勝率99.99%
「御土産だよー。」
「「「「おぉー!!」」」」
週明けの放課後。
仲間内を集めて生八ッ橋の蓋を開ければ歓声が上がった。
勝率99.99%
クラスメイトで悪友の坂田、土方、沖田、桂は私が開けた紙の箱の中を覗き込む。
そこには、桜色、蓬色、卵色、小麦色の八ッ橋が綺麗に並んでいた。
「へぇ、旨そうだな。」
「4種類のを買ってくるたァ、流石は俺のシイカですねィ。」
「おい、貴様。何時シイカが貴様の物になったのだ。シイカは俺の物だ。」
「は?ヅラてめぇ何言ってんの?シイカは俺のだし。」
「……。つーかシイカ。随分急な旅行だったな。」
沖田と桂と坂田が繰り広げている無駄な抗争を冷めた目で見守ってると、同じく冷ややかな目で見下しながら土方が話を振ってきた。
「あー…、うん。確かにね。」
「家族旅行か?」
「ううん。もっさんに誘われたんだー。」
「「「「何ィっ!!?」」」」
「おおう…。」
土方の質問に私が応えると、ぎゃーぎゃー騒いでた筈の3人も土方と声を合わせて此方に目を寄越す。
因みにもっさんとは1年上の先輩で坂本辰馬といういい加減でポジティブな阿呆の人である。
それは兎も角、土方達の反応の速さに私は思わず尻込んだ。
「おいおい何やってんだよあのモジャモジャ〜!!」
「抜け駆けするとは武士の風上にも置けぬ奴め…!」
「中々あざといですねィ。」
「ちっ…、覚えてやがれ…、」
先輩なのにこのボロクソな言われ様に頬が引き攣る。
つーか、こいつら何か勘違いをしてるっぽいぞ。
「ちょっと、ちょっと。別にもっさんと二人きりで行ったんじゃないからね。もっさんの部活の遠征に付いてっただけだからね。」
「「「「それでも許さん!!」」」」
「何故だ…」
男女の二人旅では色んな意味で危険だから心配してくれてると思ったのにどうもそうじゃないらしい。
じゃあ何だってんだチクショー!
相変わらず各々嫌なオーラを放つ連中にちょっと苛々したが、私は奴らより大人なので、手にした八ッ橋をひっくり返すなんて勿体無い事はしない。
「まあまあ、それはもういいじゃん。それより折角御土産買ってきたんだから食べてよー。」
話を変えんと手にした箱を押し出せば、全員でちらりと此方に目を寄越す。箱の中の綺麗な八ッ橋を見てスルー出来る奴はおるまい。
「……まあ、辰馬は後で報復すっとしてぇ。」
「折角シイカが俺の為に買ってきてくれたのだから、頂かねば。」
「桂ァ。テメェの為に買ってきちゃいねぇだろィ。」
「いい加減にしとけよ、桂も総悟も…」
纏まりだした話を掘り返す桂と沖田に殺意が沸いたが、溜息を吐いて土方が諌めたので引き攣り笑顔で黒い事を言わずに済んだ。
「折角4人いるんだから、皆でバラバラなの選んでよ。」
「つーかそれぞれ何味?それ分かんなきゃ選ぶも何もなくね?」
そわそわと箱を差し出す私に坂田が机に肘を付いて、尋ねる。
待ってましたと私はニヤリと口角を上げた。
「それは食べてみてのお楽しみーっ!」
「はぁー!?」
「そんなんいいから、早く食べないと乾燥しちゃうよ。」
坂田の質問の答えもそこそこに、ずいずい八ッ橋を進めると、流石に怪しまれたらしい。
