Wall 1
「それでね!それでね!その時居たのがゆっきーでね!」
「へー!」
「そうなんだー。」
休み時間。
紀伊梨の周りには何時も誰かが居て、何くれとなく話しかけている。
今日も彼女は賑やかに、クラスメイトと昼食の真っ最中だった。
途中迄は。
〜〜〜♪〜〜〜♪
「およ?」
「放送だー!」
『生徒の呼び出しをします。1年B組、五十嵐紀伊梨さん、生徒会室迄お越し下さい。』
「ブホッ!?ゲホ、ゲホ!ええええ!?」
「紀伊梨呼ばれてるよ!?」
「今度は何したの紀伊梨・・・」
「何もしてないよ!」
「「嘘吐け。」」
「本当だもん!」
身に覚えはと言われると、多分本人以外は呼ばれる理由が思い当たり過ぎて困るくらいだ。
主に授業態度とか成績的な意味で。
「取り敢えず行っといでよ。」
「うん!弁当よろしくね!」
「食べとけって意味?」
「ちーがーうー!置いといたらブンブンに食べられちゃうもん!」
結構切実な紀伊梨の叫びに苦笑する友人に見送られ、紀伊梨は教室を飛び出した。
「ええー?でも何やったんだろー?何もしてないのになー!」
確かに睨まれる理由はあるが、紀伊梨的には服装とか成績とか居眠りとか、そんなの今に始まった事ではない。
だから「なんで今更?」という思いでいっぱいなのだが、いい加減向こうがしびれを切らしたという可能性が頭に上らないのがオツムが弱いと思われる所以である。
「あ!というか、私・・・!?」
角を曲がった所だった。
ドン!と音を立てて誰かに思い切りぶつかった。
「あてて・・・ごめんなはい!何方か知りませんが、ご容赦を〜・・・」
「廊下は走るな、五十嵐。」
「へ?あ!やなぎーだ!」
ぶつかったのは柳だった。
流石にテニス部というか体の軸にブレがなく、尻餅をついた紀伊梨に対して柳は多少よろけただけである。
「立てるか?」
「うん!ごめんねやなぎー!」
「全くだ。ぶつかったのが俺だから良かったようなものの、女子相手だったりしたら怪我をしたかもしれない。」
「あう・・・ごめんね、急いでて!」
「それも知っている。呼び出しが聞こえたからな。」
それについては柳も何も言わない。
柳も紀伊梨に呼び出し理由がしこたまあると思っている人間の筆頭株だからだ。
「あ!そうだやなぎー、ちょっと助けて!」
「お前に非がある事は助けられない。」
「まだ非があるって決まってるわけじゃないよね!?って、そうじゃなくてー!私、生徒会室の場所知らないのっ!」
「ああ、そういう事か。それなら、此処を下りて。」
「うんうん!」
「そして次に、2階に・・・・・・」
「・・・やなぎー?」
今柳の脳裏によぎっているのは、「此奴説明覚えていられるかな」という事であった。
此処から生徒会室は結構遠い。
そもそも棟が違うし、距離もあるし。
「・・・・仕方がない。」
「うん?」
「来い。部屋の前まではついて行ってやろう。」
「マ「マジか、とお前は言う。」エスパーだー!でもありがとう!」
そう言って心底嬉しそうにニコッと笑うから、皆紀伊梨の面倒を見てしまう。
そして自分もご多分に漏れていない事に、柳は嘆息するのだった。
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