この先を一緒に


「おっはよーっす!」
「おー!おはよー!」
「はよ。」

何時もの朝。
何時もの教室に、何時ものクラスメイト。

でも今日はちょっと違った。

「なあなあ!今日のHRの時間なんだけどさ!」
「?」
「なんか、作文だって!中学に上がった自分、ってタイトルで。」
「へー・・・」

基本的に作文だなんだは嫌いだけど、それはちょっと面白そう。書きやすそうだし。

「切原なんて書く?」
「此奴は決まってるだろ〜。」

「そりゃー勿論!立海大に彗星の様に現れた、スーパールーキーになる!」

皆がそれを聞いて笑った。

「ほらな?」
「言うと思った!」
「お前本当、そういうところはブレねえよなあ。」
「へへへっ!」

又それかよと言いつつ、皆実はちょっとこの友人を尊敬してたりもする。
切原はいつだって本気だ。
本気で学校決めて、本気で受験の準備して、夢に向かって爆走し続けている。

「つうわけで書く事も決まったし!」
「たし?」
「今日はテニススクール行く日だし!」
「だし?」
「寝っから、後よろしくな!」
「えええ!?」

そう言って、机に突っ伏すとあっという間におやすみモード。

子守唄は、クラスメイト達の談笑の声。

将来の夢を語る声・・・




「あれ?」

気がつくと、校門前。

制服。
ラケットバッグ。
鳴り響くチャイムに、自分を照らすオレンジの夕日。

今日も一日頑張った。
テストに備えて勉強教えて貰ったし、怖い部長の下で一生懸命テニスした。

でもなんだろう。
まだ何か足りない。

何か・・・

「・・・あっ!先輩!先輩、紀伊梨先輩!」

「うんっ?あー!切原君だー!」

ああ、そうだ。
そうだった、そうだった。
何忘れてたんだろう。

「すんません、遅くなっちゃって!」
「ううん!大丈夫だお!私も今終わったとこだし!」
「なら良かったっす!紀伊梨先輩も、練習大変っすね!」
「あ!うー・・・」
「?どうしたんすか?」
「いやー、そのー、練習じゃなくてー、」
「あれ?違うんすか?」
「練習はもっと早く終わってたんだけどね?ちょーっと、やれって言われてた課題を忘れてたって言うかー・・・」
「あ、俺もそれ偶にやるっすよ!」
「そお?」
「そうっす、そうっす!だからそんなに落ち込まなくて良いっすよ、」

「お前達2人は相変わらず反省の色が無いな。」

落ち着いた声が、刺して欲しくない所をとても容赦なく突き刺してくる。

「さ、参謀・・・」
「あーん、だってー!」
「そ、そうっすよそうっすよ!しょうがない事だって世の中にはあるじゃないっすか!」
「そーだそーだー!」
「確かにそうだが、お前達の言っている「しょうがない事」は、本当に「しょうがない事」なのか?」
「「う・・・」」
「そもそも、お前達がしょうがないという概念をちゃんと抱いているかが疑問だ。普段からテニスや音楽の事については、どんなに周りが無理と言っていても、2人して最後まで出来ると言い張っているのに。」
「「ぐ・・・!」」

その通りなので何も言えない。

「「・・・・・」」
「まあそれはそれとして、今は別に叱られるような事もしていない。早く行くと良い。」
「「え?」」
「これから2丁目のゲームセンターに行くんだろう。あそこのプリクラの新機種は並ぶから、今すぐ行かなければ門限ギリギリになる可能性86.34%だ。」
「マジっすかあ!?」

ヤバい。
門限に関してはこないだも怒られたから、今度やらかしたらお小遣い減らされる。

「ヤバいっすよ、紀伊梨先輩!行きましょ!」
「うおっ!?お、お、」

隣にあった手をサッと引いて走り出した。

自然に出来てるかな。ちょっと恥ずかしいのは、バレるともっと恥ずかしいから気づかれてないと良いんだけど。

「じゃー、俺達行くんで!お先っす!」
「又明日ねー!」
「ああ、転ぶなよ。」

校門をダッシュで出て、目指すは2丁目。
早くしないと。
ああもっと時間があれば良いのに。

「ねーねー!2丁目ってどっちだっけ!?」
「え!えーと、えーと、こっち!多分こっちっす、多分!」
「おっけー!」

間違ってたらどうしよう。
どうしようというか、先ず間違いなく間に合わない。

まあ。
でも、まあ。

「ねーねー、切原君!」
「はいっ?」
「もし迷子になっちゃったらー、そしたら、」

「そん時は、もっかい一緒に行きましょ!」

今日が駄目でも、明日は上手くいくかも。
明日も駄目でも、明後日でも、明々後日でも。

何度でも約束して、何度でもチャレンジしたら良いと思う。


この人と一緒だから。


「うん!私もそう言おーと思ってたんだー!」
「じゃあ、決まりっすね!今日駄目だったら、又次って事で!先輩、次空いてるの何時っすか?」
「えーとねー・・・




「おい!起きろ、1限が始まっとるんだぞ!」
「はいいっ!?は?え?あれ?」

クラスメイト達のクスクス笑いの中、顔を上げると目の前には般若のような担任の顔。

「ビビった、1限から行くのかと思ったぜ・・・」
「行く?何処へだ?」
「え、何処へって・・・あれ?」

そういえば何処だろう。
何処へ誰と行くつもりだったんだろう。

さっぱり思い出せない。

「まあ、お前の事だ。どうせ夢の世界だとかなんだとか言うんだろうが。」
「おっ!先生上手いこと言うっすね!」
「言っとる場合か!授業はちゃんと聞け!」
「えー!」

えー、と言いつつ、今はしょうがない。
夢の世界より行きたい場所があるんだから。


絶対絶対そこへ行って、エースになって青春を謳歌する。


(待ってろ、立海!)

切原赤也が来てやったぜ、と叫ぶ日を夢見て、切原は教科書を開くのだった。




(あ。)
(ん?)
(教科書忘れて来た・・・)
(廊下に立っとれ!)
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