ちょっと疑惑の目を向けられた気がする。
勿論、その疑惑は大当りなのだが、うっかり顔に出すなんて詰まらない事はしたくないので作り笑顔を貼付けて軽く首を傾げてみた。
「……まァ、言っても入ってるもんなんざ決まってまさァ。俺は赤いの貰うぜィ。」
「そうだな。大方果物系に違いない。俺は緑を貰おう。」
「じゃあ俺は黄色だ。絶対マヨネーズに違いねぇ。」
「それはねぇよ、大串君。」
「誰が大串だ。」
「消去法で俺はこのスタンダードな奴か。」
「おい、聞けよ!」
沖田を皮切りにひょいひょい摘んでいく連中に笑いを堪えて平静を装う。でも、長くは持ちそうにないぞ。
「じゃあ、せーので食べてねー、せーのぉ…」
「おい、旨そうなモン持ってんな、シイカ。」
「おや、杉ちゃん。」
はい、と手を叩こうとしたらどっから沸いて出たのか、高杉が背後から首に纏わり付いてきた。
「高杉テメェ!」
「今すぐシイカを放せ高杉ッ!!」
「高杉ィ。随分遅ェ登校ですねィ。」
「今日はどう言う言い訳垂れるつもりだ?あぁ?」
透かさず牙を剥いたのは坂田と桂。何故かは知らないが、この3人は腐れ縁らしく何かと突っ掛かり合ってるから特には気にしないけどね。
沖田と土方が機嫌悪いのは高杉が学校史上最悪の問題児だからだろう。
風紀の2人には見逃せないんだね、きっと。
私は毛を逆立てた猫の様な4人を適当に宥めて、変わらず首に纏わり付く高杉に向けて八ッ橋の箱を持ち上げた。
「杉ちゃんも食べる?八ッ橋。」
「俺ァ、八ッ橋よりシイカが喰いてェなァ。」
「あっはっは。……死ね!!」
「!?」
厭らしい手付きで私の首筋をなぞった高杉の口に小麦色の八ッ橋を捩込んでやる。
すると、高杉が、あの常にニヒルを気取る高杉が、見る見る内に真っ青になって教室を飛び出していった。
「な…何だ…?」
その様子に一同、目を丸くしていると、坂田が目の端をヒクヒクさせてそう呟く。
その後、皆で再び疑惑の目を私に向けてきたので、しらばっくれて軽く首を傾げた。
「さあ?杉ちゃん、シナモン嫌いなんじゃない?八ッ橋のニッキってシナモンでしょ?」
別に高杉の好き嫌いなんて興味ないし知らないけど、我ながら素敵な言い訳だと思う。
相変わらず疑惑の眼差しは消えないものの若干弱くなったので仕切直しと言わんばかりに私は掌を合わせた。
「じゃあ、せーので私が手ぇ叩くから、そしたら皆で食べてね。」
「「「「………」」」」
「おいコラ、返事は?へ・ん・じ・は?」
笑顔で威圧を掛けると奴らは無言で頷いた。
それを確認して私は合わせていた手を離して声を掛ける。
「じゃあ行くよ。せーの、」
ぱんっ!
私が手を叩いたと同時に4人は八ッ橋を口の中に放り込んだ。
何とも律儀な。
しかし、直後に異変は現れる。
「……ッ!な、…でィ…こい……つァ…!!?」
「なん……ッ!かはっ!ごふっ!」
「どういう…っ…こった…シイカ…ッ!!?」
「苦ぇぇぇえぇぇっ!!!苦ぇぇぇえぇぇぇぇぇッ!!!!」
4人揃って喉を押さえ出すのを見て私は内心拳を握る。
まあ、ちょっとばれてたけど、君達の口の中は予想だにしないワンダーランド☆になってるだろう!特に怨みは無いけどざまぁ見ろ!
