Why is that 2
「おい、なんだよ侑士!」
「岳人、あれは神宮さんが可哀想やわ。」
「どこが!?」
「岳人の言うてる方法は、そら俺も出来たらええと思うけど、現実問題、はあそうですか言うて実行出来るもんとちゃうやろ?」
「俺だって分かってるよ!好きな奴が居たとして、だからっつってガンガンいけるかって言ったら、恥ずかしいし緊張するだろうし。まして彼奴大人しそうだしな。」
「ほんなら、」
「でも、どっちが悪いって話じゃねーんだから、解決するには神宮だって何かしねーといけねーだろ?木崎さえ黙っててくれればっていうのは、木崎が神宮に言ってるのとまるっきり一緒じゃねーかよ!」
断っておくが、向日は別にデリカシーが無い人間だとかそういうわけではない。
好きな人にアプローチするのは緊張する、勇気が要る、やれと言われたから出来る物ではない、それは分かる。
分かるけれど、これは出来ないあれも出来ないばかり言っていると、終いに身動きが取れなくなってしまって、今みたく気持ちの悪い人間関係をずっと続けて行かねばならなくなる。
木崎にも神宮が相談に行くのを許す事は出来ない、というのは止めて貰わなければならないし、神宮だって本人にアプローチ出来ない、は止めて貰わないと解決しないのだ。
これはコミュ力が高くてシンプルな思考の向日だから出せる結論なのであり、それは概ね正しいと忍足も思っている。
ただ。
ただ、向日には分からない事も、其処にはある。
「・・・岳人、あんな。前提が間違ってんねん。」
「は?」
「神宮さんは多分、アタックなんかする気あらへんで。」
「そうでしょ?」
網代は忍足と全く同じ推測をしていた。
「・・・どうして分かったんですか?」
「うん?それはまあ、ほら。年の功という事で、流して頂戴?」
そう言って微笑む網代の瞳に、神宮は網代が自分の事を分かってくれている事を感じた。
「・・・駄目なんでしょうか。」
「うん?」
「好きな人が居て、でも勇気が出なくて。だから相談だけしていたい、そうする事で近づいているんだと思っていたい、もしかしたら向こうが私に気づいてくれるかもとただただ祈って、願っていたい・・・それは、駄目な事でしょうか?」
神宮には好きな人が居る。その片思いの気持ちは本当だ。
でも同じだけ、表だってアプローチなんかしたくないと思う気持ちも本当だった。
恥かしい。怖い。緊張する。ドキドキする。
失敗したらどうしよう。嫌われてしまったらどうしよう。相手に自分の気持ちがバレたらどうしよう。
だから本人に自分からアクションしたくない。
こうして相談していれば、何もしていないじゃないかと言う焦りから逃れられると同時に、もしかしたら相談に乗ってくれている子を介して、向こうから自分に興味を持ってくれるかも。そうしてもし、もしも自分の事を好きになってさえくれたら・・・
神宮がそう言いたがっているのが、網代には手に取るようにわかる。
「・・・そうね、駄目とは言わないわよ。」
「本当ですか?」
「そう思うのは・・・まあ、逆に思わない人も居るでしょうけど、自然に生まれる気持ちの問題だもの。何も悪い事じゃないわ。ただ・・・」
「・・・ただ?」
「・・・思う所までは自由だけれど、実践となると話は違ってくるでしょうね。」
はっきり言おう。
神宮は要するに、楽がしたいのだ。
アタックして傷つくのは嫌。
見ているだけで我慢するのも嫌。
その好きな子との未来を諦めるのも嫌。
その3つの我儘を通そうとした結果が神宮の現在の振る舞いなのであり、又、あくまで上記の欲求を満足させたいなら確かに良い手だと網代は思う。
「・・・それは、思うだけにしておけって事ですか?自分でアタックしろって言う・・・」
「・・・いいえ?」
「えっ?」
「あらやだ、そんな風に見える?私、そんな事言う程殊勝な人間じゃないわよ?誰だって楽がしたいと思うものだと思うし、それが悪いと思った事も無いわ。」
網代は悪戯っぽく舌を出して笑ってみせた。
そう。
誰だって楽がしたい。
何事も我武者羅に努力だけするのが正しいなんて思えない。
しかし逆に全てにおいて楽しようとするのも問題で、要はバランスの問題なのだというのが、網代の持論。
「・・・つまり?」
「つ・ま・り♪もっと余裕を持ちなさい、って事よ。」
「余裕?」
「そうよ。本人にアピールしないなら、どうしたって回りくどい方法しか取れなくなるんだもの。そしてそれは難しいんだ、って事をちゃんと頭に入れておいて、上手くやらなくちゃ、ね。」
「・・・上手く、ですか。」
「そう、上手く。今木崎さんとこんな風になってしまってるのは、「上手く」やれなかったからよ。」
「・・・・・」
「詩織ちゃんは自分のやりたい事を、やりたい方法で出来ていると思うわ。でも、その上で上手くやるには自分の事だけ考えてるんじゃあ駄目なのよ。」
「木崎さんの事ですか?」
「うーん、この場合はそうだけど、もっとマクロな話ね。詩織ちゃん、その好きな子の友達に相談、っていうプランを思いついた時、他にどう思った?」
「どうって・・・」
「その相談する子の周りの恋愛事情は?木崎さんみたいにその子に片思いしてる子、逆にその相談に乗ってくれてる子にも好きな女の子が居るかもしれない。もっと言うと、詩織ちゃんが頻繁に相談に行く事で、本命の子にも誤解されるかもしれないわよ?」
「!?」
神宮はハッと息を呑んだ。
「考えてなかった、って顔ね?」
「だって、そんなの・・・そんなややこしい事に、普通なります?」
「そりゃあなるわよ、わざとややこしい事をしてるんだもの。」
「・・・・・」
「この場合ややこしくない事、っていうのは普通に本命にアプローチする事よ。でもそれは嫌なんでしょう?」
「はい・・・」
「だったら、ややこしい事になる事も視野に入れておかないと。周りの人だけじゃないのよ、自分の為に、ね?」
「自分の、為に・・・」
そう。
全ては自分の為に。
皆、自分の為に。
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