Wall 2
「ねーねー、やなぎー。」
「なんだ?」
「どうして来週明けなの?今日か明日にでも・・・」
「それで今日、明日中に話が纏まらなければ、遅れの連絡をしなければいけない。その方が向こうとしては気分が悪いだろう。〆切を言い出しておいて、自分で守れないという事だからな。」
それなら最初から最終〆切を聞いておいた方が話が早いし、予想外に早く出来たら修正も言い出しやすい。
この辺の頭がサッと働かないのが紀伊梨の短所ではある。
「ふーん?」
「分かっているのか?」
「あは!あんまり?」
「だろうとは思った。」
「・・・もいっこ聞いて良い?」
「ああ。」
紀伊梨は隣から正面に回って、下から柳の顔を覗き込んだ。
「やなぎー、私達のバンド気に入ってくれてるの?」
先日、音楽室で歌った時、誰より柳の反応が1番薄かった。
実際柳は十分感動していたが、表に出さないとそうとわからない紀伊梨は、柳はあまりお気に召さなかったのだと思っていた。
「・・・お前が考えているよりは遥かに、俺はビードロズの事を買っている。」
「買う?」
「期待している、という意味だ。先日音楽室で聞かせて貰った時も、俺は良いと思った。」
「本当!?」
「五十嵐。」
柳は足を止めた。
「俺は今しがた、柳生に言った。ビードロズは必ず生徒の楽しみになると。その言葉に嘘は無い。」
あれは思ったから言ったのだ。
柳生へのアピールなんかではない。
ライブして欲しい。
ビードロズを聞くとそう思うようになる事を、柳は知っているから。
「やなぎー・・・」
「その為に、さしあたっては放課後だな。他の3人に詳しく説明して、先程柳生から聞いた情報を元に現実的に可能な演出プランを・・・」
「え"!私そんな風な説明出来ない!」
「・・・・・・」
「やぎゅーに言われた事って何があったっけ?あう〜、なんかアレも駄目コレも駄目って言われた事しか覚えて無いよう!」
「・・・仕方がない。部活が終わるまで待っていろ、俺から説明する。」
「本当!?やったー!ありがとー、やなぎー!」
「礼は良いが、それよりも他の3人を必ず呼んでおいてくれ。時間が惜しい。今日を逃したら伸びていってしまう。」
「うん!今メールしちゃう!」
「歩きながらの携帯操作は止めろ。」
「う・・・はーい!」
慌ただしい友人を持ったものだ。
柳はひっそり溜息を吐きつつ、それでもどこか楽しいとも思うのだった。
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