For dive 3



「はっ!ふっ!はっ!ふっ!はっ!ふっ!」

紀伊梨は走っていた。
それはもう一生懸命走っていた。

確かに人間の足はバスより格段に遅いが、代わりに歩道橋を使えば信号をオールスルー出来る。
おかげで紀伊梨はなかなか凄い距離を粘ってついて行っていた。
ついて行っていたというか、ついて行けてしまっていたというのが正しいかもしれないが。

でも、それでもその内限界はきた。
さっきまで赤だった信号が青になり、エンジン音と共に遠くなっていくバスを紀伊梨は丁度歩道橋を下りた所で見送る事になってしまった。

「は〜ああ〜〜!ちかれたー!行っちゃったよー!」

本気で追いつく気だったのかよと突っ込まれそうだが、紀伊梨はいつでも本気である。

「どーしよー・・・って、あり?そーいえば此処は何処?紫希ぴょん?千百合っち?」



「五十嵐。」


「うにゅ?あ!べ様!べ様だー!」
「紀伊梨ちゃん!」
「紫希ぴょん!千百合っちー!」

顔を上げると、目の前に停車した車。
ガラスを下げた向こうには、跡部と紫希と千百合が座っている。

「話は後だ、乗れ。」
「やたーーー!リムジンだリムジンだー!あ、涼しー!ふー!生き返るー!」
「本当にリムジンに乗る羽目になるとはね。」
「まあまあ。有難い事です、見付けて頂いてラッキーでしたよ。なかなか出来ない体験ですし。」
「まあこの状況ならね・・・というか、この馬鹿!」
「あだー!」
「あんた、荷物ほっぽり出して1人で走って行ってどうするつもりよ!ちょっとは考えろ!」
「忘れてたのー!」
「忘れてたで済むか!」
「おい、バスを見たのはここなんだな?」
「あ、はい!時間はええと、今から20分位前だったと・・・」

リムジンは今度こそ全員を乗せて発車する。
目指すは芥川の乗ったバスだ。


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