Solicitation:Break time 1


「お帰りやなぎー!真田っちー!」
「お帰りなさいませ。」
「ああ。浴槽はなかったが、良い湯だった。」
「ねー!さっぱりするよねー!」
「ああ。ん?仁王に黒崎、お前達ももう行くのか?」

ずっと正座していたから、いきなり立って歩くのは、正座に慣れない人間にしてみたら辛かろう。
だからもっとぼちぼちゆっくり行けば良いのに、と柳は思ったのだが。

「俺達ものんびり行きたいのは山々なんじゃが、ちいと追い出されてのう。」
「追い出され・・・ああ、成程。」

幸せそうに千百合の髪を拭く幸村と、椅子に座ってされるがままになっている千百合。
その光景だけで、何をかいわんや。
柳生や桑原まで大移動して皆こっちに居るのは、つまりそういう事だ。

「・・・・・・・・・・」
「ねー!」
「・・・む?何か言ったか?」
「真田っちってさー、どーしてゆっきーと千百合っちが仲良くしてるとびみょーな顔するのー?」

喜色でない事は確かだが、かといって嫌そうな顔というわけでもない。
正に微妙な顔を、真田はいつもしている気がする。

「まあ、友達の知らない一面ってそういうもんだぜ?」
「えー?そお?そおかなー?」
「ピンときませんか?なら例えば・・・そうですね、少し想像してみて下さい。」
「おう?」

「もしも真田君が、あちらの幸村君の様な笑顔で女性とやりとりされていたら、五十嵐さんはどう思われますか?」

もしも。
もしも真田があんな風に、誰か女子を甘やかしていたら。

「・・・本物?だよね?」
「わかりましたか?つまりそういうものです。五十嵐さんにとってああいった幸村君は普段の幸村君かもしれませんが、真田君にとっては普段の幸村君とはかけ離れた幸村君なんですよ。」

なるほど。
そう言われると、納得という気もするが。

「そっかー!じゃあこれから先の事も考えて、慣れてって貰わないとですなー!」
「慣れろというのか・・・俺に。あれを。」
「うん。」
「辛そうだな真田w」
「真田も幸村との付き合いは長いから、その分だけ余計に慣れないのだろう。」

気の毒と言えば気の毒だが仕方がない。
今向こうで千百合を甘やかす幸村は、間違いなく本物の幸村なのだから。

「はっ!そーだ、忘れてた!やなぎー、髪の毛拭かせてー!」
「俺の髪を?」
「五十嵐さんなりの気遣いですよ。黒崎さんが、ご自分の状況をあまり気になさらないようにと。」

まあ幾らかは柳にじゃれつきたい気持ちもあるのだろうが、基本的には千百合の為だ。
千百合だって恥ずかしいだけで、本当は幸村に甘えたいと思っているのだから。

「とゆーわけでですね、やなぎーの髪は私が・・・はっ!?こ、この触った感じは・・・!」
「すまないが、もう自分で済ませてしまったんだ。」
「えー!!そんな、紀伊梨ちゃんのお楽しみがー!」
「俺はお前のお楽しみになった覚えはないが。」
「むぐぐぐ・・・じゃあ真田っち!」
「断る。俺ももう済ませた。」
「そんなー!」
「お前さんらはこんな時までやる事がテキパキしとるのう。」
「まあ、習慣だ。だらだら物事を行うのは、性に合わない。俺も真田もな。」

そのセリフに、爪の垢って、ガチで煎じたら効能発揮しないかな。
と、皆紀伊梨を見ながら思った。

「むぐぐぐぐう・・・じゃあ桑ちゃんだ!桑ちゃん、頭拭かせて・・・桑ちゃん?」
「・・・・・・・」
「桑ちゃん!」
「ひいいっ!」

徐に紀伊梨に脇腹を突かれて、桑原は飛び上がった。

「何だよ、驚かせるな・・・!」
「やー、頭拭かせてくれないかと思ったんだけどー。」
「どうかしたか?ぼーっとしとったぜよ。」
「・・・・いや。なんでもない。」

本当だ。
全くなんでも無いわけじゃないけど、何かあるという程大きい事でもない。
だから別に良い。

「悩み事か?話聞くよw」
「うんうん!私達友達だもんね!」
「ははは。大丈夫だよ、別に悩んでないし。」
「そーお?」
「ああ。」

もし本当に悩んでたとしても、その時は相談に乗って貰う。
こう見えて頼りにしているのだ。

「桑原、悪い事は言わん。此奴らに相談するのは止めておけ。」
「ああ。余計に話がこじれる確率78%だ。」
「酷いー!」
「もしかして、「此奴ら」の中に俺は入っとるんか?」
「おや、入っていないと御思いでしたか?」
「心外じゃき。」
「柳生も大概キツイよねw」


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