salty-sweety-salty-salty


「伊達政宗!!今日こそその首頂戴致す!!」

「OK!朝から大胆だな!!come on!!」

「なっ!?違っ、首…!!ってやめろ!!布団に引きずり込むなぁぁぁぁぁぁ!!!」


salty-sweety-salty-salty


「やめ…!!ちょ、何処を触っ…!!!」

「Ha!!野暮な事聞くんじゃねぇ!」

引きずり込まれた布団の中で必死に抵抗を試みるも、手首を上で纏められては丸で歯が立たない。

畜生、六振りの刀を一遍に握って振り回す握力は伊達じゃない…!!押さえ込まれた手首が今にも折れそうですが…!!

「今日こそ逃がさねぇ…楽しもうぜ、dove.」

「全然楽しめる雰囲気じゃないだろこれっ!!!つーか何を楽しむ気だ貴様っ!!」

「本当に野暮な奴だな…これだから生娘は。」

「関係無……って何で知ってんだぁぁぁぁぁ!!!」


「政宗様!!」

ぎゃあぎゃあと抗争を繰り広げていた仄暗い視界が、厳しい叱咤の声と共に突然明るくなった。
瞳に差し込んだ光に驚き、幾度か瞬きを繰り返したが、どうやら掛け布団を剥がれたらしい事が分かる。

私の視線の先、伊達政宗の肩越しに厳つい風体の男が冷静な表情で剥いだ布団を持っているのが見えた。

「御早よう御座います、御自重ください。」

「朝から説教だったら聞かねぇぜか、小十郎。」

間違っても腹心中の腹心が朝一で主君に述べる言葉ではないそれに、私を見下ろしたまま、振り向きもせずに伊達政宗はそう低く零す。
片倉小十郎はそんな返答に表情を渋らせて溜め息を吐いて頭を抱えた。

「……失礼致します。」

「Ah?……おい、小十郎。何のつもりだ。」

奴は断りを入れると伊達政宗の首根を捕まえ布団と同じく私から引き剥がす。
御陰で自由になった身体を翻し、私は天井裏へと跳躍する。

「おい!逃げんなシイカ!!come back!!」

「黙れっ!そして日本語を喋れ!礼は言わんぞ片倉小十郎!!」

「別に欲しくはねぇが…じゃれるならもっと静かにやれ。」

「じゃれてなどない!!」

朝から五月蠅くて適わねぇ、と付け加えた片倉小十郎に天井裏から噛み付くも、深い溜め息と怒声が返ってくるだけだった。


何度か天井裏から落っこちそうになりながらも何とか城外へ抜け出し、敷地外のとある樹木の枝に腰を落ち着ける。

「………400飛んで、8回目…。」

懐からクナイを出して、幹に刻まれた正の字を足しながら私は溜め息を吐いた。

主に伊達政宗暗殺の命を下され、米沢に来てもう半年。

1回目にして既に顔が割れてしまうし、3回目からは警戒されなくなって10回目からは逆に襲われだす始末。

顔が割れた時点で撤退するか自害するのが普通だけど、それでも私にはどうしても奴の、伊達政宗の首がいる。
忍でありながら戦も諜報も暗殺もからっきしで、それでいて戦の最前線におかれても成果は上げられないが生き残ってしまう様な、悪運だけの私。
正直、忍者隊のお荷物だ。

そして遂に半年前、主君に「政宗くんの首を持っておいで。持ってくるまで帰ってくるんじゃないよ。もし手ぶらで帰ってきでもしたら…分かってるねぇ?ちゃんと出来たら玄米茶を淹れてあげよう。」なんて言われて。どう考えても玄米茶いらねぇだろ、どんだけ好きなんだよ、と言う事は置いといて、それは事実上の解雇通告だった。

