Flower drop 2
紀伊梨を真田と柳に引き受けてもらった後、幸村と千百合はぼちぼちと集合場所の周辺を目指して歩き出した。

「それで?」
「?」
「さっき何か、柳に言いたそうな顔をしていたけど。」
「ああ・・・柳にっていうか。世の中の無情をちょっと噛みしめてて。」
「無情?」
「後自分勝手も噛みしめてて。」
「・・・そんな事柳は言ってたかな。」

どこだろう、と幸村は記憶の動画を巻き戻して再生する。
特に変な会話じゃなかったと思うが、強いて此処が引っかかったかな?なポイントを上げるなら。

「・・・春日は一人だから大丈夫だろう、って所?」
「そう。紫希はっていうか、紫希と私は客観的に見てそうよねと思って。」
「ああ・・・まあ、そうかな。」

身内のあれこれ差し引いて純粋に身が危ないのは紀伊梨。
だけ、な事を紫希も千百合も長年の経験を経て知っている。

ナンパは皆、紀伊梨に興味がある。
紀伊梨以外に用があった試がないのだ、逆に言うと。

真田も柳も他の皆も、紫希が嫌いだから好きだからとか関係なく「客観的に見て一人に出来るかどうか」を考えた時には紫希は一人にして良かろうと判断する。
つまり、そういう事。

「まあ、五十嵐の場合は一人にして置くとあらゆる類のトラブルを呼ぶから。一概にそれだけが理由とは言えないけれどね。」
「まあね。」
「自分勝手っていうのは?自分も春日と一緒じゃないくせに、っていう事かな?」
「それもあるけど。」
「けど?」

「私さっき反射的に、丸井は居ないのかとか思っちゃってさ。」

丸井の、対紫希の態度にいらいらする事も多いくせに、咄嗟に内心で頼ってしまったのが千百合は我ながら情けない・・・というか、非常に都合が良いと思ったのだ。
自己嫌悪に陥る千百合を他所に、幸村はあははとおかしそうに笑った。

「別に、自分勝手だとか考えないで良いと思うよ。」
「え、自分勝手でしょ。」
「もし仮に、丸井がそこに居て春日を頼める状況だったとしたら、丸井は千百合のことを都合が良いやつだななんて思わないよ。いつもの顔で良いよ、って色よい返事をくれて、それでお終い。それだけの話さ。」
「えー。」
「ふふふ。本当だよ、丸井にとってはその程度の話でしかない。」
「そりゃ丸井にとってはそうかもだけどさ。」
「良いんだよ、それで。都合が良いと判断するかどうかは、結局丸井の心持次第なんだから。」

誰かに矛盾した事を言われたりした時、人は何故立腹するのか。
それは、それを良しとするとその人に損が生じるからである。

その理屈でいうと、このケースで丸井は別に損をしたとは思わないだろう。
だから丸井は気なんて悪くするまいというのが幸村の推測だった。

「それはそれとして、話を戻すんだけれど。」
「ん?」
「世間的な意見は兎も角、俺にとっては千百合はこの世で一番一人にしちゃいけない女の子だから、気を付けてね。」
「・・・何にどう気を付けろって。」
「ふふっ!俺から離れないでね、って事だよ。」

千百合の左手にはうまい棒が4本入った袋。
右手はもう一度幸村に捕まえられて、夜のお祭り会場をサンダルで千百合は歩く。



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