Flower drop 1
「ううううん・・・・うううううん・・・」
「あの・・・」
さっきから皐月は超唸りながら紫希を着付けている。
「皐月おばさん・・・」
「うううん・・・うん?紫希ちゃんどうしたの?あ、もしかして締めすぎ?」
「そ、そうでなくて・・・その、さっきからずっとううんと仰ってるので・・・」
「え!あ、やだ!おばさん声に出てた?ごめーん!気にしないで!何でもないの!」
ただね、と続けながら皐月は丈の長さを合わせる。
「紫希ちゃん。」
「はい・・・」
「す・・・・・」
「・・・?す?」
「・・・・っごく、可愛いよ!」
「え?」
「もうね、千百合ちゃんや紀伊梨もそうなる予感がしてるんだけど、今日の3人は本当に可愛く仕上がるよ!おばさんが保証する!お祭りに来てるどの女の子より可愛いよ、絶対!」
「そ、そうなんですか・・・?」
紫希は最初にヘアメイクを終えたので、もうこの浴衣を着たらお仕舞。完成形が見え始めているのだ。
ううん、私のヘアメイクスキルも捨てたもんじゃないなあ、という自画自賛がちょっぴり入ってるのはご愛敬。
「で、でも、紀伊梨ちゃんや千百合ちゃんはともかく私なんか、」
「そんな事ないよ!紫希ちゃんは可愛いよ、おばさんはそう思うよ!」
「・・・・・」
「紫希ちゃんは根拠もないのにって思うかもしれないけど、根拠もちゃんとあるよ?」
「・・・髪型ですか?」
「それもだし浴衣もだけどね。でももっと大きいのは、顔が変わった事かな。」
「顔・・・?」
「雪乃さんや純子さんとも最近よく話すんだけどね?紫希ちゃん、中学に上がってから顔つきが変わったよ。千百合ちゃんより紀伊梨より、誰よりね!2人も変わってはいるけど、紫希ちゃんが一番変わった。」
中学に上がって、3人の環境は大きく変わった。
新しい生活、新しい目標、新しい仲間。
新鮮な日々の中、一番目まぐるしい日々を送っているのは紫希。
「うふふっ♡どう?そうかも、って思わないかな?」
「ああ・・・ううん、自分が変わってる気は、ちょっと、します・・・」
紫希にとって、入学してからの日々は正にジェットコースターだった。
考える暇も準備する暇も十分とは思えないまま、やるしかない!さあ行け!と挑戦に向かってどん!と背中を押され続ける毎日。
振り返る間もなく進み続けた結果、なんだか入学前の自分にしては考えられないような事が日常の中に山盛りになっていて、自分でも偶にちょっと呆気に取られたりもする。
「・・・先日、幸村君に。」
「おお!幸村君に?」
「最近我儘になったと言われて・・・」
「・・・ぷっ、あはははは!やだそうなのー?おばさんも我儘紫希ちゃん見たいー!」
「い、いえそんな良いものでは・・・幸村君は良いことだって言うんですけど・・・」
「うん、おばさんも良いと思うよ。・・・ねえ紫希ちゃん、こんなの知ってる?」
「?」
「女の子はね、我儘なのが可愛い、のっ!」
きゅっ!と良い音がして、帯が固定された。
「うううううん・・・・・可愛い!我ながらグッジョブ!」
「ああ、ううんってそういう・・・」
「あー!紫希ぴょん可愛いー!ねーおかーさん!次紀伊梨ちゃん!紀伊梨ちゃんの髪やってー!」
「千百合ちゃんも髪やるよね?もう決まってる?」
「私別になんでも。っていうか、このままでも。」
「あはは・・・駄目だよ、折角今からお祭りなんだか・・・あ!」
雪乃が先ず外を見て、他の4人も同じ方を向く。
何も見えないけど、感じる。
ドン!ドン!とお腹に響いてくるような音。
祭囃子が聞こえる。
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