Booty 2
プール更衣室前。
スクール水着の上にTシャツ姿で、可憐はうろうろ廊下を彷徨っていた。
ことわっておくが、別に落とし物したとかそういうわけじゃない。確かにドジだけど。
「・・・あ!居たっ!忍足君、忍足くんっ!」
同じく水着に着替えて準備を終えている忍足を見つけた。
駆け寄る可憐に振り向く忍足は、いつもとなんら変わりのない顔だ。
「可憐ちゃん。どないしたん?」
「あのっ!どうっていうか、今日の勝負っ!」
「ああうん。するで、勝負。」
何故知ってる、とはもう聞かない。
今日忍足に話しかけてくる人はもう、基本知ってると思っておくくらいで良いだろう。
「私何か出来る事あるっ?って言っても大した事は出来ないけど、何かあるなら何でもするよっ!」
それでなくても友達が困ってるなら手を貸したいけど、こういう事態になると尚更使命感が沸き上がってくる。
だって約束したもの。協力するから、手伝うからって。
どんと来いです!なオーラを纏う可憐に、忍足はそんな場合じゃないのについ肩の力が抜けて微笑んでしまう。
「おおきに、有難う。でももう、可憐ちゃんからは十分手伝うてもろたから。」
「へっ?何をっ?」
「まあ、その辺は後でな。誰が聞いてるか分からへんし。」
「あっ!そ、そうだね、言わない方が良いよねっ!」
壁に耳あり障子に目有り、こんな所でネタが割れて不利になっても面白くない。
ただ。
可憐自身手伝った覚えどころか、本日忍足とこの話題に触れるのも初めてなのに、もう十分手伝ってくれたとは一体どういう事か。どうしても?な感じになってしまう。
「・・・忍足君っ!もしかして私に嘘吐いてないっ?」
「嘘?」
「嘘って言うか、適当に誤魔化してるっていうか・・・応援してくれるだけで有難いから、みたいな風に思ってるんじゃないかと思ってっ。私何もした覚えないし・・・」
(・・・こういう所やろか。)
先日網代に言われた、もっとお礼を声に出して言えという話。
有難いよ、頼りにしてるよと口に出して言わないから、可憐的にはなんだか一方的によっかかってるように見えてしまうんだと言われたけど、これもその弊害の一種かもしれない。
「ほんまやで。具体的にどう感謝してるかは今は言われへんし、応援だけでも有難い思うてる気持ちもあるけど、ほんまに俺はお世話になってん。もしちゃんと勝てたら、可憐ちゃんのおかげやで。」
「えええ、どうしてっ!?私何かしたのっ!?何時、どこでっ!?」
尚更わけがわからなくなって狼狽える可憐。
忍足はますます顔が綻んできてしまう。
「じゃあヒント言おか。」
「はいっ!」
「ずっとや。ここ最近、ずっとやってたで。毎日。目の前で。」
可憐は今度こそ本当にわけがわからなくなった。
ずっとやってただと?
自分の目の前で?水泳の努力を?
いや、水泳は確かに部活ぐるみでやってた。でも自分はそこに噛んでない筈なのだが。
「え?え?え?」
「ふ・・・まあ種明かしは又後でやな。」
「あっ!そうだね、ごめんね引き止めちゃってっ!頑張ってねっ!」
「おおきに。」
そう、全ては又後で。
まず勝たないと。
目の前の勝負を制するのが先だ。
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