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ジャンル不問で思い付いた小ネタを徒然と。

▼細君は貞女
「元就様、宜しいでしょうか?」
「斯様な夜半に何用だ。我は寝る。」
「………御疲れに御座いますか?」
「四六時中貴様の様な者が傍に居って疲れぬ者が居るならば見てみたいわ。」
「伊予の巫女様は楽しいと仰有ってくださいました。」
「あれは数には入らぬ。用がないなら我は寝る。貴様に割く時間など一刻と持ち合わせて居らぬ。」
「用ならば御座います、元就様。」
「手短に済ませよ。」
「子作り致しましょう、元就様。」
「寝る。」
「元就様!」
「ええい、黙れ!我は寝る!邪魔をするでない!」
「いいえ、いいえ!今宵こそは逃がしませぬぞ、元就様!」
「何をしておる!?女が夜這いなど、貴様恥を知れ!」
「何を仰有いますか!私めが恥を忍んで夜這いますのは元就様のせいに御座ります!」
「な?!我を愚弄するか?!」
「ええ、ええ!愚弄致しまする!御寵愛の側室が居るのならば構いませぬが、元就様は他に室をとらぬではありませぬか!御自身の御立場を御考えくださいまし!」
「一人で斯様に姦しいというのに室など他に要らぬわ!」
「側室をとれと申しているのではありませぬ!要るのは御世継ぎで御座ります!」
「世継ぎなどまだ要らぬ!毛利の安泰の為、中国平定を志す今、そんなものにかまけておる時間はまだ無い!」
「それが天下の知将の御考えとあらば益々愚弄のし甲斐が御座ると言うもの!」
「何だと?!」
「安芸を平定し、時世穏やかな今であるからこそ御世継ぎが必要なのではありませぬか!中国平定の傍に御世継ぎを置き、策や政を教えていけば、老いてから口で説くより遥かに優秀な御世継ぎになりまする!」
「……くっ、」
「宜しいですか元就様!元就様が中国を平定し毛利を安泰させたとしても御世継ぎが居らねば、居たとて腑抜けでは毛利はまた乱世に放り込まれまする!待っているだけでは御世継ぎなど生まれぬのですよ!!」
「…………」
「聞いておいでですか元就様!」
「…………」
「元就様!」
「…………」
「……元就様?」
「…………」
「…………」
「…………」
「……?……、……まあ!まあ!何て卑怯な!狸寝入りなのは解っておりますよ!元就様!元就様っ!!!」

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甲斐性なしの元就と勝ち気で賢い正室の子作り騒動、笑い多め。タイトルの細君は「ほそぎみ」読みで奥様は魔女的に(笑)

2021/08/14


▼ドッペルゲンガー(pkmnトリップ)
「やあ、こんにちは、私。」
そんな声に振り返ると、視界がぐにゃりと歪んみアスファルトの足元が低反発素材みたいに凹んだ。何、と思った時には既に、辺りは真っ暗なのに私の存在だけがはっきりと見える気味の悪い空間に独りぼっち。
「何、ここ…」
「いらっしゃい、私。」
「…誰!?」
聞き覚えのある様な声に辺りを見渡すけれど誰も見えない。いない。例え難い恐怖と不安に襲われて方を抱いた。
「大丈夫、危害は加えない。これから君と私を入れ換える。所謂異世界トリップという奴だ。」
「な…!?」
「夢見がちな君なら馴染みがあるだろう?でもごめんね、私は神様とかそう言う精神学的なものじゃあない。」
その声と共に眼前の闇が歪む。屋根に積もった雪が落ちる様に黒が削がれて其処に現れたのは信じ難い生き物。
「わ…たし…」
「そう、私は君。君は私。異なる空間軸に同時に存在している同じ個体、ドッペルゲンガーと言えば解るかい?」
目の前の私はにやりと口角を上げて笑う。鏡に映った様に相違ない姿に寸分違わない声色に背筋が凍る。
「ドッペルゲンガー…?」
「そう。私はちょっとした任を担う一族に産まれてしまって、何の因果かひょんな事から君の居る空間軸を知って憧れてしまった。」
「…はぁ、」
「宇宙について学びたい。ある一族の私では出来ないんだ。代々決まった仕事がある。そこのところ君はこれから幾らでも可能性を広げられる職にいる!」
「高校生が?」
「そう。だけど見たところ君は勉強か嫌でチャンスをみすみす逃しているじゃないか。」
もう1人の私は滔々と語り、不服そうに顔を歪めて最後にこう言った。
「だから換えよう、私達の中身を!それぞれの記憶は共有して意識と思考と人格を!」
「えぇ?!そんなの…!」
「出来る!だから君を此処に呼んだ!」
「でも…!!」
「大丈夫!私の世界は君の世界と同等に平和で同等の文明がある!それじゃあ私の世界を宜しく!!」
「えっ!?ちょっ!まっ…!!」
手を延ばそうとしたけれど、もう1人の私に強く突き飛ばされて、視界がぐにゃり、また揺れる。ばっくりと口を開いたように足場が無くなり全身に重力が掛かって落下した。
落ちる、と目を瞑ったが直後に何の衝撃もなく落下が止まり、ほぼ強制的に瞼が開かれる。
目の前に広がったのは、紅に黄色に橙に、葉を色付けだ樹木をの間にその落葉を足元に敷き詰めた小路とその先に悠然と聳え立つ純和風の塔だった。

