解読時間25秒
黒の隊服はその細身をより細く見せ、端整な容姿は爽やかな印象を与える。
それが私の所属する一番隊の隊長様。
「沖田隊長ー。副長が呼んでますよー。」
「めんどくせェな。シイカ、ちょっと土方さんトコ行って、野郎の事殺してこいや。」
「何故そうなるっ?!!呼ばれただけで殺してこいとか、アンタ何処まで副長嫌ってんですかっ?!!!」
だが、性格は爽やかのSの字しか合ってないような人だったりする。
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「うるせぇなァ、隊長命令だ。さっさと殺ってきなせェ。」
「無理に決まってるじゃないですか!!何その理不尽な職権乱用!!」
「ちぇー。」
かったるそうな沖田隊長の言葉に私は下がった眼鏡を上げた。
汚職事件で訴えるぞ、コノヤロー。
「ちぇー、じゃありませんよ。早く行ってください。」
「嫌でィ。」
「いや、嫌とか良いとかじゃないですから。隊士として行かなきゃいけない義務がありますから。」
「シイカはコンタクトにしないんですかィ?」
「悪びれもなく話を逸らすな!」
私の主張を清々しい位に無視して沖田隊長は私の顔を覗き込む。ぱっちりした目に沿う長い睫毛が何度か屡叩かれた。
畜生、美形めが……!
不覚にもドキドキするじゃないか……!!
「しませんよ。」
上体だけ、ぐっと引いて私は答えた。
顔が近いんです、沖田隊長。
「て言うか早く副長んトコ行ってくださいよ。」
「へぇー…、何でですかィ?」
「また逸らされた!!?」
折角軌道修正したのに!!この人は人の苦労を水泡にして……!!
「いいじゃないですかっ!!!眼鏡の何が悪いんですかっ!!つーかいい加減副長んトコ行ってくださいっ!!」
「いや、悪かねぇですよ。年頃の娘っ子にしちゃあに珍しいなーと思いやして。」
「放っといてください。つーか後半聞いてました?聞いてませんよね?絶対聞いてませんよね?」
何だコレ?沖田総悟の耳は都合の悪い事は聞こえないのか?
何て言う現象だコレ?
私がそんな疑問を浮かべてる事なんて毛程も感じていないだろう沖田隊長はそのまま話を続けた。
「悪い事ァねぇんですか、強いて言うなら万事屋の眼鏡とキャラが被ってまさァ。全てにおいて。」
「全てにおいてっ?!そんな事ありません!!私の方がしっかり個性持ってます!!あんなアイドルオタクしか個がないダメガネと一緒にしないでください!!」
「何気に酷ェ事言いやすね、シイカ。ですがそーゆートコ良く似てますぜ。」
「そーゆートコってどーゆートコですか?!直します!!何が何でも直しますから教えてください!!」
万事屋の眼鏡ってあの志村新八だろ?!それだけはマジで御免だ!!
本気と書いてマジでだっ!!
え?何?副長が沖田隊長を呼んでる事はどうしたって?
そんなん二の次です。
私があの志村新八と似ている事の方が問題ですから!問えば、隊長は「そうですねィ…」と視線を空に遣ってから、人差し指を立てる。
「その1。その恐ろしい迄に条件反射なツッコミ。」
「そ、それは沖田隊長がボケるから……」
「話は最後まで聞きなせェ。その2。眼鏡。」
「目が悪いんですから仕方ないじゃないですかっ!!」
「話は最後まで聞けってんでさァ。その3。その眼鏡を取ったら誰だか分からない。つまり、山崎張りの地味さを持つ。」
「や、山崎さんよりは個性強いですよ!私!!」
「でも、それって9割9分7厘ツッコミじゃありやせんか?」
「うぅ……!!………って7厘っ?!!何ですかそのあるみたいでないみたいな微妙な数字!!」
「ホレ、今のもそっくりでさァ。」
「!!?…はっ、嵌められた……!!」
肘をついてニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる沖田隊長に殺意が湧いた。
……く、くそぅ、何かスゲェ悔しいんですけど!!腹立つんですけど!!
