それはワザとかはたまた素なのか


「シイカー……?あり?山崎じゃねぇかィ。」


シイカの部屋に行ったら、掃除機かけてる山崎がいた。
三角巾に割烹着…、オメーはお母さんか。


「シイカは?」


聞けば顔を上げた山崎が首を傾げやがる。


「あれ?沖田隊長知らないんですか?シイカさん、昨日から有給取ってますよ、1週間。」

「………マジでか?」


それはワザとかはたまた素なのか


「あうー………」


久し振りに帰った独り暮らしの部屋に分類不可の声はやけに響いた。


「あー……うー……………」


自分でも訳分かんないが何と無く、何かを発声したいらしい。

昨日、沖田隊長は一体何を血迷ったのか私の唇をしゃあしゃあと奪った。
昨日の今日でどんな顔して会えば良いのか分かんなくて、隊長には何にも言わずに有給取っちゃったけど…


「……からかわれてるだけだし…いいよね。」


私の眼鏡に茶々入れるだけじゃ飽きたらず、志村新八に似てるとか言うし、あろう事か私の好みにまでケチ付けるし……。

そんな事の後の暴挙だ。からかわれてる以外何物でもない。


「ううう……初ちゅーだったのに……」


ベッドにダイブして顔を枕に埋めた。
悔しいんだが哀しいんだか何なんだか良く分かんないけど、前が霞んできたよ。

畜生!沖田隊長め!
純情乙女に何て事を!!


「…1週間あれば、落ち着くよね…」


悪態を吐いた所で何も変わる訳じゃないから諦めよう。
1週間顔を会わせなければ、普段通りの私に戻れる筈。
幸い、隊長は私の家を知らないだろうし、暫くは独りになれるだろう。

意味も無く、顔を埋めた枕を抱き締めた。

眼鏡が鼻筋に食い込んで痛かった。



───ピンポーン


眼鏡を取って鼻筋を撫でてると、来客を知らせるチャイムが鳴る。


「……誰だろ?」


生憎、私が住んでる此の部屋は旧式メゾン。
ドアホンだとか来客確認のモニターだとかハイテクなセキュリティは備え付けられていないのだ。
直に行かなきゃ誰だか分からない。

私は眼鏡を定位置に戻して玄関へ向かった。


「はーい?」


一応、私だって真選組隊士だし、ある程度だけど体術も使えるから、ドアにチェーンを掛けないで何時も通り扉を開く。


が、それが間違いだった。


「よぅ。」


キャラメル色のツヤツヤヘアーが目に入って、まさかとは思ったが、まさかの沖田隊長が片手を上げて立っているではないか。


「ぎゃあっ!!」

「ぎゃあ、とは何でィ。あ、コラ、閉めんな。」


咄嗟に扉を閉めようとするも、隙間に足を挟まれて阻止された。


「ちょ、何でですかっ?!何で沖田隊長が私の家知ってるんですかっ?!」

「んなもん隊士名簿から調べたからに決まってんだろィ。」

何やってんのっ?!!個人情報保護法違反ですからね、それっ!!」

「相変わらず鋭ェ突っ込みですねィ。つーか、諦めて入れなせェ。足痛くなってきた。」

知るかァァァァァァァァァァ!!!!


閉めようと後ろに体重を掛ける私と抉じ開けんと何とか身体を入れ込もうとする沖田隊長。

扉を挟んで綱引き状態な訳だ。

つーか、何で来てんの此の人っ?!仕事はどうしたんだよっ!!


「っう…!!隊長!!仕事はどうしたんですかっ!!」

「サボったに決まってまさァ。」

「堂々言うな!!はーなーしーてーくーだーさーいィィィィィっ!!」

「ほらよ」

「え、ちょ!!?」


言えばあっさりと手を放した沖田隊長。
そうなれば、引っ張りあってた片方の力がなくなってバランスが崩れる訳で、そんな事予想だにしてなかった私は力が掛かったままな訳で、支えを無くした私は勢い余る訳で…


「うぎゃあっ!!!」


扉は閉まったものの、当然尻餅を着く。


「可愛くねェ声。大丈夫ですかィ?」

「余計な御世…あぁっ!入ってくんなっ!!」


鍵が開けられた扉を当たり前の様に開けて、沖田隊長は侵入してきた。


「ちょっとォォォォ!!何、勝手に乙女の部屋に入ってきてるんですかァァァァァ!!」

「乙女?誰がですかィ?」

「うぐぉぉぉぉっ!!!腹立つぅぅぅぅぅ!!!」

「御邪魔しやーす。」


頭を抱える私の脇をしゃあしゃあと、さも当たり前の様に通り過ぎて隊長はずかずかと我が家に突き進む。


「うぇぇっ?!勝手にも程がありますよっ?!!」

「うるせィ。俺に内緒で有給なんざ取りやがって、仕置き代わりでさァ。」

「え?」


あれ?

そういや何で私、私服なんだ?

