カルデア日記
気絶した。
カルデアに来て以来、何回もとんでもなく怖いことや泣きたいことはあったけど、なんだかんだ、寝る以外で意識を失ったのは初めてのことだ。
原因はステンノさん……いや、悪いのはあくまで私で彼女はなんら悪いことはしてないんだけど。
でも美しさは罪って、人を狂わせるっていうのであれば、一割とは言わないけど一分くらいはステンノさんのせいにしても……いやなんでもないです。
今、私はベットの上で日記を書いているんだけど、簡単に経緯を書いておこうと思う。
はじめに、私はステンノさんが召喚されて以降、一度も話したことがなかった。
改めて言葉にすると、私はほんとうに冷たいやつだなと痛感する。
基本的に私から話しかけられる相手はロビンフッドさんくらいだ。
話始めれば人並みに返せるくらいで……日本にいるときはこんなにひどくなかったんだけどな。
人見知りではあったし、美人やイケメンに気後れすることはあっても、ここまでの苦手意識はなかった。
それに、カルデアのスタッフさんの中には(私がこういうのも烏滸がましいけど)ふつうのひとだっている(顔の話で、もちろん凄いひとだ)。
そのひとにでさえ話しかけられないんだから、私の苦手意識って顔の美醜に関係ないのかもしれない。
幸いなのは、周囲のひとが私が人付き合いが苦手なことを察してくれていることだ。
おかげでなんとか務めを果たせているけれど、まあ情けないことこの上ない。
来たばかりのステンノさんも、私の事情を知ってか知らずか、特に私に構うことはなかった。
……なかったんだけど。
今日の昼間のことだ。
昼食が準備中とのことだったので、準備を手伝いますと申し出たのだけど、スタッフさんからやんわりと断られた。
まあ料理はあまりしたことがないので助かったっちゃ助かったけど、カルデアのひとたちは何かと私の世話を焼きたがるというか、なんというか……。
かなり年下なほうだから、子ども扱いされてるんだろうか。
とりあえず、お昼ご飯を待つ間、私は食堂の共用スペースのソファでサーヴァントに関する資料を呼んでいた。
ここからは、厨房から見ていたスタッフさんが見たことだ。
どこからともなく、ふらっと現れたステンノさんは、あまりにも自然に私の後ろに忍び寄ったかと思うと、そのまま背後から私の首に手を回したそうだ。
私はというと、突然鎖骨の辺りに真っ白な手が這わされて、驚いて振り返ってすぐそこに、なんと女神さまの御尊顔があるのだ。
しかも超至近距離。
辛うじて覚えているのは妖艶な藤色の輝きだけで、気がつくと夜になっていた。
自分の部屋で目を覚ましたので、一瞬夢かと思ったけど、あろうことかベッドサイドでマシュが眠っていたので、ちゃんと現実だとわかった。
あんな間近でひとの寝顔見るってないよ……びっくりした……。
どきどきしながらマシュを起こさないよう忍び足で部屋を出ると、廊下にジークフリートさんがいた。
目を瞑ったまま廊下に背を預けていたジークフリートさんは、ちらっと私に目を向けてから、あっという間に姿を消してしまった。
突然の美形に及び腰でそれを見送ったあと、私は水を求めてキッチンに行った。
水を飲んでから部屋に戻ったとき、部屋に残してたマシュが私の部屋を飛び出してきたところだった。
起きたら私が居なくなってて驚いた、と怒られた。
ごめんなさい。
今日……もう昨日かな、あった事の顛末はこんな感じだ。
マシュはもう自分の部屋に帰っている。
お昼にがっつり寝てしまったせいか全然寝付けなくてせっかくだしってことで眺めの日記をつけてたけど、書いてるうちに眠くなってきた。
おやすみ。
微笑み
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