最初のはなし


気がついたらそこに居た。
何かしらの過程があったわけではなく、本当に気がついたら、ここに居たのだ。
財布とスマホと家の鍵だけポケットに突っ込んで小腹がすいたからコンビニでなんかスイーツでも買おうと道を歩いていた、はずなのに私はすでにコンビニの前に着いていた。それも知らないコンビニだ。Sunday Martってどこのコンビニ…?初見だ。

ついに私は新しい能力でも手に入れてしまったのだろうか。
瞬間移動?
それとも記憶喪失?
いやもしかしたら知らなかっただけで近所に出来ていたのかもしれないSundayMart。
あれこれ思考を巡らせていたらお腹がなった。
とにかく目の前にあるコンビニでミルクティーと、それからシュークリームでも買おう。
忘れちゃいけない飴も。

▽▽▽

結果からいうと私はすこぶるついていなかった。
急に雨は降ってくるし、自転車に泥水をかけられるし、雨宿り出来そうなところはないし、先程のコンビニの傘は売り切れだし、あと何より寒かった。半袖にショートパンツという格好は7月下旬には何らおかしくないはず、だったのにチラホラすれ違った人たちはトレンチコートや長袖であれ?と思わざるを得なかった。
なにより

「さくら…?」

これである。
もう私の頭は停止寸前だった。