劇薬
「ハロー、タイクーン。」
「また来たか!君も中々飽きない奴だな!」
「飽きてはいますが、他で挑戦する宛がないもので。」
「成る程。それはまた君らしい。……宛がないならイッシュに行ってみるのも手だぞ。」
「イッシュ?」
「バトルキャッスルを仕切っていたカトレアがイッシュに戻ったのは知ってるだろ?彼女から来た手紙によると、イッシュ地方にはバトルサブウェイと言うのがあるらしいぞ。」
「……へぇ。じゃあタイクーン、貴方に勝ってからイッシュに行こうかな。」
「よし!では全力で闘おう!タワータイクーンとして!」
口角を上げてそう誘えば、タイクーンは相変わらずの熱血で声を張って返した。
*****
「退屈。詰まんない。」
「クダリ、今はデスクワークに専念してくださいまし。」
「飽きた!最近、サブウェイにも手強い挑戦者来ない!」
「御客様に文句を付けるとは何事ですか、クダリ!」
「わー!ノボリ怒ったーっ!!逃げろー!!」
「御待ちなさいクダリ!」
怒鳴りながら立ち上がったノボリからぼくは走って逃げる。
管制室から階段を下りて外に出る。ホームに繋がる丸い広場に出た。でも此処は見つかる。それだと捕まる。ぼくはダブルトレインのホームの景品交換口に逃げ込んだ。
今日は月に一度のバトルサブウェイ御休みの日。広場にもホームにも誰もいない。普通のサブウェイは動いてるけど、サブウェイ使う人少ないから誰もいない。だから景品交換口にも誰もいない。隠れるのには丁度良い。
遠くでノボリの怒鳴り声が聞こえてぼくは声を殺して笑う。見付かるかな?なんだかドキドキ。見付からなかったら、このまま抜け出してサボっちゃお。紙と睨めっこは、ぼく苦手。ノボリの御説教も長いから苦手。
じっと隠れてると、その内ノボリの声は聞こえなくなった。やった、巧く巻いた!ぼくはそろそろと広場に戻ってサブウェイの出口に向かう。
長い階段。スキップしながら上る。
「ハロー、アテンダント。」
「え?」
突然、知らない声が振ってきた。見上げると、上の段に誰か立ってる。逆光に浮かぶ小柄なシルエット。多分女の子。だけど似合わない。あの子が持ってる空気 女の子に似合わない。溢れる自信、戦意、それから強者が纏う独特の雰囲気。そして何より、退屈を持て余して刺激を求める目。
ぼくはその子から目が離せなかった。
「誰?」
「当方しがないチャレンジャー。此処の噂を聞いてシンオウ地方からやってきました。」
「あのね、バトルサブウェイ、今日御休み。」
「あら。それは残念。じゃあ明日出直します。有り難う、アテンダント。」
どんな子かな?どんなポケモンを使うのかな?どんな組み合わせを使うのかな?どんなバトルをするのかな?どんな技を覚えさせてるのかな?道具は何をもたせてるのかな?何しに来たのかな?挑戦者かな?
気持ちが先に行って、つい、その子の事を聞いた。その子ははっきりとチャレンジャーと言った。サブウェイが休みだとぼくが言うとあっさりと踵を返す。
「待って。」
待って。まだ、ぼくは君の事が知りたい!ぼくはその子を呼び止めた。
バトルサブウェイに挑戦しに来たなら何れはバトル出来ると思う。あの子はきっと、ううん、絶対強い。スーパーダブルのぼくの所まで来る。絶対。だけど、ぼく それまで待てない。ぼくは“今”退屈だから。“今”バトルしたい!
「何ですか?アテンダント?」
「ぼく クダリ。サブウェイマスターをしてる。」
「あら、じゃあアテンダントじゃなくてマスター?」
「うん。ねえ、バトルポイントはあげられないけど、バトルしない?」
「当方は一向に構いませんが…マスター、貴方は良いんですか?」
「ホントは駄目。今勤務時間中だから。ノボリに怒られる。だけど、今 君とバトルしたい。ぼく、色んな人とバトルしたいから!」
その子は少し驚いてぼくを見た。だけど、直ぐに口の端っこを持ち上げて笑う。
「そう言う事なら御相手させていただきます。当方も貴方の考えに賛成ですから。」
「ありがと。ぼく ダブルバトルが好き。ダブルバトルでも良い?」
「勿論です。」
「ふふ、楽しみ!」
思わずぼくも笑顔になった。こんな事言うとノボリに「貴方は何時も笑顔でしょう」とか言われそう。でも楽しい!久し振りにワクワクする!
ぼくとその子は階段を上って町に出る。サブウェイの前の広い場所。そこでぼくらは向き合った。
「じゃあ、すっごいバトル、始める!」
「望むところです。」
きみの纏う空気が
ぼくに似てたから
退屈なぼくの前で
退屈そうなきみは
最高の劇薬なんだ
「ねえ、ぼくが勝ったら付き合って!」
「なんて古い手口!!だが、面白い!」
fin!
後書き
PkMn強化したいです。
冒頭のタイクーンはクロツグさんの予定ですが…難しいですね。
取り敢えず、クダリさんをべたべたに甘やかしたいです(笑)
20111004
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