしたって、其処まで絶望的な差はつかないだろう。

と。

踏んでいたのだが。




「春日、スマッシュだ!」
「え!?ええと、ええと、ボールを見て、力いっぱい、」
「そうだ、振れ!!」

力いっぱい紫希が打ったスマッシュは、小口の目の前に綺麗に入った。

「おー!今の良かったよ紫希ちゃん。」
「本当ですか?」
「うんうん。因みに今みたいな時は、もっとボールの正面を意識すると、力が上手く入るからね。」
「はい!」
「良かったじゃねえええし!小口お前、真面目にやれよ!!」
「プッ・・・ははははは!」

丸井は思わず笑ってしまう。

さっきから此方、ずっとこの調子だ。
小口は紫希の打つ球を返さないし、アドバイスに余念が無い。
とうとう塩飽がサーブを打つのを放棄して、小口に詰め寄った。

「お前なんなのもー!?人が必死にやってんのにさ、敵に塩送るような真似ばっかしやがって!」
「えー、だってさあ。リア充くたばれとか念じながら初心者の女の子の足元にスマッシュ叩き込むような奴の味方とか、やる気無くなるくない?」

一体何をやる気満々になっているのかと思ったら、なんの事はない。塩飽は丸井と紫希が仲良さげにしているのが気に入らなくて仕方が無いのである。

「ね?それなら俺、ブン太君チームの味方するわー、ってなるじゃん。あっちの2人のが爽やかだし、可愛いしさ。」
「うるせえ!分かってるわ!分かってるけど悔しいんだよ!この上テニスでも負けて堪るか!」
「ほらもう、その発想がもうさもしいもん。かっこ悪ーい。モテなさそー。」
「お前敵か!敵なのか!」


「揉めてますけど、大丈夫なんでしょうか・・・」
「良いんじゃねえ?それより、さっきのスマッシュ。」
「あ、はい!ボールの正面を意識するようにします!」
「いや、そうじゃなくて。」
「へ?」
「スマッシュ良かった、って言いてえの。サマになってきたじゃん?」
「・・・!本当ですか?」
「おう。」

(やった・・・!)

「嬉しそうだな?」
「はい!嬉しいです!」
「そっか!おし、じゃあほら。」

す、と丸井が片手を上げる。

「イェーイ!」
「い、いぇーい?」

ぱち、とハイタッチ。

そしてそうやって紫希と丸井が和やかにすればするほど、頭に血が上る塩飽謙続26才独身。

「爆発しろ・・・!」
「それそれ、それよ俺がやる気無くす原因はw」
「お前だって彼女居ないだろ!」
「彼女は居ないけどお前みたいなみっともない大人になりたくなーい。」
「みっともなくて悪かったな!あーあー、良いよ良いよ!お前がやらなくても俺がやるわ!おい!ブン太君チーム!」

「ん?」
「あ、はい!」

急に水を向けられて2人が振り向くと、塩飽は負のオーラ満載の顔でラケットを2人に向けた。

「絶対こっから盛り返すからな!コテンパンにしてやるからな!覚悟しとけよ手加減しねえぞおらあ!」
「うわあ、引くわー・・・」
「うるせえ!」

「えええ・・・!」
「へえ、面白えじゃん?」
「面白いですか・・・?」

普通は恐れおののく場面では、と紫希は思うのだが、丸井は笑みを深めるばかりだ。

「あ、紫希ちゃん怖がらないで!俺此奴の味方しないから!」
「おいこらあ!」
「良いですよ、味方してくれて。」
「マジ?」
「それはそれでムカつく!なんだブン太君、余裕のよっちゃんですかこら!」
「まあ、そんな感じ?」

やっと体が暖まってきた。

「・・・・・・」
「大丈夫だって、勝つのは任せろって言ったろい?」
「でも実質2対1じゃないですか・・・」
「丁度良いな。」
「丁度良い!?」

「今度は俺のかっこいい所見せてやるよ。」

そう言ってウインクを飛ばす丸井は、何処までも何時もの丸井だった。

「ちゃんと見とけよ?」
「・・・はい。」


「・・・お前何やってんの?ボールガン見しちゃって。」
「いや、念じたらこのボールが爆弾にならないかなと思って。」
「ブン太くーん、俺やっぱり此奴の味方やる気なーい。」


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