First region competition:Lunch time
「知らんやんそんなん。」
『そう言わんでやー!なあ侑士、ほんま頼む!この通りや!』
どうでも良いけど声がでかすぎて会話丸聞こえだぞ、と思いながら忍足の隣に座る向日はおにぎりのラップを解く。
一緒にお昼にしようと思ったら、食べ始めて5分程で忍足の携帯が鳴り。
もうそろそろ半分くらい食べ終わるぞ、という時になっても話は終わらない。食べ進められない友人が、他人事ながら気の毒。
「あんな。俺かて意地悪しよ思うて言うてんのんとちゃうねんで。知らへんもんは教えたろ思うても教えられへんねん。」
『お前自身が知らんくても、誰か居らんか!?なんかその辺に詳しい親切な東京者が・・・』
「居ったとしてどないすんねんな。お前がずっと東京居れるわけでもあらへんし、その人をずっと大阪に寄越すわけにもいかへんやろ。」
『ぐ!くそ、正論で刺してきよって・・・!』
「諦めて近場で探しいな。学校中見渡したら、そこそこ出来るやつようさん居るやろ。」
『アホ!客にネタバレなんかしてみい、四天宝寺中学テニス部の面目丸つぶれっちゅー話や!』
「たった一言の中でえらい派手な矛盾やな。」
なんで人にネタバレすることがテニス部の面目を潰すことになるのか。
お前らテニス部なんだろ。ネタバレもへったくれもないというか、そもそもネタなんてないだろ。本来。
「取り敢えずもう一旦切ってええ?続きは今日帰ったら付き合うたるさかい。今いうか、今日立て込んでんねんけど。」
『え?そうなん?・・・ってああっ!せやった、そっちは地方大会今日やないか!』
「わかって貰うて何より。」
『よっしゃ、わかった!俺も頑張るから、そっちも頑張るんやで!全国で会おな!』
「ああ。でもお前・・・切れたわ。」
「お疲れ!」
お前も自分もレギュラーでもなんでもないんだし、頑張ることもないと思うんだけど。
という突っ込みは電波に乗る前に消えてしまった。
「お前の従兄弟、しょっちゅう電話してくるよなー。」
「昔からやで。声でかいのんも騒がしいのも。」
「ふーん。で?聞こえてきたけど文化祭の話かよ?」
そう。謙也の用件は、文化祭でやりたい事あるから協力してくれだったのだ。
絶対テニスに関係ないわと馬鹿でもわかるこの話題について、何をどうしたらテニス部の面目がつぶれるのか。
「せやで。」
「でもまだ夏に入ったばっかりだぜ?」
「彼奴は・・・いうか、彼奴の学校は「祭」いう冠つく行事にはえらい真剣やで。聞いた話やけど。」
「へー。」
でもまあそれは良いことだよな、なんて軽く考える向日は四天宝寺中学のノリを知らないのだ。あの学校は油断すると、すぐ真剣に明後日の方向を目指してしまう。
「で?」
「で?」
「手伝ってやんねーの?バンドやりたいんだろ?適役の友達が居るじゃん、立海に。」
そう、謙也は木下藤吉郎祭でバンドをやりたいのだ。
それも適当な完成度ではない、きっちりした垢抜けた演奏が目標。
でもやったことない。誰か助けて。あ、自校の人達はお手伝いは要らないので楽しみに待っててください、びっくりさせますから。
謙也の要望はそれである。
東京ってごっつ人居るんやろ?やったら楽器とか詳しいバンドマンも居るやろ!誰か助けてくれそうな親切な人紹介してくれ!
って言われても。
「居るには居るけど、流石に迷惑やろ。一日や二日で素人をそこそこ見れるように仕上げてくれ言うても無茶やで。」
「まあなー。そんな簡単だったら誰も苦労しねーよな。」
「おまけに遠いし。」
「遠いのは別に良いんじゃねーの?ほら、観光がてらって感じで!俺だって、単純に大阪行きたくねーかって言われると行きてーけど。」
「ああ・・・確かに、観光は出来るし報酬は粉もの言うたらそれは好感触かもしれへん。」
協力してくれたら、たこ焼きお好み焼き奢りやで!好きなだけ食うて帰れ!と言ったら紀伊梨はまず一も二もなくやると言うだろう。
他の3人もそこまでではなくても、まあまあ惹かれるのではないだろうか。
(・・・せや、桃崎。)
最近話聞いてないけど元気なんだろうか。
今でも打倒跡部を目指してたりするのか。いや、諦めそうになかったけど、あの様子だったら。
「侑士?どうしたんだよ?」
「ん?ああいや、ちょっとな。向こうに居る知り合い思い出して。」
「ふーん。」
「跡部を倒したい言うて急にテニス始めてるような奴やねんけど。」
「ふーん。ま、そんな奴山ほど居るだろーけどな。」
「え。」
「ん?」
「・・・山ほど居んのん?」
知らなかった。
というか、身の回りの該当者が桃崎だけなのだが、自分が知らないだけなんだろうか。
「誰?」
「え、いや!誰っつーかその、そういう奴居るだろーなと思って。」
「そうなん?」
「いや、そうだろ!テニス云々抜きにして、跡部って目立つじゃねーか。それでなくても偉そうだし、恨みなんか買い放題だぜ?誰がどんな理由で打倒跡部を掲げてても、俺は別に不思議とは思わねーよ。」
成程。
怨恨の線もあるのか。
確かに跡部はテニス部以外でも人とのつながりがべらぼうに多いし、その過程で人の敵に回ることも多々あろう。
(いや、ただ・・・桃崎が人に対して恨みつらみを募らせるタイプには見えへんわ。怨恨の線はありそう且つ考えてへんかったパターンやけど、怨恨の可能性は無しと考えると・・・)
思考しろ思考しろ。
他に残ってる線はなんだ。
「・・・・・」
「おーい?侑士ー?」
「あっ!おーい、忍足君っ!向日君っ!」
このタイミングで氷帝部員の固まってる所に帰ってきた可憐は、二人並んで座っている忍足と向日を見つけた。
「良かったっ!探してたのっ!あのね・・・きゃあっ!」
「「危ない!」」
「あ、有難うっ!ごめんなさい・・・!」
「だからお前、走るなよってば!」
「それは無理だよっ!」
「そうやんな。」
無理だってわかってるから忍足だって言わないけれど、でもつい言っちゃう向日の気持ちもわかる。
「それで、どないしたん?」
「あっ!そうそうっ!あのね、私今日紫希ちゃん達とご飯食べてたんだけど、その時にフェスに誘われてっ!」
「「フェス?」」
「うんっ!東京でレインボーフェスっていう、中高生のバンドのイベントがあるんだってっ!5人まで誘って良いって言われたんだけど、2人ともどうかなっ?あっ、ただ日程的には全国大会の直前になっちゃうんだけどっ。」
「「・・・・・」」
忍足と向日は顔を見合わせる。
フェス。中高生バンドの。
「・・・呼んでやったら?何か勉強になるんじゃねーの?」
「せやな。まあ彼奴側の日程が合うかどうかわからへんけど、やってみよか。」
「?」
「可憐ちゃん、図々しいことは分かっててちょっと頼みたいねんけど。」
「?はいっ。」
「あんな、俺の従兄弟がーーーー」
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