First region competition:Final 3
セイツェマンは湘南にある喫茶店である。
カフェというよりは喫茶店。
ここは元々紫希の父、真が学生の時から行きつけにしていた所で、昔は真が家族連れでやってきていたが、やがて子供達がそれぞれ赴くようになるまで時間はかからなかった。
「はい、どうぞ。」
「やたー!おばちゃんありがとー、頂きまーす!」
「有難うございます、頂きます。」
「あー、久しぶり。」
「最近来てなかったからなあw」
ここの名物はガレット。
お菓子ではなくて、そば粉のクレープの方。
運んでくれるのは、店主である高野夫妻の妻側である花凛。
おばちゃんと言われると、まあ言われる年といえばそれはそうだが、おばちゃんというよりはどちらかというと淑やかな女性である。
「それにしても皆、今日は平日よね?どうしたの、揃って?学校は?」
「え、ええと・・・」
「一応、親の許可は得てますんでw」
「ちょっとね。」
「むぐ・・・おばちゃん、きょー紀伊梨ちゃん達が来たのは、ゆっきー達には内緒ね!」
「???ううん・・・まあ、うん。ご両親達が良いって言ったのなら、おばさんは良いんだけど。」
また何か始めたのかしら、とか思いつつ、まあこの子供達がちょいちょい変な事やるのはわかってる事なので。
「飲み物、どうしたら良いかしら?今にする?後から?」
「紀伊梨ちゃん後から!ケーキと一緒!」
「私今が良い。」
「私は後からで。」
「俺も今にしよっかーーーー」
「こんにちは。」
4人どころか、花凛さえもぴゃっと一瞬飛び上がった。
この声。
この気配は。
「・・・こんにちは、幸村君。久しぶりね。後ろの子達はお友達?」
「高野さん、お久しぶりです。部活の友人達です。」
「空いているな。俺達以外誰も居ないようだが。」
「平日ならばこんなものだろう。休日になると、こういう所はおよそ4.45倍の客入りになる。」
「すげえコーヒーの良い匂い、腹減ってきたな。」
「なんでコーヒーの匂いで腹が減るんだよ、飲み物だろ・・・」
「よう見つけるもんじゃの、こんな場所を。」
「これは案内されなければ来ませんね。学校からの距離もなかなかです。」
やばい。
来た。
咄嗟に4人は机の下に身を伏せて縮こまった。
(奥の方で助かったなw)
(ど、どうしましょうバレたら・・・)
(おばちゃん!おばちゃん!ゆっきー達はそっちに座らせて!)
(ここでブッキングとか予想外だわ。)
勿論そんな心の叫びが伝わるべくもないが、有り難いことに花凛は察しが良かった。
言われずとも、幸村達を自然に遠ざけてくれる。
「ええと、そうね、この人数なら・・・こっちに座って貰えるかしら。奥はさっきまでお客さんが居たから、まだ片づけていないの。」
「はい。」
「・・・制服じゃ、ないのね?」
「はい、今日は大会の決勝で。先日の大雨のせいで、平日になってしまって。」
「ああ!」
(なるほどね、そういう事だったのねあの子達。)
ここには幼馴染組で何度も来たから、花凛も幸村の性格はわかっている。
こういうの、あまり良い顔をしないであろうことも。
まあ明日学校に行けば嫌でもバレるだろうが、流石にこの場でバレたくはあるまい。
「それじゃあ、オーダーを。」
「はい。ええと・・・・」
向こうの方(とはいってもさして離れていないが)で、皆が口々にオーダーしているのが聞こえる。
どうかそのまま気づかないで居てくれ。
このままこっそり会計して、ひっそりと外に逃げたい。
(あーん、もーちょっと残ってたのにー!そーっとお皿下に持って来ちゃダメかなー?)
(流石にばれるだろ止めとけw)
(でも、ずっとこのままも厳しいですよね・・・)
(まあね、花凛さん以外の物音したらばれるよね。)
せめて後もう一人でも客が居ればな・・・と思ったその時、カランカランとドアベルの音がした。
来た。
なんという渡りに船、救世主。
と思ったのは一瞬だけだった。
「帰った・・・お。幸村。」
「こんにちは、ご無沙汰してます。」
入ってきたのはーーーというか戻ってきたのは高野夫妻の夫側の勇。
まずい。
客じゃなかった、店主だった。
しかもこの店主、割と大雑把且つ人の話聞く性格をしてないのである。
やばい。助けて誰か。
「ん?そこのテーブルどうした。」
「あ!今片づけるから、」
「良いから作ってろよ。俺がーーーん?
なんだ、お前ら揃いも揃ってそんなとこ隠れて。避難訓練ごっこか。」
ああ駄目だ。
詰んだ。
「というか、なんでテーブルこんなに離してんだよ。あっちに幸村が居るんだから、あっちのボックス座ったら良いだろ。」
「あの勇、あのね、」
「それとも喧嘩中か?そうだとしてもこんなくだらねえガキみたいな事してねえで、さっさと仲直りしろ。辛気くせえことしてんじゃねえよ。」
「勇・・・・」
やれやれ顔でこっちを覗き込んでくる勇。
その後ろから花凛が、もう何も言わないで良いからと表情で訴えながら夫の肩を叩くのが見える。
そして更にその後ろから覗き込んでくる、見慣れた幸村の顔。
「・・・大体の事は予想がつくから、取り敢えず出ておいで。」
「「「「はーい・・・」」」」
5/8
[*prev] [next#]
[page select]
[しおり一覧]
1年1学期編Topへ
1年夏休み編Topへ
-