First region competition:Semi final round 2
「すげー!返したぜ!」
「しかも2球目だ!1球しか見てないのに、あんな正確に!」
「魅せてくれるぜ!」
「流石、常勝立海だ!」
「化け物か彼奴は・・・w」
「すっごーい!ゆっきー、ちょー強いじゃーん!知ってたけどー!」
「いや、本当その通りだよw正に「知ってたけど」の世界だわw」
確かに知ってはいたけど、こうして目の前で見せられると嘘だろマジかよとどうしても思う。棗でなくても思わず変な笑いが出そうな強さ。
(すげえ・・・)
千百合は思わず呆然と口を半開きにした。
いずれ返すだろうとは思ったけど、僅か1球で返すのか。あの変なショットを。
強い強いと思ってはいたけど、規格外過ぎやしないか。
思わずうっかり、今自分はプレゼンされているから城成湘南側を見ていないといけないということも忘れて、千百合はぼうっと幸村を見つめてしまう。
すごいなあ。
本当に素直にすごい、掛け値なしに。
なんて思いながら前のめりで見ていると、ヘッドバンドで額の汗を拭う幸村と目が合った。
「・・・!」
すごく綺麗な顔でふ、と微笑みを投げかけられて、千百合は心臓が止まったかと思った。
まだ試合中だぞ、よそ見してて負けても知らないぞ。
と思う千百合の心まで見透かしたかのような、優しくて強い微笑み。
大丈夫。
絶対に負けたりしないから、安心して見ていて。
俺の事を、見ていて。
「・・・・・」
まさか聞こえるはずもないのに、幸村にまるで直接そう言われたかのよう。
こういう所、幸村という男は本当に狡いと思う。
今こっちはお前の為に、頑張ってお前を見ないでさして興味もない相手の方見てるんだぞ。そうやって微笑み一つで自分の視線を縫い止めるような真似しないでくれよ。
「・・・・・」
ちょっと、会場が沸いてる今の内にちょっと俯いて気持ちを切り替えよう。
前を向いてたら、本当にまともな判断が出来るか怪しくなってしまうから。
千百合がそんな風に幸村に意識を奪われている間、棗はちょっと軽い危機感を覚えて変な汗をかいていた。
「あー、ちょっとやばい・・・」
「え?何が?ゆっきーってばぜっこーちょじゃん!」
「あ、ごめん。試合の話じゃなくて・・・」
「騒がれていますね。」
「黄色い歓声ってやつ?」
「まあ、無理もないけどな。」
「あの強さにあのマスクの持ち主じゃからの。」
観客席と横続きになっている部員スペースでは、きゃー!すごーい!の賛辞が横殴りでわああっと聞こえてくる。
ここまでくると流石にちょっと煩いけど、まあ騒ぐ気持ちもわかる。
「今からこんな調子じゃ、全国優勝したらどうなるんだろうな。」
「夏休み明けたらヒーローです、って感じ?ま、元々幸村君って有名人だけどな。」
「敵が増えそうじゃの。」
「敵?やっかみということですか?確かに幸村君はほぼ完全無欠と言っていい方ですが・・・」
「そうじゃのうて、黒崎の敵が増えそうじゃっちゅう意味ぜよ。」
「「「ああ・・・」」」
まあ女子からの視線がガツンと熱くなることはほぼ決定事項になったようなものだ。
幸村に既に彼女が居ることももう結構有名ではあるんだけど。
「気持ちの問題ですからねえ。こればっかりは。」
「好きになるなっつっても無理なもんは無理だからな。」
「彼女が居っても、構わん奴は一向に構わんからの。」
「でも、大丈夫だろ?幸村だからな。」
「まあ幸村君ですしね。」
「幸村君だもんな。」
幸村だから。
この一言で割と色んなことが片付く、そういう男なのだ彼は。
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