4/7
今日は新クラスになって、初の登校日だ。
一番の友人とはクラスが離れてしまったが、同じ中学の知り合いが何人かいるので、彼女らの誰かと仲良くしようと思う。
始業よりも20分ほど前に着いた。教室の横開きのドアをスライドして入る。クラスの机はまだほとんど埋まっていなかった。まあこの時間なら妥当なところだろう。自分の席を確認するためにくるりと教室を見渡すと、平和島君がいた。しかも目があった。
私の脳裏にクラス発表の日の映像が再生された。
『――……おう』
「……っ」
頭を抱えてうずくまりたい衝動をぐくっと抑えた。
あの時の胸のときめきは一時の気の迷いにしても、これ以上失態を重ねるわけにはいかない。不興を買うわけにもいかない。
リュックを抱えなおして、気を取り直し、自分の席へ歩いていく。平和島くんの席に、近づいていく。彼は私が教室に入って来た時から、ずっと目を離さない。見定めるように、私を見ている。
私はこわばった表情を無理やり笑顔に変えた。
「お、はよう。平和島君」
「……はよ」
それだけだった。それだけ言って平和島君は、ふい、と顔を背けた。
は、はああああああ――〜〜……!
自分の席について、バックを下して、心中で大きくため息を吐いた。本当は机に突っ伏したかったけれど、あからさますぎるので耐えた。
挨拶だけで心臓がバクバクなっている。ときめきではない。断じてそんなものではない。これは恐怖だ。平和島静雄という個体に対しての、純粋な恐怖。
こわかったあああ……! 機嫌損ねなかったかな、大丈夫だったかな?
ちらりと後ろから二番目の席から、三列前の席の平和島君を盗み見た。何をするでもなく、ぼーっと天井を見上げている。
何を見ているんだろう、と彼に釣られて上を見上げるが、何もない。
もう一度平和島君に視線を戻した。彼は私が最初に見たときのまま動いていなかった。
……何を考えているんだろう。
平和島君はとても普通とは言えない、はっきりいって異常だ。私と同じ人間であるかどうかすら疑わしいと思っている。失礼な話だけれど、私のようなごく普通な一般人からしたら、平和島君も、そんな彼と平然と殺し合いをする折原君も、あの犬猿双方とつるむ岸谷君や門田君も非人間的に見えるのだ。
ともかく、何故だかわからないが、平和島君のことが気にならないと言えば嘘だった。
校外校内の輩を容赦なく叩きのめし、公共物を次々と破壊し、周囲を巻き込み、涙と血の雨を降らせる男が、彼に衝突するという(彼にとっては)万死に値するような行為をした私を無傷で許すばかりか気遣うように私の手を取るなんて。
何を考えているんだろう。
再度平和島君を窺がって、私はとうとう机に突っ伏した。