Solicitation:4th game 11
あ、やばい。
あかん。
仁王は内心そう思いはしたが、もうどうしようもない。
「何これ。」
「プリッ。」
「誤魔化してんじゃねえよ。」
千百合と丸井は、思っていたより早く現場に着いた。
角を2、3回曲がった先に、立っている仁王と。
後、へたり込んで顔を覆って泣いている紫希。
「おい、大丈夫かよ!?」
「紫希、どうしたの。」
「ああ、丸井君・・・千百合ちゃん・・・・!?」
両手を外して照らされた頬にはがっちり涙の跡がある。
潤んだ瞳が2人を見上げるが、千百合を見るや、紫希はハッと千百合に抱き着いた。
「千百合ちゃん!駄目です、仁王君に近づいちゃ駄目です、絶対駄目ですよ!」
「え、何?何が何?」
「おい、お前何したんだよ。」
「何っちゅう程の事でもないぜよ。」
「泣いてんだろい!」
「これで泣くとは思わんかったき。」
そう言って仁王はポケットからふいっと。
2匹の。
ムカデを。
「・・・・!」
「おもちゃじゃ。」
「いや動いてるじゃねえかよ!・・・いや、え?」
「ようく見んしゃい。ほれ、此処の所じゃ。」
言われた通り良く見ると、確かに。
かなり見づらいが、背中の部分に何か、ワイヤーの様なテグスのような物が。
「これで、此処を持ってこういう動きをするんじゃ。見てみんしゃい、まるで本物じゃろう?」
「おう。マジでキモいな。マジで。」
おもちゃとは思えない、本物そっくりすぎる動き。
又この、足の素材が憎らしい。なにこのぞろぞろした動き。本当に本物さながら。
「ちょっと、きゃあっと言ってくれるだけで良かったんじゃがのう。叫んではくれたが、泣くとは思わんかったダニ、ちょいと弱ったぜよ。」
「いや、泣いてもおかしくないだろい。」
不意と手の上にムカデ落とされて、しかもそれを本物と思い込んでいたのだったら、泣くほどの事ではないとはちょっと言えまい。まして女子なのに。
「千百合ちゃん、いけませんよあっちを見ては・・・」
「大丈夫、察した。」
何も見てないけど、動いてるとかキモいとか見てはいけないとか。
まあ想像はつく。
「うう・・・ごめんなさい仁王君、取り乱してしまいまして・・・」
「いや、お前が謝る場面じゃないだろい。」
「っていうか、お前が謝れよ。」
「すまん。」
「いえ、良いんです。作戦ですから・・・」
「作戦?」
「こうしたら、誰かは来てくれるんじゃないかと思ってのう。ライトが無い状態じゃ、動けんダニ。」
「・・・つまり、」
「事の次第は知らんが、兎も角お前さんが来てくれて助かった。礼を言うぜよ、丸井。」
やられたわけだ。
まんまと手口に嵌ってしまった。
「ちょっと、約束よ。どっか行かないで。」
「分かってるよ、行かねえって。」
「約束・・・?ですか?」
「そ、約束してきたの。真田と柳生と4人で行動してて、ボールが見つかったんだけど、紫希が叫んだから。」
「んで、ボールをこっちに譲る代わりに、ライト係1人くれって事で。」
「ほう。合流してから逃げない所まで確約させてきたか、お前さんなかなか隙が無いのう。」
「今日一日で嫌って程学んだわ。」
棗にも散々言われていた事だが、殊仁王と柳生を相手にして、「約束」「取り決め」「ルール」「交渉」、これらの細部をなあなあにする事がどれ程危険か。ああ疲れる、頭使う。
「ま、それならこっちとしては、結果的に万事解決じゃな。」
「万事?」
「ほれ。」
そう言って、仁王が手に取ったのは、ボール。
あの、さっき柳生に千百合が譲ったボールだ。
「マジ?お前らも見つけてたのかよ。」
「というか、見付けたからライトが欲しかったんじゃ。」
「やり方考えろや。」
仁王の事だから、考えた末にこれが一番という結論が出たのだろうとも思うが。
ただ、それを差し引いてもこれはどうか。
「あんたが叫べば良かったじゃん。」
「俺が叫んで誰が助けに来ててくれるんじゃ。」
「そりゃ男子よりは女子のが誰か来てくれるかもだけどさ。」
「女子のがっちゅうのもあるが、春日が叫ぶと丸井が来るじゃろ。」
「え、俺?」
急に名前を出されて、丸井は目を真ん丸にする。
「現に来たじゃろ。」
「まあ来たけどよ。」
「いや、今回のは完全に成り行きよ。一緒に居たのが桑原とかだったら、桑原が来たわよ。」
「・・・それはそれで何か引っかかんな。」
「あのね。あんたね。いい加減にしなさいよ。」
他意は無い他意は無いとお守り役の桑原は言ってるし、本人も無意識的な所があるのは分かるが、それを差し引いても物には限度ってものがあるんですよ、と千百合は声を大にして言いたい。
もういっそ他意有ると言ってくれた方が話が早いレベル。
「・・・あ、あの、何にせよ、お2人とも作戦とは言えありが・・・ええと違う、すみませんでした。呼び寄せてしまって。」
「おう。有難うで良いよ。」
「だからなんでそれをあんたが言うんだって言ってんの!敵でしょ、呼んじゃってごめんねが当然でしょ!」
「お前、何怒ってんだよいきなり?」
「〜〜〜〜〜!」
千百合はせっかちではないけれど、基本的に話の遅いのは嫌いである。
ああ、イライラする。このイライラは新種のイライラだ。
「まあ、落ち着きんしゃい。こういう事は面白がってるくらいで丁度ええんじゃ。」
「紫希が絡んでないなら面白がるわよ。」
「???変な奴。」
「分からないですけど・・・千百合ちゃんは意味も無く怒ったりしませんから、何か虫の居所が悪くなってしまったんですよ。後で聞いておきます。」
「そお?」
などと、暫し談笑する4人の耳を突き抜ける声。
「ゴールはこっちだぞおおおおおお!」
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