元クラスメイト


 雷門生まれ雷門育ち。雷門中学に入学して、陸上をやったけどすぐ体力の限界に当たって退部。サッカー部にあこがれたものの、二年の夏脚を骨折し1ヶ月入院して夏休みがなくなったしサッカー部に入ることを止められた。高校は近所の程々の所に行って、彼女もできたけどなんか気付いたらフラれてしまった。卒業したら実家から少し離れた場所の中流企業に就職して、程々に仕事をこなせるようになって、その頃にはスーツも着慣れてくる。こ一人暮らしをすると寂しくてペットを飼いたくなる、とか彼女が欲しくなる、とか聞いたけど本当に欲しくなるとは思ってなかった高校時代。成人の誕生日を迎えてからすぐに飲酒デビューをして、調子に乗って派手に友人との飲みの席でげろをぶちかました。

 そんなような人生を歩んでた二十年目、成人式の後、二月くらいかそれよりもっとあとか。中一の時のクラスメイトで同窓会をやるから、と誘われてふーんまあ行ってやるか、という軽い気持ちで出席すると、見慣れた顔が俺を出迎えて「うわ」という声が漏れてしまった。もう同窓会は始まっており、酔い始めた奴らもチラホラといる。
「何飲む?」
「うーんとりあえず生」
 クラスメイトの一人に注文を聞かれてそう答えると、テキパキと注文してくれ、俺は空いていた空間の座布団に腰を下ろした。

「あれっ」

 聞き覚えのある、あれっ、という声に右を向くと、クラスメイトだった音無…が居た。初恋の相手……だった女子。驚いた拍子に低い机の足に脛ぶつけて「いって」とうめき声をあげると、音無は「だ、大丈夫?」とこえをかけてきた。
「えっと……みょうじくん、だったわよね。久しぶり、五年ぶりくらいかしら」
「あ、ああ、うん。高校は違うところにいったもんな」
「そうねえ」
 音無はウーロン茶を飲みながら、枝豆をつまんではほかの出席者の声に耳を傾けたり、話に参加したりしはじめたから、俺は運ばれたビールをぐいっと煽った。苦いけど最近それがいいことが分かってきた、用な気がして、少し背伸びをしてビールを飲む。昔馴染みの同級生やらが近況を報告する中、俺も枝豆をつまんだ。
「そう言えば」
「ん?」
「みょうじくんは今どこに勤めてるの?サラリーマン……とか?」
「うん、普通のサラリーマンになったよ…音無は?」
「私?私は雷門中の教師になったの」
「教師?すごいな」
「新任だけどね、いまはサッカー部の顧問してるわ」
「へえ、サッカー好きだったもんな」
 そういうと「よく覚えてたわね、そうなの」と言って、今度は運ばれてきた料理の方に箸を伸ばした。
「私…サッカーが、好きだったんだけどね」
「え?」
「いや……ううん、なんでもない」
「……そうか?」
「うん、ごめん……あ、何飲む?」
「うーん、もう俺はいいや」