Rare holiday 2
で?
具体的にどう手伝えっちゅうんじゃ、という仁王と柳生に、網代は気負う事なくガンガン質問していく。
「こっちと、こっちと、それからこっちだとどう印象が変わるかしら?」
「そうですね。最初のは率直に言いますと無難という印象が強いです。2番目はパッと華やかで、3番目は少し時間をかけて見た際に良さが分かるタイプかと。」
「成る程。仁王君、どう?」
「最初のと2番目のは別にどうも思わんな。3番目のだけは、ちゃんと泳ぐ気が無いように見えるが。精々波打ち際で遊ぶ用じゃろ、この辺りの飾りが絶対に邪魔じゃ。」
「確かにね、男子的には一見して機能性に見劣りするのはちょっと問題があるか・・・」
「な・・・なんか2人とも凄いねっ?」
思いの外軽快なテンポで受け答えする仁王と柳生に、可憐は予想外の驚きを隠せない。
「男子って、こういうの聞かれても分かんないって思ってたっ。」
「ああ、私は妹が居ますので。この服はどう思う?といった質問は慣れたものです。」
「そうなんだっ!仁王君もっ?お姉さんとか妹さんとかっ?」
「姉は居るな。」
嘘である。
いや、嘘ではないけど本当ではない。
姉が居るのは本当。
でも自分と同じくイリュージョニストな姉と、柳生家のようなやり取りはした事ないしこれからも多分しない。
仁王がこの辺の事をある程度話せるのは、単純に仁王が世の中のトレンドにある程度アンテナを張っているからである。非常識な事をしようと思うなら、先ずは常識を知る事が大事だ。
「というか、お前さんはええんか。」
「えっ?」
「桐生さんも、何かあれば仰って下さい。お役に立てるかは分かりませんが。」
「そうよ可憐ちゃん、自分のを選ばなきゃ!」
「そ、そうだったっ!」
さっきから感心して見ているばっかりで、つい自分のを見繕うのを忘れてしまっていた。
「ううんと、ううんと・・・これとか?あっ、これも可愛いっ!」
「なんというか・・・いや何でもない。」
「えっ、何っ!?」
「いや、良い。気にしなさんな。」
「気になるよっ!言ってっ!」
「趣味がお子様寄りじゃな。」
「お子様っ!?」
「仁王君。」
「酷い事言うわねえ。」
「じゃから何でもないと言うたじゃろ。」
(お子様・・・!)
がーん、と頭の中で音が鳴るようだ。
しかし確かにと言うか、言われてみれば感はある。
(柄とかデザインが茉奈花ちゃんが選んでるのと全然違うし・・・っていうか、型が違うのっ!?私ワンピースタイプばっかり選んでるけど、ビキニじゃない時点でもしかして駄目っ!?)
別に可憐はビキニが嫌いとか着たくないとかではない。でも単純にワンピースタイプの方が好きだし、安心するのだ。自分はドジなので、着る時の枚数は少ない方が事故を気にせず遊べる。
いやでも、それこそ折角中学生になったんだし。お子様のレッテルを貼られるのは癪だし。
「・・・ビ、ビキニにしようかなっ・・・」
「そういう問題なんか?」
「桐生さん、あまりお気になさらず。お可愛らしいと思いますよ?」
「そうよ、無理して方向転換する事は無いわよ?」
そうは言うが実際意見されると、それを踏まえて尚それを選ぶような度胸は無い。
実際網代と比べて幼いかもと自分でも思うから余計に。
「もう、仁王君ったら〜!」
「俺のせいか?」
「これは仁王君のせいでしょう。」
「はあ・・・桐生、ええか。」
「何・・・?」
「人間にはな。一人一人誰しも性格(キャラ)っちゅうもんがあるんじゃ。」
「うん・・・うんっ?」
「何かを選ぶ時はそれを無視したらいかんぜよ。身の丈に合わなかったり背伸びしたり、慣れない事を無理してやろうとするのは三流のやる事じゃ。ええな?」
「仁王君・・・」
なんだか良い事を言ってるようだが。
「・・・それって、実際私は子供っぽいからこのままで良いじゃない、って事だよね?」
「ピヨ。」
「やっぱり違うのにするっ!」
「仁王君!」
「誤魔化されてくれたら面白かったんじゃが、流石に通じんか。」
「仁王君、桐生さんに失礼ですよ?彼女は五十嵐さんとは違うんですから。」
その発言も紀伊梨に対して大概失礼な事に、柳生は気づいているのだろうか。いや、多分気づいててその上で言ってるのだろうが。
「真面目な話、俺は別に悪いという意味で言ったわけじゃ無かったんじゃが。子供っぽくても何も困らんじゃろ。」
「嫌なのっ!誰も困らないけど、私自分で嫌だもんっ!ただでさえ普段から年下に見られたり子供っぽく思われたりしてるのに、そんな所に磨きをかけたくないよっ!」
