First region competition:Final 1
関東大会、決勝日。
その日は土曜日だった。
そして、天気予報で前々から雨になるよと言われていた日でもあった。
そうなると雨天順延、決勝戦は平日に縺れ込む。
部活の大会がある部員のみ学校を休んで大会に赴き、他の生徒ーーーまあビードロズ達は普通に学校である。
でもさ。
見たいじゃん、決勝戦。
というわけで、紀伊梨を除く3人は前もって親と交渉していたのである。
お願い、学校休ませて。
「もー!めちゃんこびっくりしたよー!」
「ふふふっ!ごめんなさい、驚かせてしまって。」
「でもお前、言ったらばらすっていうかばれるでしょw」
「んで、ばれるともう一つ面倒くさいでしょ。精市もそうだけど、真田とか柳とかも絶対こういうの嫌いよ。」
「あー、だよね・・・はっ!もしかして紀伊梨ちゃん達、終わったら皆から怒られる!?」
「背に腹は変えられんよw」
「あ、甘んじて受け入れましょう・・・」
「終わった後だから別に良いんじゃないの。親からの許可も取ってあるし。」
「そーそー!おかーさんに言っててくれたんだよねー、なっちん!」
「お前感謝しろ、めっちゃ苦労したんだぞw」
傷病でも冠婚葬祭でもないのに学校休ませてと親に交渉するにあたって、なんと言ってもネックなのはやっぱり勉強とか内申とか普段の真面目さであろう。
そこのところ、皐月を言い包めるのに棗がいかほど苦労したかは想像に難くない。
最終的に紫希と千百合も口添えする事態になり、そこまでしてやっと皐月はうんと言ったのであった。
「あ、そうだ紀伊梨。」
「うにゅ?」
「絶対絶対、夏休み明けのテストでは全教科平均点を取らせますから、って約束したから死ぬ気でやれよ。」
「そんな約束したの!?」
「おばさんが、そのくらいじゃないと駄目だと・・・」
「えーーーー!」
「じゃあお前だけ置いてった方が良かった?」
「それもやだけどー!でも出来ないよそんなのー!」
「出来る出来る。やれるやれる。」
「千百合っち適当言ってない!?」
「だ、大丈夫ですよ!夏は時間がたっぷりありますよ、ほら私達皆塾とかお稽古とかないですし・・・」
「というか、休み明けは皆油断してるからなw基本平均下がるから希望はあるよw」
「あ!そっかー、それもそーだね!」
「ま、紀伊梨は基本的にその油断してる側の人間だけどね。」
「ぐ!」
「こりゃあお泊り会じゃなくて勉強会だわw」
「えーーー!やだそんなのー!遊びたいー!」
「で、でも紀伊梨ちゃん・・・もし達成できなかったら、今後こういう事があってももう許して貰えないですよ?」
「う・・・」
「決定。紀伊梨はドリル持って参加な。」
「そんなー!」
紀伊梨の叫びが、平日の駅のホームに響いた。
「はあ・・・」
一方、可憐のため息が零れ落ちるのは会場内。
可憐はマネージャー、つまり部員のため、今日は大手を振って(というのも変な表現だが)休んで大会に来ている。
今日ばかりは跡部に迎えを頼んだ。
遅れるとまずい。
なんせ決勝だ。
「可憐ちゃん。」
「はいっ!忍足君、どうかしましたかっ!」
「・・・別に、どうかしたいう事はないねんけど。」
ただそこに居たから、もうそろそろ始まるなあ、なんて軽い会話しようかと思っただけなのにこの反応の過剰さ。
「そないに緊張せえへんでも。」
「わ、分かってるんだけどっ!私が緊張してもどうしようもないし・・・」
「変わりに今日はドジを踏んでも、もう問題はねえから安心してろ。」
堂々とした跡部の声音は、実に落ち着いている。
「またそないな言い方・・・まあ、一理はあるやろか。」
「一理あるのっ!?」
「ああ、そない言いたかったわけやないねん。もう今日を乗り切るだけやから、て思たら気が楽やないかて思うて。」
「今日、だけ・・・」
そう。
全国大会進出が決まってるとしても、その全国大会はまだもう1月ほど後の話。
関東大会はどうしたって今日で終わりなのだ。
泣いても、笑っても。
「・・・ねえ忍足君っ。」
「ん?」
「勝てるかなあっ?」
まあ勝てるやろ。
準決勝までならそう言えた。
でも今はもう違う。
可能性で語れる相手じゃない。
「・・・勝たへんとな。」
勝てるかどうかじゃない。
勝つかどうか。
今日の試合は、そういう戦い。
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