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その世界のモブとの入れ替わりトリップがあっても面白いんじゃないかしら、と。もう1人の私とは何かしらの手段で交信が出来る予定で御座います。
ちなみにマツバさんと色々ある御話のつもりです、出て来ておりませんが(笑)

2015/06/12


▼不燃草(pkmn/オーバ)
「くっそ、お前フザケんなよ!!」
「私は至って真面目だ!」
「何が真面目だ畜生!!くさポケモン使いとか嘘じゃねぇか!」
「何処が嘘だってんだ!ドダイトス、ルンパッパ、トロピウス、キノガッサ、芝刈り機ロトム、ナッシー!みんなくさタイプだ!!」
「純粋なのいねーじゃん!!しかも大体じめんかいわ技覚えてるし!!」
「弱点対策はして当たり前だろ!!見苦しいぞ、四天王のくせに!」
「納得いくか、こんな勝負!」
「はん!弱さを認めろオーバ!貴様は得意タイプ相手にも勝てない程度であることをな!!」
「お前の手持ちが俺の得意タイプだなんてゼッテー認めねぇよ!」

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草タイプマニアの天才戦略家にオーバが燃え尽きるバトルが出来ないし何度やっても勝てない話。

2015/05/27


▼花嫁修業雷撃篇(戦国/伊達軍)
「例え小十郎様の御命令でも嫌な物は嫌で御座います。」
「そこを何とかだな、」
頼む、と頭を下げたところで娘はつん、とそっぽを向いてしまった。さても困った、と小十郎は頭を抱える。
彼女は小十郎が自家菜園で使う苗や種の仕入れ、野菜の出荷を頼んでいる商家の娘。勝ち気で頑固、ぴんと伸びた背筋にかっちりとまとめた黒髪、きりりと吊り上がった杏仁形の眼も凛々しく男勝りな、城下でも「可愛げが無い」と有名な娘である。
そんな商家の小娘が武家のしかも国主の腹心相手に何を嫌がっているのかと言うと問題はその国主にあった。
先日気紛れで小十郎の畑に訪れていた国主が、野菜の集荷に来ていたのに畑の状態が悪いからと着物を捲り上げ、手伝いの兵士を押し退けて畑弄りを始めた娘の非凡具合を甚く気に入った事が発端である。
「室にするから連れて来い」と言われた時には胃の腑に穴が空く所か抜け落ちるのではないか思うほど腹が痛んだ。彼女が如何に御し難く扱い難い女であるかは仕事を同じくする小十郎が一番知っている。あれだけは御止め下され、とその欠点を上げれば上げるだけ主君は興味を持って「暴れ馬なら尚更良い馬だ。乗り熟すのも手懐けるのも面白い上、主と認めさせれば従順だろ。」と。本当の馬ならそうやもしれぬが、相手は人で女、そう易々とはいくまいと何度言っても聞いてはもらえず、泣く泣くこうして交渉に来た訳だが案の定。奥州伊達の当主が直々に室にと腕を広げて居れば、大概の娘は諸手を上げてその胸へと飛び込むだろうに、頑固娘は所詮頑固娘であった。

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小十郎がストレスと戦いながら抵抗する町娘を武家の嫁に仕立てつつ、娘にベタ惚れの政宗があの手この手で娘を絆していく話(笑)熱血篇よりギャグ強め。

2015/05/24


▼不幸福論(戦国/黒田)
「黒田様、黒田様、金平糖を召し上がりませんか?」
「金平糖?そんな貴重な代物、何処で手に入れたってんだ。」
「菓子屋の籤引きで。特等ですって。」
「何ぃ!?特等だと?!お前さん、この間もそんな事を言ってなかったか?」
「家財屋さんで当たった桐箪笥は食べられません。」
「いやいや、そうじゃなくてだな…。全く、お前さんは随分と幸運なんだな。」
「そうでしょうか?」
「ああ、ああ、そうともさ。持ってる奴には分からないモンだよ、運なんてな。お前さんの爪の垢でも煎じて呑めば小生の不運もちったぁ良くなる気がするぜ。」
「不運?」
「お前さんには縁遠いだろうな。籤引きゃ外れ、神籤は大凶、外を歩きゃ犬に噛まれる。附きなんざちっとも回っちゃこねぇ。全く嫌になるぜ。」
「まあ、そんな。」
「お前さんも小生といたら折角持って生まれた幸運がなくなっちまうぜ。」
「それは違います。」
「ん?そりゃどう言う意味だ?」
「私は黒田様の言う不運とは何か分かりませんが、私は黒田様が隣に居られましたら何が起きたって幸せですから、不運になんてなりませんよ。」
「なっ!?」
「さあさ、金平糖をお召し上がりくださいまし。特等でしたから沢山御座いますよ。」

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在り来たり(笑)

2015/05/16


▼風、風、吹くな(JoJo2/シーザー)
沢山なんていらなかった。
歪んでも真っ直ぐのあなたに惚れ込んで、その心を守りたくて、その優しさに触れて、手を取り合って、喧嘩して、笑い合って、反発して、愛し合って、幸せになって、隣で一緒に過ごせればそれで良かったのに、それだけなのに。
その言葉を信じていたのに、その帰りを待っているのに、割れてしまったシャボン玉は風に消えて、その破片ですら戻ってきてはくれなかった。

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シーザー誕生日の記念に。

2015/05/13

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