「いやぁ、良い反応しますな〜皆さん!」
「良い反応じゃねぇよ!何の八ッ橋だコレッ!!!」
感心ぶって面白がっていると、文句を言いながら此方を睨んできた坂田に続き、他3人も此方に目を寄越したので、明白にぶりっ子ぶってエヘなんて首を傾げてから箱をの包装紙を見せた。
「テレテッテテ〜!“痛快!ビックリ☆八ッ橋〜味覚テロ編〜”〜っ(ダミ声)」
「………はい?」
「説明しよう!“痛快!ビックリ☆八ッ橋〜味覚テロ編〜”とは、見た目は普通の最近多い変な味の八ッ橋で、味は超ウルトラ級の刺激の面白系御土産の1つなのだ!」
踏ん反り返って説明する私に4人は全員涙目になりながらポカンとしていた。
そこに更に付け加えるようにして私は言葉を続ける。
「一般的なのじゃ詰まんないからさ、こういうのにしてみたんだけど、如何?」
「……如何?じゃねぇぇぇぇぇっ!!!!」
小首を傾げると坂田が大声を上げて仰け反った。
「大体、何味なんだよコレ!?」
「え?トシのそれは和辛子。辛子の種を潰して水を加えたものを八ッ橋に大量に練り込んであるのだよ。あんこに見せかけて中身は黒辛子の種を煮詰めたやつだって。」
「お、俺……のは何だ…、シイカ…っ、」
「ヅラのはねー特選朝採り本山葵。丹念に擦り潰して酸素を一杯含ませた本山葵を大量に練り込んでいるらしいよ。因みにあんこに見せかけて中身は着色した山葵の塩漬。」
「じゃあ、俺のは唐辛子…っですかィ?」
「うーん、三角だな。そーちゃんのはジョロキア。ギネ●認定世界一辛い唐辛子なんだってさ。あんこに見せかけた中身は四川豆板醤。」
私の回答にわなわなと肩を震わす3人に再び態とらしく首を傾げてやった。
「怒んなよー。最初に一般的なのじゃ詰まんないって言ったじゃん。あ、因みに治まったと思っても辛さが復活増強するよ!」
そう告げるや否や、3人は文句を付けようしたらしい。が、口を開いたと同時に奴らは一瞬固まり、直ぐ様教室を飛びだした。
辛みが復活したのだろう。
水呑場の方から悲鳴に似た声が響いている。
教室に残された私は、手持ち無沙汰なんで、苦々しい顔で自分の鞄を漁っている坂田に話し掛けることにした。
「何してんの?銀ちゃん。」
「飴探してんだよ。口直しに。」
「でも銀ちゃんのは辛くなかったでしょ?」
「辛くなかったけど苦かったわ。何味だコレ。」
「苦丁茶。」
「苦丁茶ァ?!!」
「しかも厳選上級の抽出長時間の苦み成分のみ配合のスグレモノ。」
「そんなマイナスなスグレモノは求めてないから!何お前!!俺等に何か怨みでもあんのっ?!!」
「いや、別に無いけど面白そうだから。」
「最低だなお前ッ!!」
引き続きがさがさと鞄を漁りながら言い放つ坂田の隣に私は唇を尖らせて腰を下ろす。
「いいじゃんか。楽しかったんだし。」
「シイカだけね。」
「青春は1度しか無いんだから楽しんだ者勝ちだもーん。」
そう言って、拗ねたみたいに顔を背けた私は坂田が鞄漁りを止めたのに気付かなかった。
「……なあ、シイカ、」
「ん?」
暫く間を置いて坂田に名前を呼ばれたので、反射的に振り向く。
その間、僅か数秒。
唇に当たった生温い物が離れた途端、口内に苦味が走る。
御蔭で思考回路は生温い物を換算する前に遮断される。
「苦っ!!苦ぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!」
「ざまぁ。」
「何しやがった銀時ぃぃぃぃぃっ!!?」
「口直し。飴なかったから。」
「……!!!」
噛み付く様な質問に対して坂田が発した答えたの意味が、最初は分かんなかった。
しかし、再起動した思考回路が答えを出すのにそう時間はいらない。
生温い物が何だったのか、私は何をされたのかが一致したが早いか、身体中の血液が顔に集まる様な錯覚に襲われた。
「ぎっ……おまっ…!!」
その反応に坂田は、鞄を持ち上げて立ち上がってにたりと笑む。
「青春は1度しか無いんだから楽しんだ者勝ち、だよな?御馳走さん。」
ニヤニヤしながら、じゃーなーと教室を出ようとする坂田の背中に机を投げ付けるまであと0.01秒
勝率99.99%
敗因は0.01%の油断だった
「死ねぇぇぇぇぇぇ坂田ぁぁぁぁぁッ!!!!」
「ぎゃあああああああっ!!!?」
がっしゃーん!!
fin.
後書き
夕陽様!大っっっっ変御待たせ致しましたぁぁぁぁぁっ!!!orz
学園パロディにしてしまったのですが……宜しかったのでしょうか…?済みません…!真選組と譲位組が絡むギャグハーが学園パロディ以外では思い付きませんでした…!申し訳御座いません…!
そして実は篝め、ハーレム系は初めてでした←
御満足頂ける出来かどうかは甚だ怪しいのですが、宜しければ御納め下さいませ。
色々御不満な点があるかと思いますが、御気に召しましたら幸いで御座います。
改めましてキリリク有り難う御座いました!
20100519 篝 拝
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