Solicitation:Epilogue 2
「じゃ、行ってくるな。」
「ブン太、本当に行くの?」
「おう。」
丸井家では、今正に丸井が家を出ようかという所であった。
今からちょっとジョギングだ。スタミナ大事。
「でも今日、一日遊んでたんでしょう?辛くないの?」
「平気平気!部活よりは動かねえし、バ・・・」
「?」
「・・・・・」
「ブン太?」
「あ、いや!兎に角、別に大丈夫だし、そんなに長くは走らねえからさ。」
「そう?でも気を付けなさいよ。」
「おう!」
「後、帰って来てから食べていいのは戸棚のお菓子だけよ。冷蔵庫のゼリーは、お弁当用だからね。」
「はいはい。行ってきます。」
そう言って、身一つでタオルだけ首から下げて走り出す丸井。
今年は暑い暑いと言われているが、まだ6月頭。
夜になれば気温は落ち着くし、風が吹けば半袖で十分涼しい。
「・・・・・」
さっき。
バスで。
寝たから。
だから大丈夫だよ、と言おうとして。
紫希の事を思い出した。
(もう寝てんのかな、彼奴?まあ寝てるか。疲れてるだろうし。)
そう、紫希は疲れていた。
だから丸井も、寝るかなとは思っていた。寄りかかってくるのも想定の範囲内だったし。
そりゃあ多少は重みを感じたけれど、それが逆になんだか心地良かった。
体温は温かかったし、規則的な呼吸を聞いていたらこっちもなんだか眠くなってきて、桑原と会話中に自分もあっさり寝た。
予定外だったのは、起こされた時。
桑原に起きろと言われて、ああ、自分は寝てたかなんて思って。
早く退いてやれと言われて、退くってどこからだよなんて聞き返そうとしたら、耳元で囁き声。
『あの、すみません・・・』
いや、自分が悪いんだ、これに関しては。
寝た時に、紫希側に凭れてしまったから。
だからドキッとするくらい近くから声が聞こえて、ついと隣を見たら、凄く赤い顔の紫希がこっちを見上げていてーーー
「あのう、ごめんね。」
「!?」
一気に現実に引き戻されたような感覚。
ふと気づくと、目の前にはリュックを背負ったおじさんが立っていた。
「ごめんね、兄ちゃん。あのう、此処のな?イルピネットホテル、っちゅうとこへ行きたいんやけど。」
「あ、ああ!ええと、そっちを曲がって、2つ目の信号を左折して・・・」
(・・・あ、ビビった。何考えてんだろうな、俺。)
何か今、凄くボーっとしてた。
目の前に人が来た事どころか、走ってるんだからそれなりには苦しい筈なのに、その苦しいのさえ意識の彼方だった。
有難う兄ちゃん、どういたしまして、のやり取りをして手を振りながら、丸井は思う。
やっぱり今日は疲れてるのかな。
もう少し集中して走ったらサッと家へ帰ろう。
再び走り出す背中に、もう少しその辺突き詰めて考えたら、と言ってくれる親友は今ここには居ない。
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