Booty 2
ぞろぞろと並びだす競技者達。
遠い上に競技者が多くてよく見えないけど、あの中に忍足と件の2年生が居るのは間違いあるまい。
「可憐、ちゃん♪」
「えっ!?あっ、茉奈花ちゃんっ!」
かけられた声に振り向くと、ある意味誰よりも当事者でありながらいつもの笑顔の網代が、にこにこと其処に立っていた。
「い、いよいよだねっ!」
「うん。始まる、ね。ねえ、もう少し前に行かない?」
「えっ?」
「ほら、ここじゃあんまり良く見えないし。大丈夫大丈夫、此処に居る誰より私は見届ける権利があるんだから、皆譲ってくれるわよ。ねっ?」
「ええっ!?」
「ほら、行きましょ?すみませーん!通してくださーい!」
可憐の手を引いて実に堂々と人の波を縫っていく網代。
実に堂々としている。自分が網代の立場だったら、こんな余裕しゃくしゃくの態度ではいられないだろう。
「そうそう、侑士君達は第7レースで競技するらしいわよ?」
「あ、そうなん・・・侑士君、「達」?」
「うーん、本当は学年が違うから同時には泳げないんだけど、ね?部長様が・・・っていうか、ほら。我らが生徒会長様が、取り計らったらしいわ。よーい、ドンで決着付けた方が、話が早いじゃないかとか言って。」
「跡部君・・・!」
流石気が利いてる。いや、気が利いてるのか?
目立つ事を良い事と思いこそすれ、悪い事とは全く思わない王様は、偶にこうやって公開処刑みたいな事をする。
「この辺で良いかしら、ね。」
「うんっ!あ、あのっ!今何レース目ですかっ!」
「え、今?第5レースの途中だけど・・・」
ということは、もう次の次である。
選手側に目を走らせると、向こうに忍足と相手の2年生の姿がもう視認できる。
「第6レースの選手は、プールに入って準備をして下さい!ゴールする選手の邪魔にはならないように!」
「あわわ、もう始まっちゃうっ!」
「うん、意外と進行が早いわね。余裕をもって来たつもりだったけれど、結果的にギリギリセーフだったかしら。」
「・・・・・」
「うん?なあに?」
「・・・茉奈花ちゃん、怖くないのっ?」
網代は目をパチクリさせた。可憐からすると逆になんでそんな予想外です・・・な反応になるのかわからないのだが。
「怖い?何が?」
「だから、忍足君が負けちゃったら・・・別に、強制デートじゃないっていうのは知ってるんだけどっ!ただ、それはそれとして、こう・・・なんていうのかなあ、ううう・・・!」
成績はそう悪くないはずなのだけど、こういう時パッと分かり易い言葉がどうしても出てこない。頭を抱える可憐に、網代はくすっと笑って助け舟を出す。
「可憐ちゃんは怖いの?」
「怖いよっ!あ、わ、私がっていうかっ!もし私が茉奈花ちゃんの立場だったら怖いと思って・・・自分で断れば良いんだってわかっててもこう、何かこう・・・」
「・・・怖いの?」
「うん・・・私なら結構忍足君にどうしても勝ってほしい、って思っちゃうけど・・・」
勿論可憐には今可憐なりの勝ってほしい事情があるのだが、もし自分が網代のポジションにいたとしてもこんなに平然としていられるかと思うとそうは思えない。
寧ろ網代の立場になった時の方が余計に勝ってほしいと強く思うかもしれない。
「・・・ううん。」
網代は少し眉を下げて笑った。
網代には珍しいーーー所謂困ったような笑顔、という奴で。
「・・・まあ、ほら!それはなんというか、立場がどうのっていうより性格の違いっていう奴よ。」
「そう?なのっ?」
「そう。そもそも私、そんなに緊張する性格してないし、ね。」
「た、確かに私は緊張する性格だ・・・」
「第7レースの選手は、プールに入って準備をして下さい!ゴールする選手の邪魔にはならないように!」
「ああっ!始まっちゃうっ!」
「さ。どうなるかしら、ね。」
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