戻るには、どうしても伊達政宗の首がいる。

「………400…飛んで、8回目……失敗………うぅ…また駄目だった…。」

しかし、案の定この事実。
400回って…単純に計算しても1日1回以上は襲撃してるんだけど……下手な鉄砲数打ちゃ当たるなんて何処の誰が言い出したんだ。

「下手なんだから幾ら打っても当たる訳な……!?」

膝に肘を突いて、独りごちたそれは、耳を掠めたキュンという風を裂く鋭い音と硝煙臭さに遮られる。

何が起こったか分からず、暫く固まっていたが、ゆっくりと横を向けば、正の字を書いた幹に鉛の弾が減り込んでいるではないか。

「うわあぁぁぁぁあ!!?」

思わず後退れば、引いた先の手元の枝がめりっと悲鳴を上げる。

「あ。」

嫌な汗が背筋に吹き出た瞬間、バキッとこれまた嫌な音と共に盛大に枝が折れた。

「わあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

このままだと地面に激突しちゃう…!!忍者が木から転落死とか笑えない…!!

……でもまあ、私らしいか。400回も暗殺に失敗してるし、忍者向いてないし……。
何て諦めていたら腹部に強烈な圧迫感が走って落下が止まった。

「げえっ」

蛙が潰れたみたいな声が漏れる。吐き気と共に身体を起こして辺りを見渡すと、上方に折れた枝が見えた。どうやら下の枝に引っ掛かったらしい。

「………はあ、」

助かったんだか、死に損なったのか。複雑な気分で枝に座り直せば自然に溜め息が漏れる。
再び肘を突いて肩を落とすと、また耳元でキュンと風が裂く音がした。

「……」

え、何これ?
狙撃されてる?
まさか。
私に限ってそんな……、

HELL DRAGON!!

「は!?」

考えていれば、そんな掛け声と供に今度は雷の渦が此方に向かって一直線に向かってきた。

「ひあぁぁぁぁぁぁっ?!!!」

流石にそれは飛び退いて避ける事が出来たが、何これ!
何なのいきなり!?
心の臓が口から出てきそうなんだけど!!

黒焦げにされて折れる寸前の枝から別の枝に飛び移って発生源らしい方へ目を向けると、無駄に艶やかな笑みを浮かべた男が此方を見ているではないか。

「伊達、政宗…!!!き、貴様っ…!!い、一体何のつもりだ?!!」

「Ha!何のつもりだと?忍者が忍べてねぇから教えてやったんだろうが!!」

「!!?う、五月蝿い…!!余計な御世話だ…!!貴様に助言されるなど、」

「降りてこい、シイカ。遊んでやるよ。」

「聞けよ!!と言うか私は暗殺者だぞ!?親しげに話しかけるな!!」

「executioner?Ha!!笑わせんな!アンタみたいな鈍いexecutionerがいてたまるか!」

「に、鈍いって言うな!!!」

図星を突かれた私は捨て台詞を吐きながら木々の茂る方へと逃げ去ろうとしたが、立ち上がり振り向いた瞬間、足元の枝がみし、と鳴る。

「!!」

「シイカ!!」

「嘘ぉぉぉぉぉ!!?」

折れた枝と共に、今度はそのまま落下した私は、地面と衝撃的な抱擁を交わした。
どちゃっと惨めな音がする

「あ゙ぁあ゙あぁぁぁぁぁっ!!!!痛いっ!土って地味に痛いっ!!」

「Aer you okey?」

のたうち回っていると、ガサガサと木々を分ける音の後に個人を特定するには十分すぎる南蛮語が耳に入る。

「鮎桶…?」

「大丈夫か、って聞いてんだよ。」

「!?」

訳の分からない言葉に一瞬痛みが引いた。だがしかし、奴の言葉は私を激昂させて余る程の言葉であって。

「貴様…!!暗殺者に情けを掛けるなど、馬鹿にするのも好い加減に…!!」

「馬鹿を馬鹿にしたって問題ないだろ。」

「何をぅ!?」「OK,OK.熱くなるなよ、coolに行こうぜ?」

しれっと答えた奴は、小馬鹿にする様に両掌を向けて上下させた。南蛮語混じりの意味が分からない言葉ではあるが、頭にくるのは止められない。
大きな舌打ちを響かせて奴を睨むと、肩を竦めて溜め息を吐かれた。

