For dive 3
「「zzzzz・・・・」」
リムジンには今、2つの寝息がとても安らかに重なっていた。
「気持ちよさそうですね・・・」
「遠慮がないわね、2人して。」
「まあジローは良くあることだ。今更起こす気もねえ。」
高価そうなふかふかのマットに実に堂々と横になっているのは紀伊梨と芥川。
丁度良い温度、心地良い疲労感、柔らかくて大きな椅子と来たらもう寝ちゃうのはしょうがない。せめて涎は防ごうとして、紫希はさっきからハンカチでちょいちょいと2人の口元の面倒を見ている。
「でも、良かったですね見つかって。」
「マジで事故とかに遭ってたら洒落になんなかったしね。」
「ああ。別にオフの日にどこで何してようが勝手だと思ってたが、流石に何か考えねえとな。」
どこで何してようが勝手なのは本当だが、そうやって都度都度行方不明になられては堪らない。
かといってこの場合外出するなと言うのは愚策だろう。
自分のテニスにとって+になるものを見つけようとしている部員の邪魔をするなんて、そんな事出来ない。
「しかし此奴、本当に意外とテニスはやる気ある奴なんだ。」
「あーん?やる気のねえ奴だと思ってたのか?」
「可憐ちゃんから、実力はあると聞いてました。新人戦も出場間違いなしだって・・・」
「でも普段これでしょ?正直信じられないわよ。」
「まあ怠けてるように見えちまうのは否定出来ねえが。」
「っていうか、やってる事は「怠けてる奴」そのものじゃない?」
「千百合ちゃん・・・」
「いや、それは正論だ。正直、うちのテニス部以外でこんな態度だったら放り出されても文句は言えねえよ。」
「あんたは文句は言わないの?」
「俺は実力主義だ。練習に出なかろうが、普段眠りこけていようが、強いならそれで良い・・・と、言いてえ所だが此処までになると考え物だな。」
「示しがつかない・・・とかですか?」
「それもある。特に今居る奴らは兎も角後輩が入ってくると、この態度に納得いかねえ奴が出てもおかしくはねえな。」
なんであんな奴が一目置かれてるんだよ納得いかねえ、と言われた時に一番早い黙らせ方はやっぱりプレイを見てもらうことだ。
でもそれが芥川の場合は難しい。
一番良いのは芥川を起こしてくれるような実力を持った後輩が出てきてせっついてくれることだが、流石にそれはラッキーを望みすぎかなと跡部も思っている。
「それに単純に、このままじゃ此奴は駄目だ。伸びしろはあるが、伸びねえと意味がねえ。何か足りない物が見つかると良いんだがな。」
「本人も探してらっしゃいますから・・・その内見つかると良いんですけど。」
「良いのか?お前らの立場として。」
「あ!ああ、そうかそうですよね・・・」
「良いんじゃない、別に。このくらいの応援はしても。勝つのはうちだし。」
「千百合ちゃん!」
「ほう?」
跡部が眉をピクリと釣り上げるのを、紫希は及び腰で見つめるが千百合は完全に流している。
「言うじゃねーか、アーン?言っておくが、去年までの氷帝学園だと思って俺達を舐めてかかってると、足元を掬われるぜ。」
「うちの足元掬うとか、正面切って倒すより何倍も難しいから止めたら。」
「どうだかな。お前らは去年うちを負かして関東では優勝してるが、今年も去年と同じような展開が保証されてるとどこかで思ってるんじゃねえのか?」
「そう見えるならそう思い続けてれば良いんじゃない?」
「ふ、二人共止めて下さい・・・!」
「うゆ・・・?紫希ぴょんおはおー・・・あり?千百合っちとべ様はどったの?」
「い、今ちょっとそのう・・・テニスのことと言うか、立海と氷帝どっちが勝つか的な話を・・・」
「おー!そっかそうだよー!
次の大会で当たるっしょ?いよいよどっちが強いかばっちりわかりますなー!」
その言葉に千百合と跡部は目を丸くした。
「楽しみだよねー!って、あり?もしかして当たらない事もある?」
「あ、いや・・・ど、どこかでは当たると思います、きっと。お互いと当たる前に、他のどこかに負けなければ・・・」
「なーんだ、それなら大丈夫だよー!負けたりしないよー!」
「そ、そうなら良いですけど・・・」
「「・・・・・はあ。」」
千百合と跡部はなんだか力が抜けて椅子にもたれかかった。
「どっちみちもうすぐわかるんだったわね。」
「今更ジタバタしてもしょうがねえな。」
その時はもうすぐ。
そこまで迫っている。
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