尚も嫌な笑みを浮かべ続ける沖田隊長は更にこんな事を言い出した。
「実はシイカも何だ彼だ言ってジャニオタとかじゃねぇんですかィ?」
「それは違います!!誰がジャ●ーズなんて風が吹いたら飛んできそうな男を好きなもんですか!!私は舘ひ●しみたいなクールでダンディーな大人の男が好みです!」
「へェ。身近で言えばとっつぁんみたいな?」
「違う!アレただのオッサン!!まぁ、ダンディー気取ってみたけど、その大半は声が占めてるだけで、実際はその辺にいるただのオッサン!!」
「略してマダオですかィ?長過ぎるのは頂けやせんぜ。」
「そうですか?……ってそこ問題じゃない!!」
「はい、ノリツッコミー。何が何でも直すんじゃなかったんですかィ?」
「うぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
頭を抱える私にまた嫌な笑みを浮かる、沖田隊長は至極楽しそうで余計に腹が立つ。
「まぁ、確かに舘ひろ●は渋くてカッコいいとは思いやすが、舘●ろしねぇ………」
小難しげな声に頭を上げると珍しく隊長が眉間に皺を寄せて何か考えてる風だった。
「何ですか?私を志村新八に例えるだけじゃあきたらず、私の好みにさえケチ付けるんですか?」
きっ、と少し睨み付けるように見れば、肩を竦めて隊長は言う。
「理想が高すぎでィ。もっと身近に理想を掲げなせェ。」
「えー……」
何を言うかと思えば。
でもそんなこと言われたって私の理想は●ひろしな訳で、そんなナイスミドルは身近にいない。
「いませんよ。大体身近にいたら理想じゃないじゃないですか。」
「クールでダンディーじゃなくてもクールとダンディーのどっちか持ってる奴ならいるだろィ。」
「クールかダンディーですかー……うーん。そうですねー。クールって点で副長?」
首を傾げて答えれば、見て分かるくらい隊長の機嫌が悪くなった。やっぱ副長を例えに出したのはまずかったかな?
「シイカ、アンタ眼鏡の度数狂ってんじゃねぇですかィ?」
「失礼なっ!私、眼鏡無いと明日どころか今日すら見えないんですから、度数はピッタリですっ!」
「訳分かんねェよ。やっぱシイカ、アンタ、コンタクトにするべきですぜ。」
「嫌です。」
「何で?」
「だってお金掛かるじゃないですか。」
「その眼鏡のレンズぶち抜いて目に入れりゃいいじゃねぇかィ。」
「大きさ考えてますか?!!目玉よりでかいんですよ、眼鏡のレンズって!!」
相変わらず機嫌悪そうな隊長に言い返せば、急にふいっとそっぽを向く。
何、この人。いきなり駄々っ子モード?拗ねた?拗ねたのか?うわ、メンドクサイからやめてくれ!!
「沖田隊長ー。拗ねないでくださいよー。」
これ以上機嫌を損ねると後々非常にメンドクサイ事になりそうだから、取り敢えず御機嫌取りに掛かった。
「拗ねてなんかねェやィ。」
………拗ねてんじゃん。
そう思ったけど口には出さない私は大人だと思う。うん。少なくとも志村新八よりはっ!(まだ拘る)
「副長を例えにしたのは私が悪かったですからー。」
「………そんなんじゃねェよ。」
「え?何ですか?聞こえな……?!」
ぐいっ、
ぼそりと呟かれた声を聞き返せば、素早く眼鏡を取り上げられ、引き寄せられた。
………………。
尋常じゃない位近いんですけど。
カラの頭が真っ白なんですけど。
やたらと息が苦しいんですけど。
唇に何かあたってるんですけど。
……………。
少しして、やっと隊長の顔がぼやけだした。
「………………?」
「すげぇアホ面。」
疑問符を浮かべてると、嘲笑う様なイイ笑顔を浮かべる隊長。
「…っなっ?!!アホ面って……!!」
「まぁ、いいや。ごちそーさんでした。」
「………………あっ!」
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ニヤリと笑った君の顔でやっと全てを理解した。
「!!!い、いいいいいいいいい今、きっ、きききききききき………っ!!!?」
「はぁ?何が言いたいんでィ?」
「だっ、だから………っ!!き………っ!!!!!!」
「日が暮れちまうや。取り敢えず一緒に土方さんに叱られに行きやすよ。」
「………!!!」
fin.
20080821
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ballad
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