Camp school:Cowardly spirit 4
紀伊梨は今、青年と共に夜の街を歩いていた。
スマホは相変わらずならない。
シャットダウンされたまま。
「猫ちゃんどこかなー?」
「・・・案外近いかもしれないね。」
「そーいえばおにーさんはへーきなの?」
「え?」
「遅くなってお家の人心配してない?紀伊梨ちゃんも、おとーさんが遅いと心配になるお?」
「・・・・・・大丈夫だよ。」
何故大丈夫か。
心配してくれる家族なんて居ないからだ。
たった1人。
もうずっと長い間。
こんな事を考えてるから又笑われるんだろう、あそこの主に。
進んで1人になったくせに1人を寂しがるとは、とんだ矛盾だなと言って。
それは分かってるさ、自分で良く分かってる。でも直らないし、直せる気もしないんだ。自分は神様じゃない。いつも正しく振舞う事なんて出来ない。
だから、しょうがないんだ。
「・・・!待って。」
「んお?」
「・・・・・」
冷や汗なんてかこうにもかけない筈なのに、なんだか冷や汗をかいてるような感覚を覚える。
嫌な匂い。
自分の嫌いなレモンの香り。
そして塩の気配。
(あの神主・・・)
「どったの?お目目痛いの?」
「あ、いや・・・違うんだ。でも、こっちじゃなかった。」
「お?そなの?」
「うん。こっちだ。こっちに行こう。」
「ほーい!」
くるりと引き返しながらも嫌な予感までは消しされない。
予感と言うか、もうほぼ確定だ。
マークされている。
これは警告なのだ、松風からの。
その気になれば、直ぐにでもお前をどうこう出来るんだからな。
分かってるんだろうな、という念押し。
しょうがない。
元々歴代の神主には常に幾何かの交流を余儀なくされてきて手の内を透かして見られている所があるが、中でも松風は手強い。付き合いは長く、相性は悪い。性格が合わないと言うわけではないが、どうしても強気に出られないのだ。
彼奴は、自分より強い。
(兎に角、退路を塞ぎきられる前に逃れないと・・・)
「おにーさん?お目目悪いのに走ってだいじょーぶ?」
「ああ、大丈夫・・・大丈夫だよ。」
「ほんとにー?」
「・・・・・・・」
「?にゃーに?」
「いや・・・」
『本当に?』
紀伊梨の何気ない本当に?があの子の声と被るのは。責められてるように聞こえるのは。
やっぱり、自分が本当だった事など一度もないからだろうか。
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