「私をナワーブだと思って渡してみてよ」
「えぇ〜〜〜…」
「ほらほら、早く」
「ナワーブさんの為に一生懸命作りました♡特別愛情たっぷりです♡♡」
「完璧だね。本番いこっか」
「バカバカバカバカ冗談に決まってんじゃん!!!!!」
「大丈夫。そのままいこう」
「何も大丈夫じゃないですよ!!!いけないいけない!」
「何を騒いでるんだ?」
クッキーも冷めてきた頃、未だにキッチンで続いていた押し問答が第三者によって中断された。午後一のゲームに参加していた筈のルカだった。
「あれ、ルカさん、ゲーム終わったんですか?」
「さっき終わったところだ。残念ながら私は途中退場してしまったもんでね、お先にエネルギー補給にきたのさ。…ところで、この大量にあるクッキーは…?」
「あっ!よかったら食べてください。特に〜…コレ!」
「ふむ、手袋の形だ」
「ルカさんのこと、すっごい考えて作りました。機械は難しいし、首輪?は嫌かなぁとかって…ルカさんのこと考えて一日終わるかと思った」
「そりゃ嬉しいな。君さえ良ければ一日中考えてくれててもいいんだぜ」
「じゃあ今日はルカさんのこと考えながら寝るね」
「君、他の人にはそういう事スラスラ言えるのに」
「全くだ」
ツグミが言った冗談に対して漏らした言葉に、思い掛けない反応があった。私たちの言葉の意味するところが分からないのか、ツグミは「え?」と口を開けている。
ルカが楽しそうにクッキーを囓った。
「他の人…どうやら、イライ君は彼女の事情を知ってる様だね?」
「ということは、ルカさんも知ってるわけだ」
「ああ。知ってるのは私だけかと思ってたよ」
「先程、少し視てしまったもので」
「? 何を視たんだい?」
「ツグミがね、彼に向けて特別に作ったものがあるのさ。それを隠していたんだけど、」
「イライさんんんん!!!!」
「何だ、知っているんだから勿体ぶらなくてもいいだろう」
私の服を引っ張りながら怒るツグミを、ルカが面白がった。特別なものは何だと急かすルカは、ツグミの手元にあったハートのクッキーを見てますます口角を上げた。
「成る程ね」
「ちがう!これは誰にもあげないですもん!」
「君、もう少し勇気を出してもバチは当たらないぜ。このクッキーのお礼に、君の口が彼の前でも上手く回るよう祈ってあげよう」
「だから、」
ツグミの言葉を最後まで聞くことなくルカは扉の向こうへと去っていった。