Rudeness 2
「えーと・・・」
「あ、忍足君だ〜。」
「こっちよ!」
伊丹と榎本は裏庭の広場で合流した。
誰が聞いているか分からない中、外の方が声が通りにくかろうと言う苦肉の策だ。
「呼び出してごめんな。」
「全然!こっちも聞きたい事あったから。私、伊丹瑠璃よ。」
「榎本朝香です〜。」
「忍足侑士や。よろしゅうな。」
ベンチに座って購買で買ったものなり弁当なりを取り出すと、3人は挨拶もそこそこに情報交換を始めた。
聞きたい事は山ほどある。
「なんか、聞いたんだけど網代さんの件は片付きそうなんだって?」
「せやな。何するんかは知らへんけど、跡部が片付く言うてるし、多分ほんまに片付くんやと思うわ。」
「ふーん・・・」
「良かった〜。」
榎本はのんびりしたもので、良かった良かったとしみじみ思うばかりだが、伊丹は別な意味でしみじみしていた。
学園の王、跡部景吾はなかなかどうして信頼のある男らしい。
「じゃあ後は、可憐ちゃんの方だけだね〜。」
「えっ。」
「え?」
「あ・・・」
しまった。
伊丹としては忍足の反応を見つつ切り出すつもりだったのだが、予定が狂った。
ああほら、目を丸くしている、と伊丹は思ったが、違う。
忍足は予想外の方へ話が転がって、驚いているのだ。
「あの、忍足君実はね・・・」
「やっぱり、可憐ちゃんクラスの方で何やあったん?」
「え?」
「え?」
「え?」
待ってくれ。
待ってくれ。
おかしくないか。
これはもしかして。
「・・・私達、最近可憐が変だけど思い当たる事が無いから、部で何かあったのかと思って・・・」
「・・・俺もまるっきり同じ事考えててんけど、甘かったみたいやな。」
「え〜、もしかしてだあれも何にも知らないのぉ〜?」
榎本のボヤキは忍足と伊丹の胸にグッサリ刺さった。
そう。つまりお互いがお互いをあてにした挙句、盛大に空振ったのだ。
これは辛い。
実は現状で元凶がすぐ其処に居るのだが。
「どうしよ〜。」
「・・・まあ、お互い知りもしない事を聞きあうのは止めましょっか。先に網代さんの方を。」
「せやな。そっちを片づけ終わってからにしよか。」
「そうね。」
「じゃあ悪いねんけど榎本さん、可憐ちゃんに言うた話もういっぺんしてくれへん?」
「うん。えっとね〜・・・」
榎本は出来る限りの事を思い出しながら喋った。
しかし元々が盗み聞きだった事もあって、細かい点はどうも要領を得ない。
可憐から聞いた以上の情報は出てこないか、と思われた時だった。
「もっぺん言うて。」
「それで〜・・・え?」
「もっぺん言うて。その奥の手の所。」
忍足の頭の奥で、アラームが唸りだしている気がする。
まずい。
まずいぞ。
「えとお、しょうを・・・」
「もう一回や。」
「もう一回って、」
「正確に言うて欲しいねん!イントネーションとか、良う思い出して!」
「ちょ、ちょっと待ってね〜。えっと〜・・・」
そう急かされると余計に記憶が薄れる気がするのだが、
忍足の様子に只事ではない何かを感じて、榎本は記憶力を総動員させた。
「しょうを・・・とすれば・・・・まお・・・よ。・・・よ?」
「え?」
「あ〜!そうだった〜、あの人「よ」って2回言ってた〜。」
「は?」
「まお・・・よ。よ。」って。」
「何それ?」
(・・・あかん!)
忍足は携帯を取り出した。
「・・・もしもし、俺や!今どこ居る?」
「今?今教室・・・え?どうして?」
「茉奈花ー!」
「ん?」
「呼ばれてるよ?2組の千倉君。」
「えええ?ごめん、呼ばれてるみたいだから、後にして!
長くかかりそうなら切り上げるから!」
『待・・・』
ピ。と音を立てて網代は携帯を切った。
「告白じゃないー?」
「千倉翔君ってあれでしょー?サッカー部のさ。」
「違うわよ。」
(千倉・・・「しょう」!?)
内川は教室の外、後方の扉に背を預けて隠れて、耳をダンボにして話を聞いていた。
前方入口には見知らぬ男子。
(彼奴か、奥の手のしょうって名前の奴は!)
内川は歯噛みした。
よりにもよって人の少ないこのタイミングで。
(いや!でも1人でもなんでもやらないと!可憐に1人でダイジョーブ、って言ったんだもん!)
男が相手となると流石にちょっと怖いが、やるしかない。
内川は大きく息を吸った。
「・・・ちょっと待った!」
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