夜光列車


「いつも君は急だね」

 くすくすとあきらさんは可愛く笑うものだから、私はむっとしてそんなことないです、と叫んだ。「ごめんね、なまえちゃんがそんな事言うなんて思わなかったから」と、動かしていたシャープペンをとめて私に改めて向き合う。

「それは、私のお嫁さんになってくれる……ということでいいの?」

 ローテーブルに片頬へ頬杖をついて、あきらさんは意地悪いような、優しいような、微笑みを私に向けた。その拍子にさらりと髪は揺れて、胸に輝いたネックレスのプレートは部屋の明かりを反射して煌めいた。それがまるであきらさんの輝きのようで、私はあまりの綺麗さと恥ずかしさで顔が赤くなる。
「そ、そういうことに…なるんでしょうか」
「あはは、急に敬語になっちゃった。…そうだなあ、もしなまえちゃんが私の奥さんになったら、みくは喜ぶだろうなあ。お姉ちゃんが増えた、なんて」
 あきらさんはそういうと、目を伏せて教科書をペラペラと捲りながら、私とあきらさん二人のもしもの生活について思いを馳せるように言葉を紡いでいる。
「なまえちゃんと暮らしたら、きっと楽しいだろうね。いつも君といると飽きないから」
 すごく、愉しそうに、本当に数ヵ月後に引っ越すかのように話すものだから、そんな気になってしまったけれど空想だということを思い出して、楽しみな気持ちを振りはらう。「なんだか、自分で言いだしたのに恥ずかしいな」私がそれを誤魔化すように宿題にてを戻そうとシャープペンを握ると、「すごい、プロポーズ……みたいだった」と、あきらさんがほんのり頬を染めていうから愛おしさが胸を殴るように高まる。
「で、でもね、お墓に入りたいのは本当だからね」
「うん…わかってるよ」

 また少し笑ってから宿題にてを戻る。いつかちゃんももっと、思いつきじゃなくてしっかりプロポーズできるようにならないとな、とぼんやり考えながら、難しい数式を解いていく。

20171126