First region competition:Second round
「もー・・・だるーいー・・・」
「真理恵、頑張ろうよっ!ね?」
「やあよ私!暑いしさー・・・」
確かにそれはそうだった。
こんな真夏日に、一体誰が好き好んで屋外の清掃なんかするものか。
「あ・・・私こっちだから。可憐、後でね〜。はーあ・・・」
「あはは・・・はーい。」
新城と別れて、可憐は自分が指示された隣のエリアに進みだした。
じーわじーわじーわじー・・・・と延々鳴り続ける蝉の声。
照りつける太陽。
(暑いなあ、忍足君に帽子とか飲み物の話して貰っておいて良かっ・・・)
ふい、と思い出す。
引き留められた肩とか、被せて貰った帽子とか。
なんでもないことなんだ。
自分にとっても、忍足にとっても多分なんでもない事。
でもそのなんでもないことが。
なんだか。
「・・・・・」
「あれ?おい。」
「・・・・・」
「なあ・・・おいったら!」
「えっ!?あっ、はいっ!?何っ、えっ?だ、誰・・・?」
はたっと気が付くと、自分は忍足でなく赤いジャージの生徒に引き留められていた。
「誰って言われたら、俺は六角の黒羽春風だけど。」
「あ、六角の・・・」
「そう。で、お前は氷帝の腕章つけてるんだから氷帝だろ?なんで此処に居るんだよ?」
「えっ?」
「そっちのベンチからこっちはうちの担当だぞ?お前はベンチから向こう。」
「えっ?あっ、ああ!」
「大丈夫か?なんだかぼーっとしてたみたいだったし、暑くてくらくらしてるとかじゃないよな?もしそうなら掃除どころじゃないぞ?」
「だっ、大丈夫です大丈夫っ!そういうんじゃないから、全然っ!」
もう駄目だ、最近本当にぼーっとしている。
(だめだめっ!もう、本当ここ最近こういの多いよ私っ!しっかりしないとっ!ちゃんと目の前の事をやらないとっ!)
ぴしゃん!と自分の頬を軽く叩くと、心なしかちょっとすっきりした気がした。
「有難うね、えーと黒羽君っ!」
「そうか?まあ、平気ならそれで良いんだけどよ。」
「うん、有難うっ!邪魔しちゃってごめんねっ!」
言いながら慌てて言われたエリアに戻る可憐。
暑いんだから余計な動きはしない方が良いのに。
「えーと、この辺かなっ?そうだよねっ。」
(でも、黒羽君って選手なのにお掃除してるんだ・・・六角もマネージャー居ないのかなっ?氷帝も立海もマネージャー居るし、居て当たり前と思ってたけど、結構居ないっぽい所も多いんだなあ。)
そういえば千石もマネージャー欲しい、居ないから交渉したいみたいな事を言っていた。
人数比やなんかの要素もあるので一概には言えないが、選手とマネジで分担していても部を回すのは色々大変なのに、全部を選手で賄うのはさらに大変じゃないだろうか。
そう考えると、逆になんだかちょっと自負が湧いてくる。
自分達が居ないと困るな、ってちょっとは選手達も思ってくれてるだろうか。
自分達は部の役に立ってるかな。
(えへへっ!皆頑張ってるもんね、真理恵だって頑張ってくれてるしっ!)
「・・・・あれ?真理恵?」
新城の受け持ちエリアと、可憐の受け持ちエリアは隣接している。
エリアそのものがそこそこ広いとはいえ、隣同士しかも見通しが良いので、声はまあまあ届きにくい事もあるが視認は普通に可能なくらいの距離だ。
でもパッと隣を見た時に、視界に新城が見当たらず。
「あっ、あれっ?真理恵、どこっ?真理恵っ?」
トイレだろうか。でも何かあった時のためにも、行くなら行くと一声かけてくれても・・・なんて思いながら新城の受け持ちエリアにちょっと入って、辺りを見回す。
「真理恵?どこ行ったの、」
「ここ〜・・・・」
「あっ、真理・・・真理恵っ!?」
新城は植樹されているゾーンの木の陰でぐったり座っていた。
「真理恵っ!どうしたのっ!?」
「ごめん可憐・・・私ちょっと・・・」
「あ・・・・」
(・・・暑いんだっ!どうしよう、日射病だっ!)
どうしよう。
可憐の頭の中で、次にやらないといけないことがぐるぐる回る。
(ええと、ええと、日射病ってどうしたら良いんだっけっ!?日影・・・にはもう居るから、水分、そうだ冷たい飲み物っ!あれ、でも横にした方が良いんだっけ、自販機に行く前に寝かせた方が、ううんそれよりも誰か呼んで、)
「おい!どうした、何かあったのか?」
「あ、黒羽君っ!」
可憐の声と様子にトラブルの気配を感じ、黒羽が来てくれた。
有り難い。本当に有り難い。
「あのっ!真理恵ーーーうちのマネジが日射病みたいでっ!」
「日射病?」
「そうなのっ!だから早くなんとかしないとーーー」
「・・・・・」
「ええと何からしたら、ねえ黒羽君聞いてるっ!?」
「・・・いや、熱射病じゃねえか?」
「えっ!?」
黒羽はさっと立ち上がって新城に近づくと、迷いのない様子でさっと抱き上げた。
「移動するぞ!」
「えっ!?でも日陰の方が、」
「熱射病なら此処に居ても解決しねえ!どっちみちそれほど涼しいわけでもねえんだ、そこの事務室に入らせて貰おうぜ!」
「え、あ、え、」
さくさく話を進めていく黒羽に、可憐は口を挟めずついていく。
「の、飲み物とか要らないのっ!?」
「要るけど、こういう所は大抵事務所の近くに自販機があるもんなんだ!それより、お前は自分のところの責任者に連絡しとけ!」
「ああっ!そうだった、ええと、ええと、榊先生と、それと跡部君・・・はもうそろそろ試合が始まるから、茉奈花ちゃんの方にっ、」
わたわたと走りながら携帯を取り出す可憐。
事務所まで後少し。
「ええと、ええと、きゃうっ!落としたっ!」
「おい、平気か!?」
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