風邪っぴきと有効治療


「ふぇ……ふぁ……ひ……ひ、……ぶぁっくしょい!!!あ゙ーっ、ちきしょーめっ!!!
「…………シイカちゃん。銀さん、もうちょっと可愛いくしゃみ期待してたんだけど。」

風邪っぴきと有効治療

「俺のピュアな期待、どうしてくれんだコノヤロー!!」

俺は眼前で鼻をかむシイカに主張した。
っても、例の椅子にだらしなーく腰掛けて、ジャンプを広げながらだけど。

「知らないし、そんなん。」

ずずーっっ

「あ゙ー、息苦し。」

シイカは俺を軽くあしらい鼻を啜る。

「何処のサラリーマンですか、アンタ。」
「誰がリーマンだ、ゴルァ!!うら若き乙女になんてこt…ぅお゙ぇっぐし!!!
どの辺うら若いっ?!完全なるオッサンだよっ!!!つか何、“ぅお゙ぇっぐし”って!!?どうやって発音してんだよっ!!!!」

何この娘っ!!
可愛い顔して、中身オッサンじゃんっ!!いや、知ってたけどもっ!!俺んとこで働き始めた時、スゲーがっかりしたけどもっ!!
初対面のときめき返せコノヤローっ!!!

心中でぼやくも、初対面のときめきは嘘じゃなく、絶賛片想いのベタ惚れ中だけども。何があっても絶対言わねぇ!!惚れさせてやるから。
アレ?俺何1人で言ってんの?
四の五の考えてると、シイカは赤い鼻をぐしぐし言わせながら俺を見た。

「うるざいなー。鼻づまっで、だだでざえ゙じごうがいろまわ゙んないんだがら゙やだらながいづっごみじないでよ゙。」
取り敢えず鼻かめっ!!読み辛いっ!!

近場にあったティッシュボックスを鷲掴み、俺はシイカに投げ付けた。

べしっ!!

「でっ?!」
「もう悲鳴が駄目だよ。“でっ?!”はないよ。乙女失格だよ。」

溜め息を付く俺を尻目にシイカは投げ付けられたティッシュで盛大に鼻をかむ。

ぢーんっ!!!
その壮絶な音にはいっそ清々しささえ感じました……アレ?作文?

「恥じらいとか躊躇い持てよ。フツー、女子って授業中、何か恥ずかしそうに小さくやるじゃん。なのに何、お前。ぢーんって。恥じらいどころか躊躇ってさえいねーじゃん。」
「(ずずっ)だぁーほ。小さくやって出る訳ないじゃん。その後ずるずるやってる方が迷惑じゃん。」
「お前はでっかくやっても変わんねーけどな。」

全くその通りだと思うが、その辺、男の理想だから。気ィ付けて欲しい訳だよ、俺的に。
あーあ、と俺が大袈裟に頭を抱えると、シイカはふいっと顔を背けた。

「しゃーないじゃん。風邪引いたんだから。」
「え?風邪なの?風邪引いたの?」

意外な答えに俺はジャンプを机に置いて立ち上がる。近くに寄れば、何時ものぱっちり二重は重そうで、目は死んでた。

「うん。熱もあるんだよね。」
「マジでか。何度?」
「九度九分。」
即行家帰れェェェェェェっ!!!つか、何で今日此処来たのっ?!」
「えっ?!だ、だって………」

シイカに聞くと、突然の問いに驚いたのか、ちょっと腫れぼったい目を丸くしてほんのり頬を染めた。
………………、………何、この空気。

え?アレですが?アレ。
いや、これアレだろ?絶対アレ。
“だって銀ちゃんに会いたかったんだもん”的なアレだよ!!ちょ、待て待て待てっ!!心の準備ができてないって!!

「だ、だってさ………」
「な、何だよ。だって何だよ。」

少し俯いたシイカの隣に腰を下ろして俺は返答を促す。

「だ、……だって……………だって風邪って誰かに伝染すと早く治るじゃん。
「は?」

シイカが発した言葉に、俺は耳を疑った。
……な、何だって?

「え、ちょ、シイカちゃん?い、今何つった?銀さんちゃんと聞いてなかった。」

幻聴だと信じたい。
“え?まだ何も言ってないよ?”って可愛く首を傾げるよな。傾げろ。傾げて下さい、お願いしますっ!!!!

「だから風邪って空気感染じゃん。誰も居ない空間で寝てるより誰か居る空間に居た方が絶対早く治るって。だから来た。

現実は厳しかった。
てか、原理まで語らなくていいからっ!!

「え、ちょ、何それ。新手の嫌がらせ?風邪伝染すために家に来たとか言ってるんですけど。」
「つーかそのつもりなんだけど。」
「伝染させるために来たって事は、何?俺に伝染す気?俺に伝染すために家に来たって事?」
「あたりぃ〜。」

肩を竦めてはにかみながら微笑むシイカ。普段だったら、心臓止まるぐらいの仕草だよ。散弾銃だよ。
だけども、今は状況が違う。

「んな風に言っても、可愛くねーからっ!!」

いや、可愛いけどっ!!可愛いけどもっ!!!

「やろうとしてる事大分悪質だからっ!!」
「だってパーは風邪引かないじゃん。」
俺のパーは頭パーのパーじゃねェェェェェェェェェ!!!!




「でもやっぱダルいから寝る。布団貸して。」
「そーしろそーしろ。さっさと寝ろ。……あ、そうだ。風邪ってキスとかその先とかすると伝染るらしーよ。」
「はっ!!だから?」
「………」
「あたしが起きるまで和室は立ち入り禁止ね。入ってきたらミンチだから。」
「……ここ俺ん家なんですけど…」




fin

20080419
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ballad

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