「おいおい、アンタそんなemotion剥き出しじゃ、忍失格だぞ。ちゃんと仕事してる奴に謝れ。」

「失礼だぞ!!私だってちゃんと仕事をしてる!!」

「いや、ちゃんとはしてねぇだろ。出来てねぇし、暗殺。」

「うっ…」

「大体、向いてねぇよアンタ。自分でも薄々気付いてんだろ?」

「う、五月蝿い…!!貴様に言われなくても分かっている!!」

「Oh…自虐ときたか…。」

「貴様が誘導したんだろうが…!!」

残念な物でも見る様な同情を孕んだ視線を力の限り睨み返す。

何なんだ、こいつ。本当に…!
こんな嫌な奴の首取るの400回も失敗してるとか私どんだけ無能なんだ…!!

あ、いらん事思い出した…。
自己嫌悪…。
そんな事が頭を巡っていては、当然睨む力など弱まる訳で、気付いたら俯きになっていた。

「……なあ、」

「……………何だ。もう放っておいてくれ…。」

「俺が雇ってやる。」

「……は?」

信じ難い言葉に戸惑って顔を上げると、奴はばつの悪そうな表情で頭を掻いている。

「…頭、大丈夫?」

「アンタにだけは言われたくねぇ。」

「何を!!?」

「Anyway,顔が割れてんのに此処に居座ってるって事は、どうせ、帰れないんだろ?spyとして雇うのはriskyだがmaidくらいにはなるだろ。」

要所に散らばった南蛮語のせいで、全文の意味は分からなかったけれど、私がもうあの忍軍に戻れない事がばれているのは確かだった。

そんな奴の姿は、呆れた様にも見受けられるが、少しの厚意も間違いなくあって、思わず心の臓が早鐘を打ち出す。

どうせあの場所には戻れないのなら、いっそ…なんて言う甘ったれた考えすら湧いて出て、慌てて頭を振った。

全く、こんな事で動揺するなんて、熟々情けない。
忍として無能で当然だ。
だけど、奴はこんな使えない私を雇うと言っている。

「……何故だ。」

「Ah?」

「何故そこまでするんだ?放っておけば野垂れ死ぬ。忍の命などその程度なのに。」

疑問と疑心の眼差しで自嘲気味に私は問うた。すると奴は僅かに隻眼を見開いたが、直ぐに挑発的な笑みを浮かべて言う。

「何故か、Ha!俺にも分からねぇ。But,アンタはあいつに似てるんだ。」

「あいつ……?」

真っ直ぐ私を貫く視線が懐古に細められ、それが存外艶やかで不覚にもどきり、と高鳴った。

そんな中、奴は私を見据えて言葉を続ける。

「Yeah.思い出すんだよ、アイツを。餓鬼の頃、城下で出会った……頭悪そうな猫をな。」

猫かよ!!!





salty-sweety-salty-salty
甘く見せたしょっぱい誘惑


「猫って貴様…!!」

「何だ?不満か?Be relieved,お前の方が賢そうだ。」

「馬鹿にしてるだろ…」

「of course!当然だ。」

「否定しろ!!」




fin!



後書き

さよる様!大っ変御待たせ致しましたぁぁぁぁぁっ!!!orz

bsrもギャグも久し振りで時間が掛かってしまった上に、政宗ギャグ、と言うにはあまりにも緩い仕様ですが、楽しんでいただければ幸いです。

御満足頂ける出来かどうかは甚だ怪しいのですが、宜しければ御納め下さいませ。
色々御不満な点があるかと思いますが、御気に召しましたら幸いで御座います。

改めましてキリリク有り難う御座いました!

20120419 篝 拝

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ballad

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