厄介な流れ星
「キレーな星空ぁ〜……」
窓を開ければ満点の星空。
すっ……
「あ、流れ星!!」
ヒュルルルル………
「……ん?」
ルルルルルルルル…………
「あ、あれ?」
ルルルルルルルルルル…………
「ちょ、何か、え?あれ?嘘、こっち来てる………?」
ルルルルルルルルルルル………
「え?え?う、嘘っ、あ、あれ宇宙せ……」
ドォオオオオオオンンンっ!!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
厄介な流れ星
「けほっけほっ…!!っ〜……何なのよ〜……」
今の今まで私が立って空を見ていた窓辺には煙が立ち上り、屋根が吹っ飛んでいた。
あっは♪お空が綺麗だよ、ママン♪
って違うっ!!
「ああああああっ!!!や、屋根がっ!!屋根がァァァァァ!!!!」
し、借家なのにっ!!!只でさえ家賃ギリギリだってのにィィィィィィィィっ!!!
「何処のどいつよっ!!こんな非常識な事すんのはァァァァァっ!!!」
沸々と沸き上がる怒りに握り拳を作って仁王立ちのままわなわな震えてると、立ち退く煙の向こうにやけに特徴的な影が現れた。
ふわふわの黒髪と裾の長い上着が型どる長い影。カランコロンとこの状況そぐわぬ暢気な効果音。
…これは。これを満たす人物と言えば……!!
「あっはっはっ!!シイカ〜っ!!今帰ったぜよ〜っ!!!!」
「〜〜〜〜〜っ!!こんの、もさもさ頭がァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!!!」
ドガッ!!!
「ぐふぉっ!!!?」
坂本辰馬。その人だった。
「何なんですか、いっつもいっつもっ!!!坂本さんは私に何か恨みでもあるんですかっ?!!」
私に殴られた顎を擦り、正座する坂本さんに私は言った。
「違う違う!!わしゃ地球に帰ったら一番にシイカに会いと思っとったき…」
「だからって船ごと来るとか有り得ないですからねっ!!どうしてくれるんですか、これっ!!」
未だプスプスと僅かに煙が上がる破壊された窓辺を指差して私は言う。
「あ〜っ!!もぅ、大家さんに叱られるじゃないですかっ!!」
「あっはっはっ!!気にするな気にするな!!そんならわしが建て替え費用出しちゃるわっ!!」
「え?」
さらりととんでもない事を言った坂本さんに呆気にとられてると、彼は懐から分厚い茶封筒を取り出した。
「ほい。」
それを私に手渡す。
「そんだけありゃ足りるじゃろ?」
えー……何この人ー……冗談キツいって……
半信半疑に封筒の中を確認してみた。
「……?ひぃ、ふぅ、みぃ………ご、五千万んんんっ?!!!ほ、本物っ?!!」
「当たり前じゃー。何じゃ?足りんがか?」
「たたたたた足ります足りますっ!!!御釣りが来ますっ!!」
「ならえい。ああ、釣りもいらんぜよ。とっとき。」
サングラスの向こうの目が優しく笑った。
……ってそれより
何だこの人ォォォォォォォォォォっ!!!
何でこんな大金持ってんだよォォォォォっ!!
しかもポケットマネーかっ?!!変なところでカッコいいィィィィィィィィ!!!!
「建て直しの間わしン所に泊まればよか!」
前 言 撤 回!!!!
確信犯かァァァァァァァァァァっ!!!