「分かる!分かるわ、折角お洒落するんだから理想の可愛さを手に入れたいわよね!」
「そう、それっ!そうなのっ!」
「しかし・・・理想という意味では、今選んだそれも又理想ではないのですか?良いと思ったからこそ、こうして手に取ったわけですよね?」
「そ、それもそうなんだけどっ!理想はって言われるとこう・・・どうせなら大人っぽくっていうか、千百合ちゃんみたいな雰囲気になれるような・・・」
「黒崎?」
「黒崎さんですか・・・」
2人の脳裏に浮かぶ普段の千百合の姿。
ああいう雰囲気になりたいと。可憐が。
え、無理じゃないか。
ちょっと乖離が大き過ぎて埋めきれなくないか。
と言うのは気の毒かな、という雰囲気。
「背伸びせん方がええと思うが。」
「仁王君、背伸びという言い方は良くありません。イメージチェンジですよ。」
「いきなりガラッと変えないで、ちょっとづつ変えるのはどうかしら?」
「ちょっとづつ?」
「今のをベースにして、いきなり黒のビキニとかにするんじゃなくてね?例えばワンピースタイプでも、もっと落ち着いた色にしてみるとか、柄を大ぶりの花柄にしてみるとか。ビキニでも子供っぽい雰囲気のはあるし、ワンピースでもシックなのはあるわよ?」
「そっかっ!」
(上手い事誤魔化したの。)
(お話上手な方ですね。)
「えっ?ごめん、今何か言ったっ?」
「「何も。」」
「あ、ほら可憐ちゃん!これなんてどう?」
網代が勧めるのはワンピースタイプの真っ赤な水着。
ちょっとカクテルドレスに胸元の型が似ており、スカート部分も少し長め。
だったのだが。
「此処にリボンがあるけれど、この大きさだと逆に大人っぽいでしょ?これなら、」
「ちょ・・・ちょっと大人っぽすぎる?かなっ?確かにビキニじゃないけどっ!」
「あら、駄目?じゃあこれは?」
濃い青のビキニ。
青というよりほぼ濃紺で、白くて小さいフリルがついているが、ビキニのラインとしてはそこそこ際どい感がある。
「こ、これも・・・」
「そう?ならこれとか!」
薄い黄色と白のビキニ。
ベースが白で、黄色のペイントをぶちまけたような柄なので、可愛いというよりは大分パンク寄り。
「うーん・・・」
「これも駄目ですか?」
「おい、段々元の方向に近づいとるぜよ。」
「う・・・!」
可憐もそれはなんとなく分かっていた。
勢いでビキニだとか大人っぽい奴だとか言ってみたけど、いざ「はい!」と目の前に出されると、どうも気後れするというか着こなせる自信が萎んでいく。
「ねえ、可憐ちゃん?それならやっぱり最初に良いなって思った水着にしてみない?」
「茉奈花ちゃん・・・」
「イメチェンも良いけれど着る気が湧いて来ないっていうなら、それは多分まだその時じゃ無いって事なのよ。」
「そ、そうかなあ・・・」
「そうよ!それにファッションは自分が着たいのを着るっていうのが大原則且つ大切な事なのよ?女子の一番素敵なメイクは笑顔ですもの。ね?好みじゃないものを無理に着るのはやめましょ?」
それはそうかもしれない。
ファッションに詳しい網代の意見だからこそ、誤魔化しじゃなくてそうなのかな、と素直に思う事が出来る。
「・・・・うん、そうするっ!」
「なら最初ので決定じゃな。」
「楽しい休日になると良いですね。」
「うんっ!有難うっ!」
「さて!私達の水着は粗方見たから、次は貴方達のを手伝うわよ?」
「いや、俺達は構わん。元々ゴーグルを見に来ただけじゃ。」
「そうなのっ?」
「ええ、度付きの物を。スポーツ用品店に行っても良いのですが、なるべくデザイン性が高い方が良いので。」
「ふうん。案外しっかり目が悪いのね?」
「そうだよねっ!多少近眼な位なら、レジャーの時は裸眼でもーーー」
「いえ、多少近眼なだけですよ。
ですが、その多少の視力の差でどんな目に遭うか分かったものではありませんので。」
「「・・・・・」」
どんな目ってどんなだよ。
無言で伺ってくる2人に、平和な世界で生きているんだなあという事を仁王は実感する。
「ビードロズと遊ぶと、どういう事態になるか分からんからの。装備は万全にしておかんと。」
「装備・・・」
「楽しそうねえ。」
「ええ、楽しいですよ。ただ、それだけについていけないと悔しいもので。」
無言の気合いを可憐と網代はひしと感じたのだった。
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