何で平日なのに家にいるんだ?



……ああ、有給とったんだっけ。

……あれ?何で有給取ったんだっけ?



………………

………………




!!!!


あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!

「!!?」


思い出したが早いか、私は奇声を上げた。
流石にそれには驚いたのか、沖田隊長は眼前で足を止め、目を屡叩いている。

そうだ!そうだ!

正に眼前の沖田隊長に初ちゅー取られて、どんな顔して会ったらいいか分かんないからだよ!!
思い出したら一気に、カッと顔が熱くなるのが分かった。


「……何でィ。茹で蛸みてェな顔しやがって。」

「ななななな何でもありまっせんっ!!い、いいいいから帰って!!……ください!!」


愈々顔が見れなくて、たどたどしく私は叫ぶ。


「…ああ。昨日の。思い出したんですかィ?」

「!!」


ニヤリと口角を上げる沖田隊長に体温は更に上昇した。


「…ち、違いますっ!!私は、別に…!!」

「可愛いトコあるじゃねェか」


反応が面白かったのか、更に機嫌を良くした隊長はにじりにじりと私との間合いを詰める。


「まだ眼鏡、か」

「な、何ですか……っ」

「取った方が可愛いですぜ」

「!!かっ……からかわないでくださいっ!!」

「何でィ。俺ァ何時でも本気でさァ。よっ、と」

「あ゙っ!!」


たじろぐのに必死だったせいか、近付いた隊長に易々とに眼鏡を拐われた。


「ちょ!返してくださいよぉ!!」

「嫌でィ。」


ぼやぼやの視界のまま、取り上げられた眼鏡に手を伸ばせば、ひょい、と持ち上げられてしまう。


「マジに返してくださいって!それ無いとホント、何も見えないんですから。」

「へぇ。じゃあ今俺の顔も見えやせんか?」

「見えない見えない。見えませんから。ホント、マジ、返してくださいよ。」


会話中も何とか取り戻さんと、あっちこっちに手を伸ばしたけど、沖田隊長はギリギリで位置を変えるもんだから、結局取り返せなかった。

畜生!一寸私より背が高いからってぇ!


「ふーん。……じゃあ、此れならどうでさァ。」

「うあっ?!」


眼鏡を掲げたままぐいっと顔を寄せてきた沖田隊長。
鼻先がくっつく位近い。


「み、見えます見えます。さ、流石にこれ位近ければ…」

至近距離で長い睫毛が動いた。
私は引き吊り固まりきった苦笑いを作る。


「じゃあ、眼鏡なんかいりやせんぜ。」

「は?」


疑問符を浮かべつつ、頭だけ遠ざけた。
すると肩にあった隊長の手が素早く頭の側面に動く。



ほぼ、ひっ叩く様な感じで。


ばちーんんんっ!!


「ぅ痛ぁっ!!」

「シイカ、テメェ鈍感にも程がありやすぜ。」

「痛いんですけど。」

「聞いてやした?」


抗議すると、沖田隊長は再度手を振り翳した。


「ぎゃあああっ!!すいませんすいませんっ!!私が鈍感なんですねっ!!分かりました!分かりましたからっ!!」

「じゃあ俺が言いたい事も分かってるよなァ?」


必死に弁解すれば、隊長はふぅん、と鼻を鳴らして言う。


……って言われてもなぁ…。

鈍いって言ってたよね?
じゃあ何が鈍いか、だよねー……
えーっと、…鈍い、鈍い……要は遅い。だからー……うーん………


「えー……仕事が遅いとか?」

「違ェ!!そーゆートコ鈍いって言ってんでィ!!」



ばちーんんんっ!!


「いったぁい!!!」





どちらであろうと僕からは絶対言いません。

「有給中、毎日来て眼鏡拐ってやらァ!!」

「え゙え゙え゙え゙え゙っ!!!?何でですかァァァァァ!!!?」


鈍いキミが悪いんだ。



fin.
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反省文

御機嫌よう、御嬢様。此処まで読んでくださって誠に有り難う御座います。
作者の御堂で御座います。

こちらは相互記念として茶紅覇様へ捧げた物で御座います。
大変御待たせ致しましたァァァァァ!!!!
7777打キリリクの続編、との御依頼で御座いましたが、何ともどっち付かずの作品になってしまいました……
分類も何にするべきか微妙になってしまい……本当に申し訳御座いませんorz

御希望に沿えたかは甚だ疑わしくはありますが、茶紅覇様、宜しければ、どうぞ御納めくださいませ!
ええ、もう煮るなり焼くなり蒸らすなりしてくださって結構で御座います故!

返品、書き直しは随時承りますので、何時でも仰ってください!!
相互、本当に有り難う御座いましたっ!!

拙作ですが、楽しんで頂ければ幸いで御座います。
此処まで読んでくださった御嬢様方!本当に有り難う御座いましたっ!!


20080913
死ねば死に損生くれば生き得
御堂 篝 拝@

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ballad

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