* * * * *
「じゃあ陸奥さん。ちょっと出掛けてきますね。」
「ああ。頼むっちゃ。」
まぁ、そんなこんなで自宅の再建中、私はわしん所、こと快援隊の地球駐留時の宿舎に泊めてもらってます。
良かった……。陸奥さんがいて良かった……。
坂本さんの家とかだったらどうなるか分かんないよ……。
それはさておき、泊まりっぱなしの御世話になりっぱなしではアレなので、陸奥さんに御願いして買い出しに行かせてもらうことになりましたー。
「気ぃ付けて行ってき。」
「はぁい。」
「特に頭に気ぃ付けるぜよ。」
「えっ?!そこっ?!!」
「あのモジャモジャは何するか分からんけ、よう安心せん。シイカ、本当に気ぃ付けや。」
陸奥さんは私の肩を掴んで力強く言った。
……笠から覗く目がマジなんですけど……
「は、はい。気を付けます…。」
「じゃあ、行ってき。」
「いってきまーすっ」
陸奥さんの柔らかい笑顔に見送られて数分、
「陸奥ぅっ!!シイカが居らんぜよっ!!!」
「おんしがちゃらんぽらんじゃき愛想尽かして出てったんじゃながか?」
「あっはっはっはっはっ!!え?マジで?どうしようっ!!!!」
そんな会話が聞こえたような気がした………
*****
「えーっと後はお魚……」
商店街を巡って陸奥さんの御使いを着々と済ませていった。
「今日のご飯は何だろ?御手伝いできると良いな。」
快援隊の皆さんは料理上手だから気が引けるけど、何か力になれるように頑張ろ。
そんな事を考えながら私は魚屋さんに向かう。
「……」
暫く歩いて私は違和感を感じた。
……何か、変。さっきから足音がもう1つ付いてきてる……?
心無しか視線も感じるし……。
(…じ、自意識過剰だよ、私……)
考えを振り切るように頭を振って再び歩き出す。
スタスタスタ……
からころから……
スタスタスタ……
からころから……
スタスタスタスタ……
からころからころ……
…………ん?からころからころ?
足音にしちゃアレじゃない?
フツーの靴とか草鞋とかで出る音じゃなくない?てかこの御時世、下駄なんて履いてる人って殆んどいなくない?
……まさかとは思うけど、
スタスタスタスタ……
からころからころ……
ばっ!!
「あ。」
「坂本さんっ!!」
歩みを止めずに振り返れば、しまった、と言わんばかりの坂本さんがいた。
「何してるんですかっ!?」
「あっはっはっ!!バレてしまったがかっ!?」
暢気に笑う坂本さんに私は拳を握る。
「あっはっはっじゃないですよっ!!」
「何をそんなに怒っとるかー。」
「怒りますよっ!!ほ、ホントにストーカーかと思ったんですからっ!!」
「ストーカーっ?!何処じゃっ?!!何処のどいつがシイカをストーキングしとるんじゃっ?!!」
「アンタだよアンタっ!!!!」
「がふぅっ!!!」
作った握り拳をきょろきょろストーカーを探す坂本に振り下ろし、私は叫ぶ。
「ほ、ホントに怖かったんですからねっ!!何でストーカーなんかしたんですかっ?!!」
「あだだだ……何でって、シイカが心配じゃったき。」
「え……」
「危なっかしい御時世じゃき、何があるか分からん。」
ズレたサングラスの位置を直して坂本さんは真面目な顔をして続けた。
「大事な人の一大事によう行けんなら男失格じゃ。」
「坂本さん……」
「わしが守ってやるけ、わしの傍にいちゃくれんがか?」
ちょっと恥ずかしそうに笑った坂本さんに胸が鳴った。声に出すのが恥ずかしくて、私はゆっくり頷く。
「ほ、ホントかっ?!」
「……うん。でもね。でもね、坂本さん………」
背の高い貴方を見上げれば計らずとも上目遣いになっちゃうけど…。わざとじゃないからね。
「な、何じゃっ?!わしに何かあったがかっ?!」
「でもね、………………心配だからってストーカーはねぇだろーがこのモジャモジャ頭ァァァァァァァァァァァァァァァっ!!!!」
「ぐがぁっ!!」
それから陸奥さんや快援隊の皆さんに“シイカば居ると、頭がふらふらしないき、一緒に来てくれっ!!”と説得され、なんやかんやで私は坂本辰馬に付いていく事になってしまったのだった。
厄介な流れ星
乗ってきたのは星の王子様なんかじゃない。
「これでちょくちょく地球ば行かんで済むっちゃ!!」
「あ、陸奥さん。私、大家さんに挨拶してなかったんで地球戻ります。」
「シイカーーーーーーーっ!!!!!」
fin.
20080506
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ballad
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