Camp school:Mountaineering 1

「おー!すごいじゃーん!」
「ね!遠くまで見えるね!」
「ねーねー、紀伊梨ちゃん家見えるかなー?みっきーの家あっちだよね?さっちゃん家は?こっち?」
「流石に見えないかも・・・あっちでしょ?木が超邪魔じゃん。」

紀伊梨も同じ頃、昼食を終えてクラスメイトと辺りを散策していた。

散策と言っても殆ど動けないが、代わりに此処はかなり見晴らしが良いので景色を見ているだけでも十分楽しいスポットだ。

「えー?見えないかなー?こーやってさ、こうやって・・・」
「ちょ、ちょっと紀伊梨!」
「五十嵐ちゃん、危ないよ!」

真下はそこそこの傾斜があるというのに柵から身を乗り出してより遠くを見ようとする紀伊梨に、周りは気が気ではない。ホラーにはビビりな紀伊梨だが、高い所だとかそういう場面での危機管理能力は寧ろ人より低い位である。



にゃー・・・ん



「あにゃ?」

右斜め下。
正に柵の向こう側、藪になって居る方から猫の声がした。

そっちを向くと、やっぱり猫が居た。
藪の中でも尚目立つ、いっそ見事な黒い毛並みの猫。

「あっ!」
「えっ!?何っ!?」
「あっちの!あっちの猫が病気だー!大変大変、じゅーいさんに連れてかないと!」
「猫?どこに?」
「え?あり?」

一瞬友人の方を向いた隙に、猫は消えてしまったらしかった。
紀伊梨が再度居た所を見ると、もうそこには猫など居なかった。

「あれー!?さっきまで居たのにー!」
「まあまあ。猫って騒ぐとどっか行っちゃう生き物だから。」
「煩いから逃げてくんだってー。紀伊梨声大きいんだから!」
「だってー・・・病気だったんだもん・・・」
「でも、本当に病気だったとしても助けてあげられないから・・・」
「可哀想だけど放っておくしかないよ?」
「むーん・・・」

(・・・病気、かあ。)

さっちゃんこと青羽聡子は、紀伊梨の指さした方を見て、ちょっと考えた。
青羽自身も猫飼いだが、猫飼いでない紀伊梨が見てわかるレベルの病気の猫って、そんな一瞬で隠れられるほど機敏に動けるだろうか?

(まあでも、動物って弱ってる時ほど人目を避けるものだし・・・うちのは完璧室内飼いの猫だから、野良の性質なんてわかんないしなあ・・・)

「さっちゃん?」
「聡子?」
「あっ、ごめん!なんでもないの!・・・あ。紀伊梨、後ろ。」
「ほえ?」

青羽が振り返ると、紀伊梨と井谷の更に後ろの方からビードロズとテニス部の面々がやってくるのが見えた。

「あ!皆どったのー?」
「これから、明日の夜のええと・・・下見?みたいなものに行くんだけどな。」
「明日の夜の?下見?」
「精霊探しだ。聞いてるだろう。」
「真田、あんたもう慣れたの。」
「?」
「いや、良い。」

千百合としては、精霊探しという単語が一度使われるごとにどうしても脱力してしまうのだが。

「ほーほー!良くわかんないけど分かった!行く!どこどこ?」
「あちらです。とは言っても、それほど移動はしませんよ。」
「柵から出るわけじゃないからの。」

言いながら一同は移動を始めた。

「五十嵐は、さっき何を大声出していたんだい?」
「あ!あのねー、猫が居たの!」
「「「「「「猫?」」」」」
「そー!病気の黒い猫ちゃんでー、お医者さんに連れてかないとって思ったんだけど逃げちゃった・・・」
「まあ、猫ならあれだけ騒いだら普通は逃げるだろい。」
「えー!そこまで騒いでないってー!」
「ううん、野生の動物は警戒心が強くてちょっとしたことで逃げてしまいますから・・・」
「病気ということなら、飼い主が居れば世話をしているだろうからな。罹患したままふらついてるという事から、野良である確率は85.11%。逃げるのは妥当だ。」
「りかんって「ああ、あれじゃあれじゃ。」ちょっとー!又無視する・・・っておおお!」

仁王が指さした方向を覗き込むと、柵の結構下の方に瓦張りの屋根が見えた。
ここからのアングル的にはどうも建物をやや斜め後ろから見ることになるらしく、建物のさらに向こうに鳥居が見え隠れしている。

「あれ何?神社?」
「そうじゃ。序でじゃき、今渡しておこうかの。」
「これは何だい?」
「なっちんが調べて纏めたんじゃ。配っといてくれと頼まれとった。俺も目を通したが、まあ今回捕まえる精霊さんの話じゃな。」
「おー!紫希ぴょん読んで読んでー!」
「はい。ええと・・・」


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