Solicitation:4th game 7
(此処だ!34番!)
桑原は焦りの中、とうとう34番に辿りついた。
「良し、後はあれに当てれば・・・」
「させるかあああああ!」
大声にビクりとして其方を見ると、真田が妨害目的でこっちに向かっている所だった。
怖い。
まだ結構距離もあるし、何をされてるわけでも無いのに。
「させるかー!させるかっていうのをさせるかー!」
「むうっ!退け、五十嵐!」
「真田、構わんき!打て!」
「・・・はああっ!」
真田の妨害の、その又妨害をしようと視界をちょろちょろ動き回る紀伊梨。
だが、不利な状況でも打たなければ希望の目は無い。
「五十嵐さん!返球です!」
「おしゃー!頑張るおー!」
(いける!真田の打球は通る筈じゃ!)
如何に運動神経抜群の紀伊梨とセンスのある柳生と言えど、さっき柳がやったように、ボールに向かってボールをぶつけて軌道を変える・・・などと、其処までの事は流石に出来ない。
でも、真田になら出来る。
此処にはもう、柿も無い。
「うおおおおっ!」
真田の放った打球は、真っ直ぐ桑原のボールに・・・
行かなかった。
「ぐっ!何だ!?」
「当たったー!やーぎゅ、すごーい!」
「いえ。この位なら、五十嵐さんでも恐らくできますよ。」
「本当ー!?よしゃ、次やってみよー!」
「真田、どうしたんじゃ!?」
「ラケットだ!ショットの瞬間、ラケットにボールをぶつけられた!く・・・敵ながら天晴だ。」
ボールに向かってボールをぶつけるというのは、言うなれば点に向かって点をぶつける事。
それは確かに極めて難しいが、ラケットなら話は別。
的は面になるのだから、柳生や五十嵐なら、この良いとは言えないフィールドでもなんとか出来るだろう。
急いでもう1球打とうにも、桑原の方が早いのは確定的に明らか。
「良し!今度こそ・・・」
トスをビュッ!と上げて、34番だな、間違いないな、と目で最終チェック。
周りにも誰も居ない。良し。
(行けーーー)
バシッ!
鋭い音と共に、桑原は目の前で自分の打ったボールが吹っ飛んで行くのを見た。
「ーーーえ?」
宙を舞う2つのボール。
いや。
なんでだよ、嘘だろ。
今、自分に妨害できるような人は周りに誰も・・・
「・・・おい、まさか!」
「嘘でしょ。」
千百合は思わず声に出して言った。
幸村の作戦は、至ってシンプル。
柳の妨害を、千百合が1球目だけで良いから凌ぐ。
その間に、幸村は此処から・・・妨害から保護すらも出来ないような遠距離から、桑原のボールを狙うのだ。
このジャングルめいた温室の中、ボールの位置を正確に予測し、50mは離れている桑原のショットにボールをぶつける。
完全に机上の空論である。
理屈の上では可能かもしれないが、実際技術的に誰がそんな事を出来るのだ、誰が。そう言って切り捨てられる筈の選択肢だ。
幸村に以外にとっては、だが。
「有難う、千百合。助かったよ。」
「いや、私何もしてないけど。」
「そんな事は無いよ。柳の打球をちゃんと返してくれたじゃないか。」
「それを差し引いて、何もしてないって言ってるんだって。」
柳の打球を、やっとの思いで1球返したからなんだというのだろう。
幸村のやってのけた事に比べれば。
「・・・まさか本当にやるとはな。」
柳は、幸村の意図を察していた。
確かに、察してはいた。
だが、そうするつもりなんだろうな、と相手の思考を予測する事と、出来るだろうと踏む事は違う。
幸村の狙いは分かったが、考え付いた所で普通やるか?出来るか?
その点を鑑みて柳は「流石に出来ない」と推測してしまったのだ。
だからこそ、余裕の態度を崩さず、ただじっとその時を待ち続ける幸村を前に、焦りが募っていったのだ。
まさか本当にやるのか、そんな事が可能なのかと思って。
「ふふっ。やっぱり、柳は俺の考えそのものは見抜いていたんだね?」
「ああ。考えだけならな。」
「でも少し傷つくな。ギリギリまで動かなかったって事は、結果としては俺が失敗すると思っていたんだろう?」
(柳じゃなくても多分皆そう思うわよ)
なんだか柳の見通しが甘いみたいに言ってるが、よくよく考えた所で多分無理だろうという結論が大概の人は出るだろう。
「正直そう思っていた。いや・・・考えていた。やはり幸村、お前のデータはこれだけ取ってもまだ足りないようだ。」
「ふふふっ。なら俺は、その情報取集の早さを上回るスピードで上達しないと、柳に追い抜かれてしまうな。」
(もうそれ以上上達しなくても良いような気がするけど)
「うん?千百合、何か言ったかい?悪いけど、良く聞こえなかったから・・・」
「いや、何も言ってない。」
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