Pre-tremolos 2
さて。
千百合も紫希も居なくなり、紀伊梨は何をしているのかというと。
「・・・あり?此処どこだっけ?」
迷子になっていた。
「うーん?あれー?おっかしーなー、この地図が書いてある看板を右に行ったら良かったと思うんだけどなー!」
紀伊梨はただ、トーナメント表を見に行きたかっただけなのだ。
ただ、偶々近くに無かったから探してうろうろしてしまい、やっと見つけてさて戻ろうかと思った時には、思いの外遠くに行ってしまっていた。
「いや、でもでも!きょーの紀伊梨ちゃんは、けーたいがあるかんねっ!これがあれば戻れーーー」
「ねえ!本当に来ないつもりなの!?」
(うお?)
突然の大声に振り向くと、其処には知らない女の子。自転車に跨ったまま止まって、携帯で何事か話している。
『だから、興味ねえって言ってんじゃん!』
「なんでよ!テニス部志望のくせに!私なんて今駐輪場も見つからないで困ってるのに・・・あああ、もう!分かったよ、もう良い!私一人で見る!」
ブチッと音が鳴りそうな勢いで通話を切った少女は、はあ、と溜息を吐いた。
そのまま、スマホの画面を憂鬱そうに見つめる彼女に、紀伊梨はそっと近づく。
「自転車止めるとこ見つかんにゃいの?」
「わっ!」
驚いた彼女は、うっかり携帯を取り落としそうになった。
危ない、この前買い替えたばかりなのに。
「あっちにあったお!紀伊梨ちゃん連れてってあげる!」
「あ・・・本当!?有難う!」
「良いよー!こっちこっちー!」
(良かった、親切な人が居て・・・)
ふう、と彼女は安堵の息を吐いたのだった。
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